韓国人(特別永住者以外)が、日本に帰化するときの手続きと注意点

日本に帰化する外国人のうち、国籍別で最も多いのが韓国・朝鮮の出身者です。2021年に日本への帰化が許可された8167人のうち、じつに3564人が韓国・朝鮮籍の外国人で占めていました。割合にして全体の43.6%です。

その中には、歴史的なやむをえない経緯によって、日本に在留している韓国・朝鮮人(特別永住者)が帰化した例も多いですが、それ以外の韓国/朝鮮出身者が来日して帰化した例も決して少なくありません。

このページでは、特別永住者以外の韓国・朝鮮人が帰化する場合に、祖国から取り寄せなければならない個人情報の書類について解説します。

※特別永住者が帰化する場合については、別のページで解説しています。

■韓国・朝鮮から取り寄せる証拠資料

帰化の申請者の個人情報を公証する証拠書類については、すべて在日韓国大使館・領事館に依頼して取得することができます。取り寄せが必要な書類は、次の通りです。

<除籍謄本・登録事項別証明書>

韓国にも日本と同じような戸籍制度(戸主制)はあったのですが、2008年に廃止され、「家族関係登録制度」に統一されました。つまり、家の単位で情報が国家によって取りまとめられていたところ、現代では個人単位での情報登録になっているのです。

韓国の戸籍は廃止されましたが、2007年以前の情報は「除籍謄本」として残されているので、出生情報などの取得には除籍謄本が必要となるのです。それと併せて、必要に応じて2008年以降の身分関係を記録している「家族関係登録事項別証明書」を取り寄せましょう。

ただし、どの時点まで遡って、こうした個人情報の公証記録を取得しなければならないかは、各地方の法務局ごとに判断が異なるようです。申請者自身の出生まで把握できればいいとする法務局もあれば、父母の出生時点まで遡って除籍謄本を取得させるところもあります。

いずれにしても、2008年を境にして、登録事項別証明書を取得するか、除籍謄本を取得するかの境目になります。多くの場合は両方を取り寄せる必要があるでしょう。

なお、除籍謄本は一般にデジタルデータ化されているのですが、古い戸籍の記録は職員の手書きのままで残っている場合があります。もし、家族関係が複雑である場合には、手書きの除籍謄本の取り寄せも法務局から求められる場合がありますので、あらかじめ留意して置いてください。

<翻訳文>

韓国当局から取り寄せた除籍謄本や登録事項別証明書は、当然のことながら韓国語(ハングル)で書かれています。これは日本語に全て翻訳した文も別途で添付しなければ、日本の法務局は証拠書類として受理してくれません。

翻訳文の作成は翻訳会社に依頼するのが一般的ですが、署名捺印をすれば、自分自身で翻訳することも可能です。そうすれば、翻訳家に依頼する報酬を節約できます。ただし、韓国や日本の旧地名を理解していなければ、過去の住所地などを自分自身で正確に翻訳することは大変難しいのも事実です。

一般の方々は、韓国の戸籍制度や、改正された家族関係登録制度に関して、ほとんど知識を持っていないのではないでしょうか。たとえば、韓国の登録基準地が判然としていない、あるいは自分の祖先に該当する戸主を見つけることができず、在日韓国大使館・領事館に問い合わせしてもわからない場合もありえます。本来は韓国の登録基準地に所在する役所に韓国語で問い合わせをしなければならないのですが、この段階でストップして結局、帰化自体を断念してしまう韓国人の方が後を絶ちません。日常生活ではほぼ必要のない知識なので、仕方がないところではあります。

こうした基本情報を調べるだけでも労力や時間を要しますので、翻訳と書類の取り寄せも含めて、帰化に精通した行政書士にすべて依頼したほうが早いといえるでしょう。特に韓国の公証書類は、全体像を把握するだけでも複雑で難しいですし、取り寄せ作業そのものも手間がかかりますので、プロの手を借りるのが賢い選択です。

<記載事項証明書>

韓国籍の外国人において、日本で起きた身分関係は、日本の市区町村役所(役場)で管理されています。

たとえば、出生の事実は出生届の記載事項証明書、婚姻の事実は婚姻届の記載事項証明書に記録されています。その他、(親などの)死亡・離婚・養子縁組・親権者変更・認知などの事実も、役所が管理しており、記載事項証明書を発行してもらうことで詳細を知ることができます。

<戸籍謄本>

記載事項証明書でなく、戸籍謄本(戸籍の写し)を取得する場合もあります。

たとえば、帰化申請者の配偶者(元配偶者、内縁関係を含む)や子(養子)、婚約者、父母(養父母)が日本国民である場合、戸籍を確認したほうが身分関係を把握しやすいため、戸籍謄本が証拠書類となります。

また、帰化申請者が日本国民であった人の子である場合、帰化申請者が日本の国籍を失った人である場合、帰化申請者の父母及び兄弟姉妹の中で既に日本に帰化をした人がいる場合も同様です。