特別永住者とは違う? 特別永住許可とはどんな手続きなのか?

日本の制度では、一般的な永住許可とは異なり、「特別永住許可」というものもあります。日本に特有の「特別永住者」と関連があるのですが、いったいどのような手続きなのか、基礎から順を追って解説します。


■特別永住許可という制度がある歴史上の経緯

1910年に、日本は韓国を併合し、朝鮮半島を事実上の日本の領土としました。朝鮮半島に住む人々にも日本国籍や日本風の通名が与えられたのです。朝鮮半島のインフラを整備するために、日本から多額の投資が行われた一方で、多くの(元)韓国・朝鮮人が労働力として駆り出されました。彼らは日本列島へ渡り、やがて定住するようになったのです。日本人から激しい差別を受けることもあったでしょう。

1945年、日本は第二次世界大戦で敗北し、サンフランシスコ講和条約によって日本は朝鮮半島を失い、韓国が再度独立しました。しかし、多くの韓国人が日本で取り残されたのです。日本で生活し続ける決心をした人もいれば、すでに韓国でのコミュニティが失われているため、帰っても居場所がなく、日本で住まざるをえない人も多いようでした。

やがて、韓国に行ったこともなく、日本語しか話せない「2世」「3世」も誕生し、韓国人でありながら、祖国へ帰りようのない人々がますます増えていったのです。日本に帰化した人も多いですが、朝鮮のアイデンティティに誇りを持って国籍や氏名をそのままにした在日韓国・朝鮮人もいます。ただし、韓国の側は、在日韓国・朝鮮人のことに対して無関心であることがほとんどで、「日本に住んでいる外国人」と認識している人すらいます。同胞でありながら、祖国で受け入れる体制がまったく整っていないのが現状なのです。

このような、どっちつかずの状況に法的な決着を付けるため、1991年に新設されたのが「特別永住者」という地位です。簡単な手続きによって、1945年9月2日(日本が降伏文書に調印した法的な終戦日)以前から日本に住んでいる韓国・朝鮮人に、永住者としての在留資格を正式に付与することにしました。

特別永住者には、比較的容易な手続きで永住資格が与えられる他、在留カード(特別永住者証明書)を携帯しなくても処罰の対象にならないなど、他の在日外国人とは異なる取り扱いが認められているのも、こうした歴史的な経緯によるものです。


■特別永住許可とは?

この制度は「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」第4条に基づいています。ここでいう「日本国との平和条約」は、韓国から日本から再独立し、韓国人が祖国の国籍を取り戻したサンフランシスコ講和条約(1951年)であり、「日本の国籍を離脱した者」とは、いわゆる在日韓国人・朝鮮人を指しています。

そして、特別永住許可の対象者は「日本の国籍を離脱した者」の子孫として日本で生まれ、引き続き日本に在留している外国人(在日韓国人・朝鮮人)です。歴史的事情により、日本で外国人として生まれた子孫に対して、特別永住の手続きを提供しています。

この他、いろいろな事情で日本に居ながらにして外国籍を喪失・離脱した人も、日本での特別永住許可の対象になりますが、この手続きのメインターゲットは在日韓国人・朝鮮人の子孫といえるでしょう。


■特別永住許可の具体的な手続き

特別永住者の子として生まれた人は、その出生の日から60日以内に、居住地の市区町村の役所・役場(戸籍住民課住民記録係など、しかるべき部署)で、特別永住許可の申請を行います。

国境を超えて日本に入ってきた外国人ではないので、出入国在留管理局の管轄ではありません。ご注意ください。ただし、特別永住者の子が海外で生まれてその後に入国した場合や、特別在留許可を希望しない場合は、出入国在留管理局で別の在留資格を取得する必要があります。出生後61日を経過し、特別永住許可等の在留資格を取得していない場合、住民登録が抹消されてしまい、国民健康保険や児童手当などの各種行政サービスが受けられなくなるおそれがありますので、その点もご注意ください。

申請の時に提出するのは、「特別永住許可申請書」「日本で出生したことを証する書類(出生届記載事項証明書または出生届受理証明書)」「父または母の住民票の写しか特別永住者証明書」です。

日本で出生したことを証する書類として出生届受理証明書を選択した場合は、子の氏名・生年月日・出生地・性別・父母の氏名が記載されているかどうか、念のため確認しましょう。また、住民票の写しを提出する場合も、氏名、生年月日、性別、住所、外国人住民となった年月日などの基礎証明事項に加えて、住民基本台帳法第30条の45に規定する区分(「特別永住者」と書かれていることを確認しましょう)、世帯主の氏名及び世帯主との続柄の記載があるものでなければなりません。マイナンバー(個人番号)の印字は不要です。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

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