永住理由書の書き方のコツ

2023.01.05

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外国人が日本の永住資格を申請するときに、申請書などとともに添付して提出しなければならないのが「永住理由書」です。日本人や永住外国人と結婚している場合は不要とされてきたのですが、近ごろでは追加で理由書が求められる運用にもなりつつあるので、今では事実上の必須書類といえるでしょう。

文字どおり、日本に永住する理由について説明する文章を自由に書くのですが、自由度が高いと、かえって書く手が止まるという方も少なくないと思われます。しかも、永住理由書に過不足があって不許可になるというケースも増えています。このページでは、永住理由書に書くべき必勝パターンのコツについてお伝えしています。


■永住理由書は「過去」「現在」「未来」を軸に書く

永住理由書には、およそ1500字~3000字ぐらいのボリュームが必要だとされていますが、ただ、自分の思いの丈や、いかに日本が好きなのかという情熱を文章にぶつける……というだけでは、うまくいきません。永住理由書を審査する出入国管理当局の職員が「何を知りたいのか」という関心事から逆算して書かなければなりません。

文章は、読み手の立場や気持ちを考えながら書かなければ、伝えたいことがなかなか伝わらないからです。ですから、永住理由書には必勝パターンがあります。

  • 【過去】日本に来てから、これまでの経緯

  • 【現在】今の就労状況・生活状況、永住要件を満たしていることのアピール

  • 【未来】これから、永住権を取得してやりたいことや希望すること

これらの要素をバランスよく書いていけば、伝わる理由書が仕上がります。


■これまでの経緯は、どう書く?

過去の学歴や職歴について、時系列で順を追って書く「履歴書方式」が、一番無難です。日本に来る前の、海外における学歴や職歴までは、基本的に不要とされています。

「○○年○月 □□大学□□学部で学ぶために留学ビザで来日」

「○○年○月 技術・人文知識・国際業務ビザにより□□株式会社に就職。通訳・翻訳業務などに従事」

……のように書くといいでしょう。出入国在留管理局の最大の関心事は、あなたが正当な在留資格(ビザ)によって日本に住んできたかどうか、です。日本人の配偶者としての資格で働いている場合は、いつ日本人と結婚したのかも書かなければなりません。

審査のときには、過去に在留資格を申請したときに書いてきた履歴と、永住理由書との間で矛盾や食い違いがないかどうかもチェックされます。よほど昔のものでない限り、在留資格の申請書類も、すべて保管されているからです。よって、永住理由書だけで体裁を整えようとしても、いずれバレてしまいますし、食い違いが発覚したときの印象は悪く、不許可になる原因にもなりかねません。

もし「あのとき書いたことは間違っていたな」と思い出したら、永住理由書で報告し、素直に間違いを認めて謝罪しておきましょう。間違いは隠し通すより、先回りして正直に書いたほうが、かえって印象は良くなります。


■現在のことは、どう書けばいい?

就労ビザで日本に滞在している場合は、ビザと仕事内容が合っているかどうかが、出入国在留管理局の関心事です。よって、過去と同様に、ビザの種類と、現在の勤務先の仕事内容を報告します。仕事内容は、業界の一部の人しか理解できない専門用語を使わず、会社の広報用パンフレットなどを参考にして、わかりやすい言葉で説明したほうが、ずっと印象が良くなります。

次に書くべきなのは、永住するための要件を満たしていることのアピールです。所得税や住民税、年金や健康保険などの社会保険料について、納付期限を守っていること、あるいは犯罪歴や大きな交通違反歴がないことを書けば、善良に日本で住み続けていることのアピールになります。

税金や社会保険料について、過去に1度や2度の納付遅れがあったからといって、それだけで不許可になることは少ないですが、これも理由書で正直に書いてきたほうが印象はいいです。ただし、過去に未納があって、まだ支払っていない場合は、正直に書いてもダメでしょう。永住を申請する前に、未納となっているお金をちゃんと納めるのが先です。

しかも、近ごろは後から未納分を納めても、永住不許可になってしまう例が増えてきています。それだけ審査が厳しくなっているので注意しましょう。

独立した生計を立てて、日本で安定して暮らしていけること(生計要件)も、永住が認められるための重要な条件です。その目安は年収300万円とされていますが、それ以下だからといって永住許可が出ないわけではありません。

ある程度、預貯金に余裕があれば、それも生計要件に加えられる場合もありますが、資産が多いほど永住許可で有利になるわけではありませんので、資産家としてのアピールは控えめにしておきましょう。それよりも、毎月、安定した収入が得られている事実のほうを、出入国在留管理局は重視します。

日本語能力に自信がある人は、日本語能力試験の結果などを書いておくと、審査でプラスに作用します。


■未来のことは、どう書く?

日本に永住したい理由を書きます。「理由書」というタイトルが付いているのですから、ここがメインです。「日本の人々・日本の社会の好きなところ」「日本だからこそ、やってみたいこと」「これからの目標や希望(事業計画や家族計画など)」などを素直に書きましょう。「頑張りたい」だけでなく、もっと具体的なビジョンやエピソードなどを書けると、印象が良くなります。

書きたいことがあるけれども、日本語で書くのが難しいと思われる場合は、行政書士がアドバイスできますので、お気軽にご相談ください。