貯金が多くても関係ない! 帰化申請の「生計要件」について解説します

外国人が日本国籍を得るために、帰化を申請するとき、日本に少なくとも5年、継続して暮らしていなければならないとする住居要件や、品行方正に真面目に暮らしていたことを示す素行要件などをクリアしていなければなりません。中でも重要な要件のひとつが「生計要件」です。要するに、十分な収入を得られていて、生活が成り立っているかどうかが審査されるのですが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。

  • なぜ、生計要件が必要なのか

日本にやってきた外国人が、帰化した後に生計を立てられるかどうかは、自己責任であって、国が審査する筋合いではないようにも感じる方もいるでしょう。ただ、日本社会の中で自立した生活基盤を築いているかどうかは、新たに社会が日本人として受け入れる上で大切な要素といえます。

帰化には、原則として5年以上にわたって日本に住み続けたという住居要件が求められますが、生計要件ではまさに「帰化した後も、変わらず日本に住み続けられる見込みがあるか」が問われているのです。収入や貯金が多ければ多いほどいいのではなく、安定した十分な生活基盤をこれから長年にわたって維持し続けられることを示さなければなりません。

もし、安定した十分な収入が得られなければ、その人は生活保護でフォローしなければならない可能性がありますし、生活苦で盗みなどの犯罪を犯してしまったり、ホームレスになったりするおそれがあります。いずれにしても社会的な負担は小さくありません。日本では二重国籍が認められていませんので、帰化によって、母国の国籍からは離脱しなければならず、名実ともに日本人となるのです。頼る国は日本しかなくなってしまうからこそ、前もってそうした社会的保護にふさわしい人物かどうかを経済的側面から審査するのが生計要件です。

特別永住者(在日韓国人・在日朝鮮人の家系)や、日本人と結婚した外国人が帰化する場合(簡易帰化)でも、生計要件は審査される取り扱いとなっています。特別永住者は、日本で生まれ育ってきた長年の生活実績がありますし、日本人と結婚した外国人も多くは結婚相手の日本人とともに生活を共同で支えるものと一般に考えられます。それでも念のため、生活要件の個別審査が実施されているのでしょう。


■生計要件の具体的な内容

一人暮らしの外国人が帰化申請する場合、その本人の収入が生活要件の審査対象となります。家族と同居している場合は、その家族の構成員全員の収入(世帯収入)が審査対象となるため、家族の中で他に働いている人がいれば、生活要件のハードルを越えられる可能性も高まります。

どれぐらいの収入があれば、生活要件をクリアできるかですが、おおむね年収300万円以上あればいいといわれています。もちろん、299万円ならダメだというわけではなく、その地域の家賃や物価の水準、あるいは本人の収入が将来上がっていく見込みなど、様々な要素を含めて審査されます。よって、年収300万円を下回っていても帰化が認められることがありますし、その逆もまた十分にありうるのです。

月18万円の給与の会社員でも、帰化が許可される可能性は十分にあります。アルバイトや派遣社員でも、月18万円程度の収入があれば扱いは同じです。会社経営者や個人事業主でも同様で、確定申告書などから確認できる役員報酬が同程度でも、帰化が認められている例は少なくありません。たとえ確定申告の年度では月平均18万円を下回っていても、最近の収入が好調なら生計要件はクリアする場合がありますので、その裏付けとなる帳簿などを判断資料として提出しましょう。ただし、現在無職となっている場合は、不許可のおそれがあります。家族の扶養に入れることを示すか、就職してから帰化を申請するようにしましょう。

また、給与以外でも、年金や奨学金、児童手当なども同様に収入に含んでいいものとされています。

帰化申請では、資料として銀行口座の出入金履歴の提出が求められますが、その残高が多くても、生活要件のために有利な事情とはなりません。むしろ、履歴から浪費の跡が見えれば、帰化が不許可になるおそれすらあります。それよりも、勤務先など確かな出所から入金があることが確かめられることが大切なのです。

借金があっても、通帳の出入金履歴から、毎月確実に返済されている事実を確認できれば、ほぼ問題にはなりません。住宅ローンや自動車ローンなどの明確な目的がある借り入れだけでなく、目的が特定されないカードローンなどでも同様です。自己破産歴があるとしても、免責決定から7年以上経過していれば、生計要件は満たすという取り扱いが一般的な運用です。

住まいは、持ち家だからといって生計要件のクリアのために有利な事情とはなりません。賃貸物件に住んでいても、家賃を毎月確実に支払っている事実が確認できればいいのです。

記事の監修者

Eight Links行政書士事務所 代表 蜂須賀 昭仁

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

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