新型コロナウイルスと永住者

2019年末に中国・武漢で発覚した未知のコロナウイルスによる感染症は、2020年以降、世界的な猛威を振るい、数億人の感染者ならびに多数の犠牲者を出してしまいました。世界中の国々が新型コロナウイルス感染症のパンデミックを食い止める水際対策として「原則として出入国禁止」という方針を出し、2022年頃からようやく猛威は収まりつつあります。

この新型コロナウイルス感染症の大流行の影響を受けたのが、日本の永住許可を得た外国人の一部です。出国していた間に新型コロナウイルス感染症の大流行に巻き込まれて、空港がほぼ閉鎖状態になったため、事実上、日本に再入国できなくなったのです。

■永住許可が取り消されるおそれ

日本に長い間、再入国できないと、永住許可が取り消されるおそれがあるということで、海外に出国していた永住者は戦々恐々としていました。

永住権とは文字どおり、無期限で日本に居住できる権利なのであって、日本よりも海外に出る頻度が多い、あるいは期間が長いのであれば、永住許可を出した甲斐がありません。そこで、海外に長期間住んでいて、日本になかなか戻ってこないと、永住許可が取り消される場合があります。

外国人は原則として、日本からの出国をきっかけに在留資格が失効します。本来であれば、日本に戻るたびに在留資格を取り直さなければなりません。しかも、ビザが出るまでには数か月ほどかかってしまいます。その手間や時間を省いたのが「再入国許可」と呼ばれる手続きです。

再入国許可とは、外国人が日本を出る時点で、将来再び日本に入ることをあらかじめ許可してもらうことです。外国人が一時的に出国するときには、あらかじめ再入国許可を得ておくと、在留資格を取得しなおす必要がなくなります(ただし、一定期間内に日本へ戻ってこなければ、再入国許可は無効となります)。

ただ、月に何回も日本を出たり入ったりするなど、出国する頻度が高い外国人は、出国のたびに再入国許可を得なければなりません。それはそれで手間がかかって大変です。そこで、その手間をさらに省略するのが「みなし再入国許可」という仕組みです。

みなし再入国許可を一度得ていれば、外国人が出国しても1年以内に日本へ戻ってくるのであれば、手続き不要で再入国が認められます(もっとも、出国中にビザの期限が過ぎれば、あるいは、日本に戻るまでに1年以上の期間が空けば、みなし再入国許可も無効です)。

ただ、再入国許可・みなし再入国許可の期限内に永住者などの外国人が日本に戻れない理由が、新型コロナウイルス感染症の影響によるものなら、特別に救済すべきではないかという議論が世界中で巻き起こりました。犠牲者が多数出ている新型コロナのパンデミックは、もはや有事であり緊急時だからです。

日本でも「永住許可に関するガイドライン」を策定し、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るって、出入国が原則禁止になっていた期間は、たとえ海外にいたとしても、継続して日本国内に在留していたものとみなしました。期限切れで取り消された永住許可を、再入国後にすぐ取り戻せるよう配慮したのです。

より具体的には、再入国許可・みなし再入国許可の有効期間の満了日が、2020年1月1日から2023年4月30日までであり、かつ、2023年4月30日までに申請した査証(ビザ)の有効期間内に、日本へ再入国した方が救済の対象です(ただし、2022年11月時点の情報です。新型コロナウイルスの流行が長引けば、延長される可能性があります)。

上陸特別許可による再入国後は、手続き上、改めて永住許可申請を出さなければなりませんが、通常の申請書類に加え、次の「申立書」に署名して提出すれば、すぐに永住資格を取り戻せます。

「申立書 法務大臣宛  私は,本件永住許可申請に関し,下記の事実を申し立てます」

 

「1 私は,再入国許可(みなし再入国許可も含む。以下同じ。)により出国したところ,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により,再入国許可期限までに日本へ入国できませんでした」

「2 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による本邦不在期間中,日本国以外の法令に違反して,懲役,禁錮又は罰金若しくはこれらに相当する刑に処せられたことはありません」

上記について相違ありません。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックに巻き込まれたのは、海外に出た永住者の責任ではありませんし、救済措置は受けるべきです。ただ、ひょっとすると出入国在留管理局から追加の証拠などの提出を求められるかもしれません。その場合も、素直に応じてください。こうした救済措置を悪用する輩がいないとも限らないので、職員はそれなりに警戒しているのです。

そして、日本に再入国する際は、厚生労働省等で定められた検疫措置を必ず受けましょう。

2022年11月時点では、全ての帰国者・入国者に対して、ワクチンの接種証明書(3回)、または出国前72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書、いずれかの提出が求められることになっています。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

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