いったん認められた永住許可が、後になって認められなくなるのは、どんな場合?

2023.01.05

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外国人が日本の永住資格を得るためには、住居要件・素行要件・生計要件など、いくつもの条件をクリアし、しかも多数の書類を申請書に添付して提出しなければなりません。その準備にも手間がかかりますし、申請から結果が出るまでに、6か月前後の歳月を要します。なかなか大変な道のりですが、せっかく認められた永住許可も、後になって喪失したり、取り消されたりする場合があります。

日本での永住許可を得るのは難しいので、後になって永住者でなくなるのは精神的なダメージや生活への影響が大きいでしょう。果たして、どのような場面で外国人の永住資格が失われたり、取り消されたりするのでしょうか。



■永住許可が失われる場合

いったん認められた永住許可が失われるのは、海外での滞在が長すぎる場合です。せっかく日本での永住を許可したにもかかわらず、ほとんど日本に住んでいないのでは、永住を認めた意味がなくなってしまいます。

まず、解説の前提として「再入国許可」と「みなし再入国許可」について説明します。

再入国許可とは、外国人が日本を出るときに、将来再び日本に入ることをあらかじめ許可してもらうことです。なぜなら、外国人は原則として、出国によって在留資格が失効するので、入国するたびに在留資格を取り直さなければならないからです。しかも、ビザが出るまでには数か月ほどかかってしまいます。そこで、外国人が一時的に出国するときには、あらかじめ再入国許可を得ておくと、在留資格を取得しなおす必要がなくなり、余計な手間や時間がかかりません。

ただ、月に何回も日本を出たり入ったりする外国人にとっては、出国のたびに再入国許可を得ることも手間がかかって大変です。その手間を省略するのが「みなし再入国許可」という制度です。いったん、みなし再入国許可を得ていれば、外国人が出国しても1年以内に日本へ戻ってくるのであれば、手続き不要で再入国が認められます(もっとも、出国中にビザの期限が過ぎれば、みなし再入国許可も無効です)。

以上のことから、外国人が永住許可を失う場合とは、次の通りです。

<再入国許可を得ない出国>

外国人が、うっかり再入国許可を得ずに日本を出国すれば、在留許可が失効します。それが永住許可であっても例外ではありません。


<再入国許可を得て出国したが、期限までに再入国しなかった場合>

再入国許可にも有効期限があります。その期限までに日本へ戻ってこられなければ(戻ってくることを忘れていれば)、永住資格を失ってしまいます。


<みなし再入国許可によって出国したが、1年以内に再入国しなかった場合>

みなし再入国許可が認められている間は、日本を出国していても特別に在留資格(永住権)がキープされています。しかし、その期限である1年以内に、日本に再入国しなかった外国人は、永住権を失います。


■永住許可が取り消される場合

出入国在留管理局の判断によって、永住許可が取り消されるのは、永住を認めている前提条件がなくなってしまった場合や、申請内容のウソが発覚した場合などです。


<不正に「上陸許可」または「永住許可」を受けたこと>

永住許可を得るために、申請内容でウソをついたことが発覚すれば、永住を認めている前提条件が欠けてしまいます。たとえ永住申請の段階では本当のことを書いていても、日本に入国する上陸許可を得る時点でウソをついていれば、やはり永住を認める前提を欠いてしまうのです。それで永住許可が取り消されても仕方ありません。


<引っ越してから90日以内に新住居地の届出をしないこと>

住民基本台帳法の一般的なルールでは、引っ越しから14日以内に新住所を市区町村役場に届け出なければなりません。これに違反すると、5万円以下の過料のペナルティが科されると規定されていますが、実際にはペナルティが科されません。


一方、在留外国人は引っ越してから90日以内に出入国管理当局に新住所を届けなければなりません。この義務に違反すると、在留資格が取り消されるペナルティが科され、このルールは実際にも適用されます。永住資格でも同様です。


<虚偽の住居地を届け出たこと>

外国人が実際に住居地としていない虚偽の住所を届け出ることは法律違反であり、永住者であれば永住資格が取り消される十分な理由になります。出入国管理を徹底するためにも、どの外国人がどこに住んでいるかを正確に把握しておくことが必要だからです。


<国外退去強制処分となった場合>

犯罪で取り締まりを受けて、有罪判決が確定すれば、国外退去強制処分になります。つまり、国籍のある国へ強制送還となるのです。もちろん、日本に永住する前提を欠きますので、永住許可は当然に取り消されます。

たとえば、無期または1年を超える懲役もしくは禁錮に処せられた者や、違法薬物の所持や使用などの罪により有罪判決を受けた者などが該当します。


<了解書に違反したとき>

申請時に署名した了解書に書かれているように、正式な永住許可が出る前に、就労状況や家族状況、納税状況などの事情が変わったにもかかわらず、出入国在留管理局に報告せずに放置すれば、後で永住許可が取り消される場合があります。

もし永住許可が取り消されれば、就労ビザを取得したり日本人と結婚したりして、新たな在留資格を得ることで、日本に住み続けることもできます。あるいは、祖国へ帰るのもひとつの選択でしょう。