統計やアンケートからわかる 日本の永住者制度

2023.01.05

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法務省などがまとめた統計によると、2020年6月末現在で、日本に滞在している在留外国人の数は、288万5904人となっており、やや減少傾向にあります。

そのうち、一般的な手続きで永住許可を得た永住者の人数は、2017年末のデータで74万9191人、いわゆる在日韓国人・朝鮮人を中心とする特別永住者は、32万9822人でした。一般永住者の人口は増加傾向、特別永住者の人口は減少傾向にあります。



■永住者の人口分析

永住許可申請件数と処理状況は、同じく2017年末現在のデータで、次の通りです。

  • 新規受理…… 6万0024件
  • 受理総数…… 5万0907件
  • 許可…… 2万8942件
  • 不許可…… 2万0044件
  • その他…… 1921件(移管、取下、終止など)
  • 永住許可率 56.9%

新規受理件数は増えていますが、許可率は低下傾向にあり、永住許可申請の審査が年々厳しくなっていることがわかります。

一般永住者の国籍・地域別の人口内訳は、次の通りです(2017年末)。

  • 中国…… 24万8873人
  • フィリピン…… 12万7396人
  • ブラジル…… 11万2876人
  • 韓国…… 6万9391人
  • ペルー…… 3万3891人
  • その他…… 15万6764人

韓国出身の一般永住者は人口比で第4位ですが、特別永住者も合わせれば39万9213人で第1位となります。

都道府県別の永住者の人口は、上位10都道府県のみ抜粋すると、次の通りです(2017年6月)。

<一般永住者>

  • 東京都……13万5918人
  • 愛知県……8万6452人
  • 神奈川県……7万5963人
  • 埼玉県……5万7894人
  • 大阪府……4万7581人
  • 千葉県……4万6869人
  • 静岡県……3万7083人
  • 兵庫県……2万4284人
  • 群馬県……2万0022人
  • 岐阜県……1万8771人

愛知県で永住者が多い点は目を惹きます。トヨタ自動車(豊田市)の工場などへの出稼ぎで、そのまま定住した外国人が多いものと考えられます。静岡県浜松市も、ヤマハ・カワイといった楽器メーカー、スズキ・ホンダ・ヤマハなどの自動車メーカーの本社が集中していますので、外国人労働者が多い自治体です。

北海道・東北・中国・四国・九州地方は比較的少なく、首都圏ないし本州の中央部に永住者の人口が集中していることがわかります。

群馬県には人口の約1割がブラジル人という、日本最大のリトルブラジル、大泉町がありますし、岐阜県にも可児市、大垣市、美濃加茂市といった有名なブラジル人街があります。

<特別永住者>

  • 大阪府……8万6727人
  • 東京都……4万4116人
  • 兵庫県……3万9753人
  • 愛知県……2万7101人
  • 京都府……2万3128人
  • 神奈川県……1万7728人
  • 福岡県……1万2321人
  • 埼玉県……8785人
  • 千葉県……7742人
  • 広島県……7476人

特別永住者の都道府県別人口を見ると、上位の様相が一変します。大阪市生野区は関西地方を代表するコリアンタウンになっています。大正時代から零細な町工場が密集していた生野地域ですが、大正末期に済州島と大阪港を繋ぐ貨客船の航路ができたのをきっかけに、工場へ出稼ぎに来る韓国人(当時は韓国併合により日本国籍保有)が大勢押し寄せたのです。生野区の鶴橋商店街でも多くの在日韓国人・朝鮮人で賑わっています。

東京都内にも新大久保という有名なコリアンタウンがあります。韓国料理店や韓流グッズのショップなどが軒を連ねています。兵庫県のコリアンタウンといえば、阪神尼崎駅前の一帯です。


■永住者に関するアンケート調査結果

内閣府が実施した「基本的法制度に関する世論調査」によれば……

『日本の永住者数は多いか』という質問に対して

「多いと思う」……16.8%

「どちらかといえば多いと思う」……21.5%

「適当だと思う」……29.2%

「どちらかといえば少ないと思う」……13.1%

「少ないと思う」……5.5%

「わからない」……13.9%

「多い」と答えた人が多い傾向にあります。永住外国人が知り合いに2~3人いれば「多い」と感じる人もいると思いますし、感覚は人それぞれでしょうが、統計上、永住者の人口は年々増えているので、人々の肌感覚は実態に合っているといえます。

「適当だと思う」と答えた人は中規模の都市で多く、「少ないと思う」と答えた人の割合は大都市で高いという分析結果が出ています。

年齢別では、「多いと思う」と答えた人の割合は18~29歳で高く、「少ないと思う」と答えた人の割合は60歳代で高くなっています。

『外国人に永住を許可する際、どのような要件が必要だと思うか』という質問に対しては、

「犯罪歴がないこと」……73.7%

「税金や社会保険料を納めていること」……71.6%

「不法入国、不法残留、不法就労など出入国管理及び難民認定法に違反したことがないこと」……61.3%

「自力で暮らしていける程度の収入や資産があること」……53.9%

(複数回答)

「犯罪歴がないこと」、「税金や社会保険料を納めていること」、「自力で暮らしていける程度の収入や資産があること」を挙げた人の割合は中規模の都市で高く、「不法入国、不法残留、不法就労など出入国管理及び難民認定法に違反したことがないこと」を挙げた者の割合は大都市で高くなっています。

大都市では外国人とふれあう機会が多く、オーバーステイなどの噂話を身近で聞いたことがある人が多いのかもしれません。

『永住許可を取り消す制度の賛否』については、

「賛成」と答えた人の割合が74.8%

「反対」と答えた人の割合が14.6%

「わからない」と答えた人の割合が10.6%

年齢別では、30歳代で特に「賛成」と答えた者の割合が高くなっています。