別の国に帰化した元日本人が、帰化をやめて、日本国籍を取り戻すことはできる?

日本人が海外の国に憧れて、その国籍を取得したけれども、何らかの理由で後悔して、日本国籍に復帰したいと考えることがあるかもしれません。この場合、日本国籍を再び取り戻すことはできるのでしょうか。

結論から申し上げると、可能です。「再帰化の申請」と「(20歳未満の)国籍再取得の届出」という2つの方法があります。このページでは、それぞれの手続きの基本と具体的な方法について解説します。

※日本に帰化した元外国人が、帰化をやめて祖国の国籍に復帰する場合は、その国ごとに制度が変わります。祖国の官公庁か専門家に問い合わせることをおすすめします。


■再帰化の申請

日本人が他の国に帰化するということは、日本国籍を離脱することを意味しており、日本から見れば外国人になったのです。よって、再び日本国籍を取得する場合には、外国人として日本に帰化する一般的な手続きを踏まなければなりません。

ただし、いったん日本国籍を失った元日本人が、日本国籍を再取得する場合には、簡易帰化が適用されます。住居要件、能力要件、生計要件について、審査が緩和されるという特典を受けられるのです。つまり、日本に5年以上居住し、そのうち3年以上就労している事実があるかどうか、20歳以上かどうか、独立して安定した収入源を持っていて、今後も日本で暮らし続けていけるかどうか、という3点について、審査のハードルが下がります。

他国に帰化したせいで、海外生活が長かった元日本人の方も、住居要件が緩和されているので、日本への再帰化をあきらめる必要はまったくないのです。

かといって、再帰化申請のために揃えるべき書類の数量が少なくなるわけではありませんので、申請準備作業の大変さが緩和されるわけではない点で注意が必要でしょう。簡易帰化とはいえ、社会のルールに沿って真面目に生活してきたかどうかという素行要件などは、通常通りに審査されます。結論が出るまでの審査期間も、一般的な帰化と同じように1年前後かかることを見込んで臨むのが得策です。

<注意点>

日本人が外国に帰化して日本国籍を離脱したとき、法律上は日本にとって外国人の扱いになります。しかし、実務上は日本国籍離脱の手続きが進んでおらず、国籍があるままの扱いになっていて、戸籍が維持されており、日本のパスポートなども何かの手違いで発行されている場合があるのです。とはいえ、法律上は無効のパスポートですので、もし身分証明や海外渡航に使ったりすると、パスポートの不正使用となり、場合によっては処罰の対象となるおそれがありますので、注意してください。

<実際の流れ>

まずは外国人として日本に入国する準備をします。もし、日本国籍の離脱が正式にできていなかった場合、帰化より先に国籍喪失届を提出して、日本国籍がない実態と法律上の扱いを一致させる手続きを行います。

また、外国人として日本に住むための在留資格を前もって取得しておかなければなりません。日本での仕事に適した就労ビザを取得しておくようと、問題なく日本に入国できるでしょう。日本人と結婚した外国人も、働く職種を問わずに在留資格を取得し、入国が認められるようになります。

したがって、A子さんの場合は、日本に帰ってきて日本に住所がある状況になれば、引き続き日本に5年以上住所がなくても、日本国籍を再取得できる可能性があります。


■国籍再取得の届出

日本は二重国籍を認めていません。その一方、日本は国籍の取得について、親の国籍によって決まる血統主義を採用しているところ、世界にはアメリカ合衆国やブラジルなどのように、自国内で産まれたら自国の国籍を与える「生地主義(出生地主義)」を採用している国もあります。

つまり、日本人がアメリカ合衆国で子どもを産んだ場合、その子どもは血統主義によって日本国籍、生地主義によってアメリカ合衆国籍の両方を取得します。つまり、二重国籍の状態です。

日本の法律によれば、外国で生まれた子が、出生によって日本国籍と同時に外国の国籍も取得したときは、出生の日から3か月以内に、出生の届出とともに日本国籍を留保する意思表示(国籍留保の届出)をしなければ、その子は、出生の時にさかのぼって日本国籍を失うルールとなっています。

この国籍留保の届出をしていれば、子どもが22歳になるまで、どちらの国籍を選ぶか留保し、二重国籍状態を特別に認めるのです。

ただ、親が国籍留保の届出をしておらず、日本国籍が喪失してしまった子どもが、成長するにつれて日本国籍を希望しているとすれば、子どもの責任でないところでその希望が叶わない結果となり、福祉に反します。

そこで、不留保によって日本国籍を喪失した者のうち,日本に住所を有する20歳未満で日本国籍を取得しようとする者は、簡易的な届出によって日本国籍の再取得を認めているのです。帰化とは違うので、法務局による厳しい審査などはありません。