高度専門職が短期間で永住者になれる「ポイント制」について解説します

2023.01.05

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外国人が日本に永住するための要件は、国際的に比較しても厳しすぎると指摘されることがあります。原則として、引き続き10年以上日本に居住する要件が代表的です。しかも、長期的に日本国外に出て戻った場合には、居住年数のカウントが最初からやりなおしになってしまいます。そのせいで、優秀な外国人が日本に永住するのを諦め、他の国に移住するという人材流出がたびたび起きているのです。

こうした人材流出を少しでも食い止めようと「日本版グリーンカード」と呼ばれる永住許可緩和策が動き出しています。具体的には、各分野で才能のある優秀な外国人に高度専門職ビザを発行し、日本での継続滞在5年で永住許可申請ができるようにしました。さらに、優秀さや日本社会への貢献度を客観的な基準で測定する「ポイント制」を採用し、特に優秀な外国人と認められた場合には、日本での継続滞在期間3年、あるいは1年で永住許可申請ができるようにしました。

このページでは、日本版グリーンカード制度の目玉である「ポイント制」について、具体的に解説します。

ポイント計算表(出入国在留管理庁発表)

https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf

■ポイント制のルール

まず、高度専門職ビザの在留期間は一律で5年となり、5年経ったら永住許可申請が通る可能性があるのが原則です。

その中でも、ポイント制で70点以上のポイントを獲得した場合は「高度外国人材」として、永住許可申請に要する在留期間が3年に短縮されます。

さらに、高度外国人材の中でも特に高度と認められる80点以上のポイントを獲得した場合については、永住許可申請に要する在留期間が大幅に短縮され、日本での継続滞在期間がわずか1年で足りるようになります。

■3種類の高度専門職ビザ

日本では、優秀な外国人を迎え入れるための在留資格である高度専門職ビザを3種類用意しています。

  • 高度専門職1号(イ)…… 【高度学術研究活動】大学教授や研究者など、日本の公的・民間の機関との契約に基づいて行う研究や、研究の指導、教育をする活動を行う外国人に認められる在留資格。

  • 高度専門職1号(ロ)…… 【高度専門・技術活動】化学・生物学・心理学・社会学など(自然科学・人文科学)の研究者など、日本の公的・民間の機関との契約に基づいて、知識や技術を要する業務に従事する活動を行う外国人に認められる在留資格。

  • 高度専門職1号(ハ)…… 【高度経営・管理活動】日本の公的・民間の機関・法人において、事業の経営や管理職に従事する外国人に認められる在留資格。

それぞれ採点基準が微妙に異なりますが、ポイントの累積で70点、あるいは80点以上を獲得することが重要となります。ここからは採点基準の中でも主立った項目について紹介します。


■ポイント制の概略

<学歴>

(イ)(ロ)に関しては、博士号取得者30点、修士号取得者20点

(ハ)に関しては、博士号・修士号取得者、ともに20点

大卒はいずれも10点となります。ただし、高度学術研究分野における大卒者等には、さらに10点加算します。

なお、次のトップクラス大学を卒業している場合、さらに10点加算します。

  • 世界の権威ある大学格付3機関(クアクアレリ・シモンズ社(英国),タイムズ社(英国),上海交通大学(中国))の大学ランキングのうち2つ以上において300位以内の大学
  • 文部科学省が実施するスーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型)において、補助金の交付を受けている大学
  • 外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業において、「パートナー校」として指定を受けている大学

もし、博士号・修士号・専門職学位を、複数の学術分野で獲得している場合は、さらに5点加算します。

<特許>

特許を取得できるほどの画期的な発明を行っている場合

  • は20点、(ロ)は15点です。

<地位>

(ハ)において、代表取締役(CEO)、代表執行役(COO)の場合は10点、その他の取締役・執行役の場合は5点です。

<国家資格>

  • において、職務に関連する日本の国家資格を保有していれば、資格1つあたり5点加算します(上限10点)。自然科学・人文科学の分野が対象ですから、たとえば気象予報士や公認心理師などが該当します。

ここからは、(イ)~(ハ)で共通の扱いです。

職務に関連する外国の資格等を取得している場合、5点を加算します。

<日本語能力>

日本語能力試験N1取得者、または外国の大学において日本語を専攻して卒業した者は15点

日本語能力試験N2取得者は10点です。

<イノベーション>

イノベーションを促進するための支援措置を受けている機関において働いている場合、10点を加算します。

また、成長分野(IT等)において所管省庁が関与する先端プロジェクトに従事している外国人にも10点を加算します。

日本政府のODAを活用し,外務省が実施する「イノベーティブ・アジア(Innovative Asia)」事業に基づく本邦での研修(研修期間1年以上)を修了した学生については、5点加算します。