日本版グリーンカードとは?

2023.01.05

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グリーンカードとは、アメリカ合衆国で永住が認められた外国人に発行される証明書です。日本のように、国内での居住歴の長さは、永住許可のためにそれほど重視されないのが、アメリカの永住制度の特徴といえます。たとえば、アメリカ人と結婚した外国人というだけでグリーンカードが発行されますし、その他、アメリカ合衆国に50〜100万ドルの投資をした外国人や、スポーツ・芸術・研究などの世界で卓越した能力を持っている外国人にもグリーンカードが積極的に発行されています。

日本はアメリカのような移民国家ではありません。それでも、アメリカの良いところを見習い、日本に住んでいる優秀な外国人に対して永住許可のための要件を緩和し、日本社会のために才能を使ってもらうことで、将来の日本の経済や文化をより強めていくことを目指す「日本版グリーンカード制度」が整備されつつあります。


■日本の国際競争力が低下しているという問題意識

国際比較で、日本は外国人の永住を認めるための条件が厳しすぎると指摘されることがあります。そのせいで、日本の経済界などで活躍していた優秀な外国人が、やがて祖国へ帰ったり、より大きなチャンスを求めてアメリカ合衆国や中国などに移住したりする例が後を絶ちません。すると、世界から日本企業への投資も集まりにくくなります。そのことは、日本の将来にとって決して望ましいこととはいえません。

日本では、優秀な外国人を迎え入れるための在留資格である高度専門職ビザを3種類用意しています。

  • 高度専門職1号(イ)…… 高度学術研究活動を行う大学教授や研究者など、日本の公的・民間の機関との契約に基づいて行う研究や、研究の指導、教育をする活動を行う外国人に認められる在留資格。

  • 高度専門職1号(ロ)…… 高度専門・技術活動を行う化学・生物学・心理学・社会学など(自然科学・人文科学)の研究者など、日本の公的・民間の機関との契約に基づいて、知識や技術を要する業務に従事する活動を行う外国人に認められる在留資格。

  • 高度専門職1号(ハ)…… 高度経営・管理活動として、日本の公的・民間の機関・法人において、事業の経営や管理職に従事する外国人に認められる在留資格。

こうした高度専門職の外国人が、日本国内で腰を据えて仕事を続けられる環境を整えるためにも、高度専門職ビザの持ち主が永住申請をした場合に、その許可条件が緩和されて永住を認められやすくなる仕組み作りが重要です。


■日本での実績などをポイント制で測定

そこで、高度専門職として日本に居住している外国人については、居住年数の要件を緩和して、日本の居住歴が浅くても特別に永住を認めるルール改定がなされています。具体的には、原則として10年以上引き続き日本に居住していなければ永住申請が認められないところ、「日本への貢献があると認められた方」については、その要件が「5年以上引き続き居住」に緩和されています。また、高度専門職については、その能力や実績などに応じて、居住要件が1年~3年以上とさらに緩和されるルールが追加されています。

能力や実績などは、出入国管理当局の裁量判断に委ねるのではなく、ポイント制という客観的な指標が採用されています。過去3年間の実績などをポイント計算して累積70点以上ですと、3年以上の継続居住で永住資格を申請する要件を満たします。また、過去1年間の実績などをポイント計算して累積80点以上を獲得していれば、1年以上の継続居住で永住資格を申請する要件を満たすようになっています。そうして、優秀な在日外国人が国外へ移住していくおそれを小さくして、日本経済や文化の発展に今後も永く貢献してもらいたいという狙いがあるのです。

ポイント計算表(出入国在留管理庁発表)

https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf

※高度専門職のポイント制について、詳しくは別のページで解説しています。


■最長在留期間の要件の特例

永住資格を取得しようとしている外国人は、その保有しているビザ(在留資格)が、その種別において、日本の法令(出入国管理及び難民認定法施行規則)で定められている最長在留期間が認められていなければなりません。それだけ長期間、日本に済ませても構わないと、出入国管理当局が信頼していることの裏付けでもあります。

多くのビザで、最長在留期間が「5年」と定められていますが、一般的には日本に初めて入国する段階から5年の在留期間が認められることは、まずありません。最初は2~3年からスタートします。しかし、高度専門職ビザでは最初の入国時から最長の5年の在留期間が認められます。これも間接的に永住を促進するための方策のひとつといえるでしょう。さらに、ポイント計算の結果として70点以上のポイントを持っていると認められた高度専門職外国人については、たとえ5年未満の在留期間であっても「最長の在留期間をもって在留している」ものと見なされます。

これらの特例が、優秀な専門職外国人の永住を積極的に認める「日本版グリーンカード」制度の実現を裏付けているのです。