普通帰化申請に求められる7つの条件とは?条件が緩和・免除されるパターンも解説!

一般的な在留外国人が申請する普通帰化が認められるためには、国籍法に基づく条件をクリアする必要があります。国籍法に基づく条件をクリアしなければ、法務大臣は帰化申請を許可してくれません。
本稿では、実務上確立している日本語能力条件を含め、普通帰化申請に求められる7つの条件について解説します。普通帰化条件が緩和・免除され、簡易帰化制度が適用される4つのケースについても解説するため、参考にしてください。
帰化の種類
帰化の種類は次の3つです。
- 普通帰化
- 簡易帰化
- 大帰化
帰化の種類のうち、簡易帰化と大帰化については、申請者の個々の環境によって条件が緩和される帰化です。
ここからは、そんな帰化の種類についてそれぞれ解説します。参考にしてください。
普通帰化
普通帰化は、外国で生まれて就職のために来日した外国人や、留学生として来日したものの、卒業後に日本で就職した外国人など、一般的な在留外国人が申請する帰化の手続きです。国籍法第5条に規定されています。
ただし、入管特例法に基づいて定められた特別永住者や、日本人と結婚した方(日本人の配偶者等)などは普通帰化に該当しないため注意が必要です。
簡易帰化
簡易帰化は一定の条件を満たす場合に、普通帰化の7つの要件が緩和された形で申請できる帰化です。国籍法の第6条と第7条、第8条に規定されています。
詳しくは後述しますが、簡易帰化は両親が外国に帰化して自分も外国籍になっている方や、日本で生まれた在日韓国人・朝鮮人の方などが簡易帰化の対象者です。
大帰化
大帰化は、法務大臣が日本に特別な功績がある外国人を国会での承認を経て日本国籍を与える特別な帰化手続きです。国籍法第9条に規定されています。
ただし、国籍法が1953年に施行されて以降、大帰化が認められた方はまだいません。
普通帰化申請に求められる7つの条件
普通帰化申請が認められるためには、次の7つの条件をクリアしなければなりません。
- 住所条件
- 能力条件
- 素行条件
- 生計条件
- 重国籍防止条件
- 憲法遵守条件
- 日本語能力
それぞれの留意点についても解説するため、参考にしてください。
住所条件
住所条件は国籍法第5条で、次のように規定されています。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。 |
出典:法務省「国籍法」
この条文でいう「引き続き5年」とは、切れ間なく継続的に日本に住むという意味です。たとえば、仕事や家庭の事情で日本を離れていた場合は、住所条件を満たしているとみなされません。
また、継続して日本に住んでいる場合でも、不法滞在などで正当な在留資格を持たない期間はカウントされません。
能力条件
帰化の申請者自身に行為能力があるかどうかを精査する能力条件は国籍法第5条で、次のように規定されています。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。 |
出典:法務省「国籍法」
この条文に基づくと、帰化申請者は、20歳以上でかつ、本国法によって行為能力を有している必要があります。
ここでいう本国法とは、申請者が国籍を有する国の法律のことです。たとえば、21歳をもって成人とする20歳のエジプト人が日本で帰化申請を検討していると仮定します。日本では、20歳は成人ですが、当該申請者はエジプトの私法上の成人となる21歳まで、日本での帰化申請を待つ必要があります。
一方、行為能力とは法律用語の1つで、自分が行った法律行為の効果を確定的に自分に帰属させる能力のことです。つまり、本国法、日本法の両方で成人を迎えていても、行為能力を持たない場合は、帰化申請が却下される可能性があります。
素行条件
ルールを守って真面目に暮らしているかを精査する素行条件は国籍法第5条で、次のように規定されています。
三 素行が善良であること。 |
出典:法務省「国籍法」
上記条文は、いわゆる永住権申請でも要件充足が求められる素行善良要件のことです。
素行善良要件では、社会一般の人の基準で考えて、真面目であることが審査されます。具体的に審査される項目は、犯罪歴や交通違反、税金・年金の未払いの有無などです。これらの有無だけでなく、騒音や過度な政治活動で地域社会に迷惑をかけていないかも審査されます。
生計条件
お金に困らずに日本で暮らしていけるかどうかを精査する生計条件は国籍法第5条で、次のように規定されています。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。 |
出典:法務省「国籍法」
具体的な年収額が規定されているわけではありませんが、この生計条件を満たすためには、年収300万円程度が必要だとされています。扶養する家族がいる場合は、その分、必要な年収も上がります。
ただし、申請者自身が稼いでいなくとも、同居する配偶者や親、恋人によって安定した生活を送れている場合は、生計条件を充足可能です。逆にいえば、申請者本人が生計条件をクリアしていても、同居している方がクリアできていない場合は不許可になるリスクが高まる点に注意する必要があるでしょう。
重国籍防止条件
帰化が許可された場合に本国の国籍から離脱するかを精査する重国籍条件は国籍法第5条で、次のように規定されています。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。 |
出典:法務省「国籍法」
この条文からわかるように、日本国籍の取得を希望する方は、日本国籍の取得を機に元の国籍を喪失させるか、元の国籍から離脱しなければなりません。
この重国籍条件は、元の国籍を制限なく離脱できる場合には何も問題が生じません。しかし、本国での兵役義務を終えていない場合や、本国で税金を滞納している場合に国籍の離脱を認めない国があります。
そのような場合は、日本での帰化申請の条件を満たしていても、日本への帰化が許可されない可能性があります。本国の法律に基づく制約がある場合は、帰化申請する前に一度、母国の要件を確認するとよいでしょう。
憲法遵守条件
日本の憲法を守れるかを精査する憲法遵守条件は国籍法第5条で、次のように規定されています。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。 |
出典:法務省「国籍法」
この条文からわかるように、クーデターによる暴動や国会襲撃を企てたり、過激な政治的主張を繰り返したりするような危険人物は帰化が許可されません。
日本語能力
国籍法上で明文化されていませんが、帰化の申請者には、小学校3年生程度の日本語能力が求められます。帰化許可後に参政権をはじめとした日本人と同等の権利が得られることから、日本人と同等の日本語運用能力を証明する必要があるためです。
日本語能力条件は基準が高くないものの、甘く見てはいけません。家族全員で帰化申請したものの、1人だけ日本語能力が十分に認められずに不許可になるケースもあるためです。
日本語能力条件は、基本的に法務局の事務官とのやり取りでチェックされます。必要に応じて、その場で日本語の筆記試験を課される場合があります。
日本語の会話ができても、読み書きが苦手な方は、事前に小学校3年生レベルのドリルを購入して勉強しておくとよいでしょう。
普通帰化条件が緩和・免除され、簡易帰化制度が適用される4つのケース
普通帰化条件が緩和・免除され、簡易帰化制度が適用されるケースは次の4つです。
- 居住条件のみが緩和されるケース
- 居住条件と年齢条件が緩和されるケース
- 居住条件・年齢条件・生計条件すべてが緩和されるケース
- 重国籍防止条件が免除されるケース
重国籍防止条件が免除されるケースを除くと、それぞれのパターン内に具体的な条件があります。参考にしてください。
居住条件のみが緩和されるケース
普通帰化では、継続的に5年以上日本に在留する必要がありますが、以下のケースでは居住条件が緩和されます。
日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの 引き続き十年以上日本に居所を有する者 |
出典:法務省「国籍法」
①については、日本国籍を持っていた方の実子で、3年以上継続して日本に住んでいる方が該当します。つまり、外国籍の取得によって日本国籍を喪失した元日本人です。
②については、日本で生まれ継続的に3年以上日本に居住している方、または両親のいずれかが日本で生まれた方が該当します。この条件は、主に特別永住者の方々に適用されます。
③については、引き続き10年以上日本に在留している方に適用されます。永住権申請と違い、就労経験の有無は問われません。
①、②、③のケースでは、能力条件や生計条件は緩和されません。したがって、これらの条件については原則どおり該当している必要があります。
居住条件と年齢条件が緩和されるケース
以下のケースでは、居住条件に加え、20歳以上という年齢条件が緩和されます。
日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するもの 日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するもの |
出典:法務省「国籍法」
①については、日本人と結婚している外国籍の方で、3年以上日本に住んでいる方が該当します。婚姻期間の長さは問われません。
②については、海外で日本人と結婚した外国籍の方で、結婚してから3年が経過し、かつ日本に1年以上住んでいる方が該当します。国際遠距離恋愛を経て結婚に至ったケースが、②に該当する典型例として挙げられます。
①、②については、生計条件が緩和されません。それでも、就労期間の長さを問われないため、配偶者の収入やその他親族の資産で生計が成り立っていることを証明できれば、帰化が許可される可能性があります。
居住条件・年齢条件・生計条件すべてが緩和されるケース
以下のケースでは、居住条件と年齢条件、生計条件のすべてが緩和されます。
日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの |
出典:法務省「国籍法」
①については、父母のいずれか一方が日本人である場合が該当します。たとえば、両親が先に帰化して日本国籍を取得した後、子どもが後を追って日本国籍を取得したいケースが当てはまります。
②については、自身が未成年のときに日本人と養子縁組を結び、その後1年以上日本に住んでいる場合が該当します。養子縁組後に養親が日本人になった場合も含まれます。
③については、日本国籍を失った元日本人で、日本に居住している方が該当します。③に該当するのは、国際結婚で配偶者の国籍を取得したものの、その後離婚し日本に戻ったケース(国籍の回復、再帰化)です。
④については、日本で生まれたが、両親の関係で無国籍となった方で、出生の時から引き続き3年以上日本に住んでいる方が該当します。たとえば、出生地主義を採用するアメリカ人を両親とし、血統主義を採用する日本で生まれた結果、国籍取得の違いにより無国籍になった方は、④の条件が適用されます。
重国籍防止条件が免除されるケース
以下のケースに該当する場合は、重国籍防止条件が例外的に免除されます。
外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるとき |
出典:法務省「国籍法」
意思にかかわらず、国籍を失うことができない場合は、申請者の母国の法律が、外国への帰化によってその国籍を自動的に喪失することを想定しない場合が該当します。
一方、日本国民との親族関係または境遇につき特別の事情があると認めるときは、外国への帰化前に国籍の離脱が相当でない場合であっても、日本国民の子どもや配偶者などとの連結性が強い場合や、難民など人道上の配慮を要する場合などが該当します。
これらの場合に合致すると、重国籍防止条件が免除され、例外的に二重国籍が認められます。
帰化申請する際の流れ
帰化申請する際の流れは次のとおりです。
出典:東京法務局「帰化について」
法務局に書類を提出してから、帰化申請の結果が出るまでに約1年の時間を要するとされています。
また、東京や大阪など都市部では、帰化申請する外国人が増えていることから、審査期間が長期化しています。そのため、帰化申請を短期間で終わらせるためには、提出書類の作成・取り寄せにかかる時間を短縮することが重要です。
まとめ
一見すると普通帰化申請が認められる条件をクリアするのは簡単そうに見えます。しかし、実際は外国人である申請者が独力で条件に沿った書類を集めたり、適切な記載方法で書面を作成したりするのは至難の業です。
そのため、普通帰化を申請するにあたっては、行政書士や弁護士といった専門家に協力を依頼することをおすすめします。必要に応じて専門家の協力を受けることで、普通帰化申請にかかる事務負担を大幅に軽減できるでしょう。
記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁
2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応
講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師
運営HP
広島外国人ビザ相談センター
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広島国際結婚&配偶者ビザ申請代行センター
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広島外国人会社設立&経営管理ビザ申請代行センター
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広島帰化申請代行センター
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蜂須賀 昭仁
2016年9月〜
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専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし年間500件以上の相談に対応
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