日本滞在10年未満で、日本への貢献が不十分で永住が認められなかった例

2023.01.05

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外国人が日本に永住するためには、その条件のひとつとして「引き続き10年以上、日本に居住していること」が挙げられています。ただし、この居住条件が国際比較として厳しすぎ、それで優秀で社会貢献意識の高い外国人が、なかなか日本に永住したがらず、他の国へ人材流出してしまう原因になっているのではないかと指摘されているのです。

この課題は1990年代から2000年代の段階で、すでに日本政府関係者の間で共有されており、日本経済の発展にブレーキをかけてしまうと心配されています。よって、より短い居住年数でも永住を許可する新たな運用を始めることが急務となっていました。具体的には「日本への貢献があると認められた方」や、高度専門職ビザで日本に在留している外国人について、居住条件を1~5年に短縮する優遇策が採用されています。ただ、日本への貢献度が高い優秀な外国人であっても、優遇されずに永住が認められない例があるのです。

このページでは、2006年時点において法務省などが取りまとめて正式に公開した、永住の不許可事例について紹介しています。現在では、同様の事例でも永住が認められる可能性があります。永住申請をするタイミングを図る上での参考にしてください。


■不許可事例1

日本産競走馬の生産・育成、輸出、馬産農家経営コンサルタント、講演等を行っているとして申請があったが、入国後1年半と短期であることから不許可となった。

⇒ 日本への貢献度は高いと考えられますが、まだ日本在留歴が1年半ということで、永住を認めるのは時期尚早と判断されたものと考えられます。今後も引き続き、同等以上の社会貢献ができるのかどうか不明だという懸念もあったかもしれませんが、他国なら永住が認められる場合もありそうです。


■不許可事例2

画家として多数の作品を製作・保有し、美術館の建設後に寄贈するとして申請があったが、在留状況が良好とは認められず(不正な在留に関与)、不許可となった。

⇒ 善良な素行で日本に暮らしているとはいえないと判断されたものと考えられます。不正な在留に関与することは、不法在留罪(オーバーステイ)の幇助とみられる場合もあり、やむを得ないでしょう。


■不許可事例3

外国人の子弟の教育を行う機関において教師の活動を行っているとして申請があったが、当該活動のみをもって社会的貢献等には当たらないものとして不許可となった。

⇒ 日本での教師の仕事は永住のためにするものではないとはいえ、仕事が社会貢献に該当しないといわれてしまうのは残念です。しかし、他の活動も積み上げて改めて申請すれば許可が出る可能性があります。


■不許可事例4

約1年間、高校で教師をしている他、通訳等のボランティア活動を行っているとして申請があったが、当該活動のみをもって社会的貢献等には当たらないとして不許可となった。

⇒ 教師に加えて、通訳のボランディアをしていても社会貢献ではないとされたのは、残念です。10年以上引き続き日本に滞在し、一般枠で改めて申請したほうがいいかもしれません。


■不許可事例5

本邦で起業し、当該法人の経営を行っているが、その投資額、利益額等の業績からは顕著なものであるとはいえず、我が国経済又は産業に貢献があるとは認められず、不許可となった。

⇒「日本への貢献があると認められた方」のガイドラインによれば、投資額が1億円以上あったかどうかが分水嶺となるようです。


■不許可事例6

大学で研究生として研究活動を行っているが、教授等の指導を受けて研究している通常の研究生、学生等の範囲内での研究活動であり、研究分野において貢献があるとまでは認められず、不許可となった。

⇒ まだ大学生として学ぶ立場で、教授の指導を受けているうちは日本の学術研究に貢献しているとは認められないようです。大学などの研究機関に入って、独自のテーマで研究し始めると、可能性があるかもしれません。


■不許可事例7

投資関連企業の課長相当職にある人物であるが、当該勤務のみをもって我が国経済に貢献があるとは認められず、他に貢献に該当する事項もないことから不許可となった。

⇒ 「日本への貢献があると認められた方」のガイドラインによれば、会社の管理職を5年以上続けていると、社会貢献ある外国人として認められる可能性が出てくるようです。


■不許可事例8

システム開発関連企業の課長補佐相当職にある人物であるが、当該勤務のみをもって我が国経済に貢献があるとは認められず、他に貢献に該当する事項もないことから不許可となった。

⇒ この事例も同様です。課長や部長への出世を目指すか、会社以外の分野、趣味やボランティアで社会貢献に臨むのもいいでしょう。


■不許可事例9

約9年間、本邦に在留し、作曲活動や自作の音楽作品発表会を行い、我が国と本国との音楽分野における交流に努めているとして申請があったが、文化・芸術分野における我が国への貢献とは認められず、不許可となった。

⇒ 音楽活動の具体的な中身はわかりませんが、楽曲を支持するファンが国内にどれだけ多くいるのかも、社会貢献度の指標になっているかもしれません。


■不許可事例10

約9年間、本邦に在留し、我が国の芸能人による本国での公演の実現、我が国と本国の企業交流にかかるイベント実現等を理由に申請があったが、我が国への貢献とは認められず、不許可となった。

⇒ ここでも、海外公演やイベントの参加者数や反響の大きさなどが、社会貢献を図る指標となっている可能性があります。


■不許可事例11

入国後、3年間は留学生として在留し、その後、我が国の大学の医学部助手として5年間勤務していたが、我が国の高等教育の水準の向上に貢献があったものとは認められず不許可となった。

⇒ 単に大学で働くだけでは、他の外国人よりも優遇する貢献度とまでいえないと判断されたものと思われます。


■不許可事例12

語学指導助手として入国し、3年間は本邦内の中学校で、それ以降は高等学校において約4年間英語教育に従事していたが、日本の大学又はこれに準ずる機関の常勤又はこれと同等の勤務の実体を有する教授、助教授又は講師としては認められず、高等教育の水準の向上に貢献のあった者とは認められなかった。

⇒学校の一般的なネイティブ英語講師として稼働しているということでしょう。日本在留歴が6年11か月あるとのことなので、あと3年以上在留し、一般枠で永住を申請したほうがいいかもしれません。