ブラジル人が、日本に帰化するときの手続きと注意点

日本に帰化した元ブラジル人は、2021年の統計で444人となっていて、国籍別でいえば、韓国・朝鮮、中国に次いで第3位の多さです。在日外国人の国籍別人口で、ブラジル人は第5位ですので、帰化を希望する割合が比較的高いといえます。

ほぼ地球の反対側同士である日本とブラジルは古くから縁が深く、1908年(明治41年)の笠戸丸で781人の日本人がブラジルを新天地として求め、日系ブラジル人1世となりました。差別と戦いながらも、コーヒー農園で働き続け、ブラジルの経済に貢献してきました。その後は日本の国策として累計26万人の日本人移民が送り込まれ、現地で生まれた2世・3世なども含めれば、日系ブラジル人は約140万人にも達しています。

その一方、日本に移り住んで工場などで働くブラジル人も増加しています。今では埼玉県の本庄市や上里町、群馬県の太田市や大泉町、神奈川県の横浜市鶴見区、綾瀬市、愛川町、静岡県浜松市などがブラジリアンタウンとして独自に進化しています。

群馬県大泉町は、人口の約15%がブラジル人で占められているといい、食料品店でもブラジル人好みのものが揃っていますし、メニューなどのポルトガル語表記が一般的になっています。国内には47都道府県の全てに、合計20万人あまりのブラジル人が住んでいるといわれています。

そうした状況の中で、帰化して日本国籍を取得しようとするブラジル人も増えてきているのです。


■ブラジル人が日本に帰化するときの必要書類

他の国籍の方が帰化する場合と、ほとんど共通しています。自分で作成するものとして、申請書の他に、親族概要書、生計概要書、履歴書、帰化の動機書などが必要となります。また、手元で用意できる証明書類として、「証明写真 2枚」「パスポートのコピー」「最終学歴の卒業証書のコピー(または 卒業証明書)」「国家・公的資格試験の合格証のコピー」が必要です。

国によって形式が異なるのが、本国から取り寄せる個人情報などの証明書類です。取り寄せるのは、出生証明書・国籍証明書・結婚証明書・死亡証明書・申述書などです。そして、すべてのポルトガル語を日本語に翻訳し、翻訳者の署名捺印をもらってくる必要があります。

【出生証明書(Certidao de nascimento)】

ブラジルの出生証明書を、帰化申請の証拠書類として本国から取り寄せる場合、申請者本人と兄弟姉妹のものが必要です。同姓の年長者の兄弟姉妹の証明書が必要とされます。ただし、法務局によって取り扱いが異なる場合がありますので、前もって確認しておきましょう。

ブラジルなどの国は、国籍について「生地主義(出生地主義)」を採用しています。ブラジル国内で生まれれば、ブラジル国籍を与えるという仕組みです。両親はブラジル国籍を持っていないけれど、ブラジルで出産したので子どもはブラジル人だということが、よく起こります。

ブラジルで生まれた方であれば、本国の登記役場で発行してもらいますが、日本生まれで、ブラジル領事館において出生登録を行ったという方は、その登録を行った領事館に出向いて取得することになります。

ブラジルの出生証明書は、登録事項が全部記載されている場合と、必要な一部のみが記載されている場合があります。日本でいう「謄本」「抄本」のようなものです。後になってどんな情報が必要になるかわかりませんので、念のため、全部記載の出生証明書を発行してもらったほうがいいでしょう。

出生証明書に書かれている情報として「NOME」は氏名です。「MATRICULA」は登録番号で、これによって係員がどの証明書なのかを特定します。

「DATA DE NASCIMENTO POR EXTENSO」は生年月日で、「HORA DO NASCIMENTO」にて出生の時間まで記録されているのがブラジルの出生証明書の特徴です。その他、「NATURALIDADE」で本籍地、「LOCAL, MUNICIPIO DE NASCIMENTO E UF」で、出生場所がわかります。

【国籍宣言書(Declaracao de nacionalidade)】

過去には「国籍証明書」と呼ばれていたものですが、2020年9月1日に名称変更となり、「国籍宣言書」と呼ぶようになりました。これは本人のものが必要です。在日ブラジル大使館・領事館で発行してもらうことができます。

【結婚証明書(Certidao de casamento)】

これは本人に加えて、父母のものも取得しなければなりません。在日ブラジル大使館・領事館で婚姻登録を行ったブラジル人の方は、その登録を行った領事館で発行してもらいましょう。なお、ブラジルに離婚証明書はありません。過去に離婚した事実は、出生証明書または婚姻証明書に付記されるなどの対応によって公証されています。

【死亡証明書(Certidao de obito)】

父または母が亡くなっている場合に取得すれば足ります。

以上の証明書は、住所地を管轄するブラジル大使館・領事館で取得します。ただし、「e-consular」という予約システムで、来館の日時を事前に登録しておかなければなりません。

【申述書】

陳述書は、帰化申請者の父と母が、結婚の内容や、お互いに配偶者について他己紹介のように説明したり、子どもについて記載したりする書面です。これは父母に直接頼んで書いてもらいましょう。

そして、これらの書面のポルトガル語は、すべて日本語に翻訳し、添付しなければなりません。翻訳文には、翻訳者自身の署名や捺印が必要です。