自分でビジネスを立ち上げている外国人が帰化する場合に必要な「事業の概要書」とは?

外国人が日本国籍を取るため、帰化を申請するときには、申請書に加えて、親族関係の概要書や生計概要書、履歴書、宣誓書、帰化の動機書など、いくつかの書類を作成しなければなりません。そして、会社の経営者や自営業者、フリーランスなど、自分自身でビジネスを立ち上げている外国人の場合は、さらに「事業の概要書」を作成しなければならないのです。

この記事では、事業の概要書を書くときの基本や、注意点などについて解説していきます。


■「事業の概要」の基礎知識

事業の概要書は、会社の社長や役員クラスの外国人が日本に帰化する場合に作成します。もし、複数の法人を運営していれば、その法人の数だけ事業概要書を作成しなければなりません。役員報酬を受け取っておらず、名義だけ貸している場合にも事業概要書は作成しなければなりません。

事業収入を計上して確定申告をしている個人事業主も同様です。たとえば、会社などの法人を立ち上げずに自分自身でビジネスを運営している自営業者やフリーランスなどが該当します。

ただし、従業員やパート、アルバイトなど、会社から給与収入を受け取っている外国人が帰化する場合は、事業の概要書を作成する必要はありません。

他の申請書類と同じように、年代を書くときに西暦は使えません。日本の元号を用いた和暦で記載します。1989年1月7日までは昭和(~64年)、1989年1月8日から2019年4月30日までは平成(元年~31年)、それ以降は令和の元号を用います。

法人の経営陣は定款に記載のある直前の決算期について、個人事業者は前年分(1月~12月)について、それぞれ作成するようにしましょう。


■「事業の概要」の書き方

会社などの法人を経営している代表取締役やその他の役員は「法人登記事項証明書」「直近の決算の損益計算書」を用意し、個人事業主の場合は「確定申告書」を用意してください。もし、建設業や古物商など、許認可が必要なビジネスを行っている場合には、別途「許認可の証明書」も手元に置いて作業を進めていきます。

まず、商号の欄には、法人であれば会社名、個人事業主であれば屋号などを記載します。会社名や屋号は省略してはいけません。屋号を登録していない個人事業主の場合は、ご自身のフルネームを申請書と同じように書いてください。

所在の欄には、会社経営者や役員の場合、法人登記事項証明書の本店所在地をそのまま書き写しましょう。食い違いがあると法務局職員から確認の質問が来るかもしれないので、正確に書き写します。個人事業主ならば、確定申告書に書いてある事務所所在地や自宅の住所を記入します。

開業年月日の欄には、法人登記事項証明書に書かれている設立年月日を正確に書き写しましょう。個人事業主の場合は税務署に出した開業届の提出年月日を記載します。

経営者の氏名も、法人登記事項証明書に書かれているものを記載し、申請者との関係は、身内であれば「配偶者」「長男」「兄」「父」など、続柄を記入します。

事業目的欄も、定款や法人登記事項証明書に書かれている事業目的を書き写せば足ります。いくつもあって、欄内に入らない場合は、代表的な事業を3つほどピックアップして書いてください。個人事業主の場合は、事業の内容を任意に記載してください。開業届に書いた内容が参考になるでしょう。

もし、許認可が必要なビジネスを行っている場合は、許認可の証明書に書かれている認可年月日と認可番号を記載します。確認欄は、法務局の職員が審査用に使いますので、何も記載してはいけません。

営業資本襴は、法人登記事項証明書に書かれている資本金額を書き込んでください。個人事業主の場合、資本金という概念そのものがないため「0」と記載します。

従業員数は、パート・アルバイトを含んだ全ての従業員数を記入しましょう。ただし、取締役など経営陣の人数は除外してください。個人事業主も、給与を払って雇っている人がいれば、その人数を記入します。「内専従者」には、給与の支払いが経費として認められる経営者の親族の人数を記載します。

事業用財産を所有していれば、その種類と数量を記載しましょう。

さらに損益計算書の「売上」「売上原価」「販売費」をそのまま記載します。販売費とはビジネスで用いている物件の賃料や通信費、光熱費などの総計です。

加えて、損益計算書に書かれている本業以外の「営業外収益」「営業外費用」、そして「特別利益」「特別損失」「当期純利益」を記入していきましょう。1万円未満は切り捨てで結構です。

もし、会社が銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けていて、まだ完済に至っていない場合、「借入年月(和暦)」「借入先」「借入金額」「期末の負債の残額」を記載していきます。

「返済納方法」には、毎月の返済額を記載しますので、勘違いしないように注意しましょう。

さらに「借入の理由」「返済状況」を、それぞれ短い文章で記載します。順調に返済していれば、返済状況は「遅滞なく返済中」と書けば十分です。

最後に「主要取引先」「取引先の住所」「取引先の電話番号」「取引先の年間取引額」「取引の内容」「取引期間」を記載します。複数の主要取引先があれば、年間取引額が高い順に記載します。そして備考欄には、主要な取引銀行を書いておくのが通例です。