ベトナム人、フィリピン人が、日本に帰化するときの手続きと注意点

日本に帰化した元ベトナム人は、2021年の統計で269人で、国籍別でいえば、韓国・朝鮮、中国、ブラジルに次いで第4位の多さです。また、日本に帰化した元フィリピン人は、2021年に237人となっていて、国籍別でベトナムに次ぐ人数です。

昔から、ベトナム人やフィリピン人の間で日本は、アジア初の先進国として根強い人気や尊敬を集めていて、技術や文化を学ぶ対象になってきました。2010年頃からは、いずれの国も、経済力が向上してきて、給与水準も上がっているので、富裕層や奨学金を受けた優秀な学生を中心に、日本に留学する動きも加速しています。中には祖国で借金をしてまで日本で働きたいと願うベトナム人やフィリピン人もいます。

ベトナムやフィリピンは、いずれも政治的には安定していると言いがたいところです。ベトナムは一部で自由主義経済を取り入れ、ホーチミンなどを中心に発展していますが、政治上は社会主義国で、共産党の一党独裁が続いています。政治の悪口を公衆の面前やSNSなどで発言すると取り締まりを受ける場合があります。フィリピンは資本主義国であるものの、大統領は強権的な人物の就任が続いており、緊張感があります。

そのような事情から、比較的安定した政治体制の日本に住みたいというベトナム人やフィリピン人が多くなっているのでしょう。中でも、日本の政治に選挙で参加したいとか、日本の公務員になりたいと思う人は、帰化の申請を検討するのです。


■帰化を申請するベトナム人が、本国から取り寄せる証明書類

ベトナム人の方が日本に帰化したい場合、法務局に提出するため、次のような証明書類が必要となります。在日ベトナム大使館で取得できないものは、ベトナムに住んでいるご家族に頼んで代理で取得してもらい、郵送してもらうといいでしょう。

<出生証明書>(本人・兄弟姉妹)

生まれた年月日や場所などをベトナム当局が公証している書面です。兄弟姉妹の分も忘れずに取得しておきましょう。

<結婚証明書>(本人・父母)

結婚の届出を行った事実が公証されています。未婚独身の方には作成されていませんので、提出は不要です。家族が偽装でないことを裏付けるため、父母の結婚証明書も一緒に提出することになっています。

<死亡証明書>

父または母が死亡している場合には、死亡証明書も取得して、より正確な家族関係の現状が裏付けられている資料を法務局に提供するようにします。

<国籍証明書>(本人のみ)

この国籍証明書だけは、在日ベトナム大使館で取得することができます。ただし、この国籍証明書には有効期限が設定されていますので、帰化の申請日から逆算して取得するようにしましょう。書類収集の作業に時間がかかりすぎて、有効期限が切れたら、再取得しなければなりません。

また、これらの書類はベトナム語で書かれていますので、必ず全てを日本語に翻訳し、翻訳者の署名捺印がある翻訳文を添付しなければなりません。

<ベトナム国籍を放棄できるかどうかチェック>

日本人には憲法で国籍離脱の自由が保障されていますが、ベトナム人には国籍を放棄できない場合が規定されています。

  • 国に対する租税債務がある者
  • ベトナム組織・個人に対する財産義務がある者
  • 刑事責任を問われている者
  • ベトナム裁判所の判決・決定を執行されている者
  • 判決執行のため拘留されている者
  • 行政処分を執行されている者
  • 国籍の放棄が国家利益に影響を及ぼす者
  • ベトナム国の政府幹部、公務員、軍に勤務している者

ベトナム人が国籍を放棄する手続きは、在日ベトナム大使館で受け付けています。ただし、一時的でも無国籍の期間ができないよう、帰化を申請している法務局から適切な指示をもらいながら進めましょう。


■帰化を申請するフィリピン人が、本国から取り寄せる証明書類

フィリピン人が帰化する場合も、出生証明書や結婚証明書、死亡証明書などを本国から取り寄せる必要があります。ただし、フィリピンの場合は他の国の制度とやや事情が異なります。

まず、フィリピンの各種証明書は、役場で発行してもらうのではなく、PSA(フィリピン統計局:Philippine Statistics Authority)に発行を依頼します。フィリピンに住む家族に代理で取得してもらい、郵送によって受け取る人が多いですが、協力してくれる家族がいない事情がある方は、PSAデリバリーサービスというオンラインで発行を依頼する方法もあるので便利です。

 
https://www.psaserbilis.com.ph/#!

そして、国籍証明書の発行がありません。代わりに「アポスティーユ認証済のPSA発行出生証明書」と「パスポート」によって、ベトナム国籍を証明する形式となります。

アポスティーユ認証とは、日本とフィリピンのようなハーグ条約加盟国同士においては,証明書にアポスティーユ(公印確認)が付いている事実だけで,権限のある本国機関から発行された正式な本国書類として見なすことが可能となる制度です。これによって、日本の法務局がフィリピンのPSAに問い合わせする必要がなくなり、スムーズに手続きが進むのです。