経営管理ビザの更新とは?要件や必要書類を解説!

経営管理ビザを一度取得した外国人が日本国内で事業を継続していくためには、ビザの更新が必要です。

しかし、経営管理ビザの更新は、ほかのビザと比べて難しいとされています。更新時にも、初回申請と同等レベルの要件が求められるためです。

本記事では、そんな経営管理ビザの更新に求められる要件について解説します。更新に必要となる書類や長期の在留期間が認められるためのコツについても解説するため、参考にしてください。

外国人の経営管理ビザ更新とは?

経営管理ビザの更新は、経理管理ビザを持つ外国人が、日本での経営活動を継続するためにする申請です。

更新許可を希望する外国人は、カテゴリーに応じて必要な書類を持参し、在留期間が満了する日より前に住居地を管轄する地方出入国在留管理局(入管)に更新を申請しなければなりません。

ここからは、ほかの在留資格と比較して特に難易度が高いとされる経営管理ビザの更新について解説します。

経営管理ビザ初回申請の在留期間は原則1年

経営管理ビザの在留期間は短い順に「3カ月または4カ月」「6カ月」「1年」「3年」「5年」の5種類に分けられます。

在留期間は複数種類があるものの、経営管理ビザを初回申請した場合の在留期間は1年が一般的です。初回申請で在留期間が1年とされることが多いのは、これから事業を始める申請者に事業の継続性が担保されているか不透明な状況で、長期の在留期間を付与するのは難しいためだとされています。

それでも、さまざまな経営的な危機や問題を乗り越え、会社を安定的に存続させれば、更新申請で3年以上の在留期間を取得することが可能です。3年以上の在留期間を取得すれば、在留期間や活動内容に制限のない永住権の取得も見えてくるでしょう。

なお、ほかの就労系、身分系の在留資格では、初回申請で3年や5年といった長期の在留期間が付与される場合が少なくありません。

在留期間が4カ月のスタートアップビザもある

これから日本で会社を設立したいと考えている外国人起業家向けには、設立準備のために最長4カ月間、日本に滞在できるスタートアップビザがあります。

このビザを取得すると、外国人起業家は日本の銀行口座への資本金入金や事業所賃貸借契約といったビザ取得前での資金確保リスクを負わずに、起業準備が可能です。

スタートアップビザを取得した外国人起業家は4カ月の間に法人の設立や事務所の契約、資本金の払い込みを済ませ、1年間の経営管理ビザへの変更を目指します。

経営管理ビザの更新に求められる要件

経営管理ビザの更新に求められる要件は次の3つです。

  • 申請者の適正
  • 事業者としての義務の履行
  • 事業の継続性

これらの要件を押さえることで、更新許可を得やすくなります。ぜひ参考にしてください。

申請者の適正

申請者は経営管理ビザの更新許可を取得するために、住所の登録や商業登記上の住所変更など入管法上の届出義務を遵守したり、納税義務を正しく履行したりする必要があります。

このうち、申請者が最も気をつけるべきなのは、納税義務の履行です。納税義務を履行できていないと、経営管理ビザの更新審査で非常に不利になるためです。

経営管理ビザの更新審査でチェックされる税金は、企業として支払う法人税や法人住民税などだけでなく、健康保険料や年金保険料など、申請者個人の所得に対する税金も含まれます。そのため、申請者は企業の本店だけでなく、自宅に届く納付書も都度チェックし、納付漏れがないよう注意しなければなりません。

事業者としての義務の履行

申請者が経営管理ビザの更新許可を取得するために履行しなければならない事業者としての義務は次の3つです。

  • 事業所の確保
  • 租税関係法令の遵守
  • 労働関係法令・社会保険関係法令の遵守

事業所の確保

申請者は更新申請までに独立した事務所を確保していなければなりません。独立した事務所とは、総務省の日本標準産業分類一般原則第2項にも規定される、次の2つの要件を満たす事務所です。

経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること。 財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われていること。

出典:出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について

これらの要件に鑑みると、月単位の短期間賃貸スペースや、容易に処分可能な屋台は、独立した事務所として認められません。

また事務所が賃貸物件である場合、申請者は賃貸借契約書を提示しながら使用目的が事業用、店舗、事務所等事業目的であることを明らかにする必要があります。住居物件の一部を事業目的で運営している場合は、住居目的以外での使用を貸主が認めていることも示さなければなりません。

租税関係法令の遵守

申請者は、所得税や法人税などの国税、住民税といった地方税をそれぞれ適切に納付しなければなりません。

刑罰を受けていなくても高額の未納や長期間の未納などにより、納税義務を履行していない場合は、審査でマイナス評価を受ける可能性があります。また、消費税の不正受還付などにより、重加算税の賦課決定処分がされた申請者は、行為の悪質性に鑑み、特にマイナスに評価されます。

労働関係法令・社会保険関係法令の遵守

申請者は、雇用する従業員の労働条件が労働関係法令に適合するよう、労働環境を整備しなければなりません。

また労働保険の適用事業所である場合、申請者は労働保険の加入手続きを適正に行い、保険料を適切に納付する必要があります。健康保険・厚生年金保険の適用事業所である場合も、雇用する従業員の健康保険・厚生年金保険の資格取得手続きを行い、保険料を適切に納付することが重要です。

事業の継続性

入管は、設立後の初年度決算の結果をもって、経営管理ビザの更新申請の許可、不許可を判断するわけではありません。

更新申請の許可、不許可を判断するうえでは、決算書の内容を踏まえ、直近の決算期の売上高や債務超過の状況などを判断基準として事業の継続性を総合的に審査する必要があるためです。

そこで、ここからは、入管がケース別に申請者にくだす「事業の継続性」の基本評価について解説します。

直近期または直近期前期で売上総利益がある場合

  1. 直近期末で欠損金がない場合

直近期で当期純利益があり同期末で剰余金がある場合には、事業の継続性に問題はありません。また、直近期で当期純損失となったとしても、売上総利益があり、欠損金が生じなければ、事業の継続性が認められます。

  1. 直近期末で欠損金がある場合
  2. 直近期末で債務超過になっていない場合

今後1年間の事業計画書と予想収益を示した資料に基づき、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性があれば、原則として事業の継続性があると認められます。

  1. 直近期末で債務超過であるが、直近期前期末で債務超過となっていない場合

債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に債務超過の見通しがあることを前提として事業の継続性が認められます。

  1. 直近期末と直近期前期末ともに債務超過である場合

債務超過後1年以上経過しても債務超過が解消できない場合は、事業の存続にかかわる厳しい財務状況が続いていることから、原則として事業の継続性があると認められません。

直近期または直近期前期で売上総利益がない場合

この場合は、原則として事業の継続性があると認められません。2期連続で売上総利益がないことは、企業が主たる業務を継続的に行える能力を有していないと判断されるためです。

入管は基本的に主たる業務で売上高が売上原価を下回る状態(売上総利益がない)について、「通常の企業活動を行っているものと認められない」と厳しい評価を下します。

経営管理ビザの更新に必要となる書類

ここからは、経営管理ビザの更新に必要となる書類について、共通して必要となる書類とケース別で必要となる書類に分けて解説します。

また経営管理ビザの更新理由書の作成方法についても解説するため、参考にしてください。

共通して必要な書類

共通して必要な書類は次のとおりです。

在留期間更新許可申請書 1通 写真 1葉(指定の規格を満たした写真を用意し、申請書に添付して提出) パスポート・在留カード 提示 上記カテゴリーのいずれかに該当することを証明する文書 適宜 カテゴリー1 四季報の写しまたは日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し) 主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し) 高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄またはロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書(たとえば、補助金交付決定通知書の写し) 上記「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(たとえば、認定証などの写し) カテゴリー2 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(写し) 在留申請オンラインシステムにかかる利用申出の承認を受けていることを証明する文書(利用申出に係る承認のお知らせメールなど) カテゴリー3 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表(写し)

出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」

共通して必要な書類以外に求められる書類

カテゴリー3とカテゴリー4に該当する企業は、共通して必要な書類に加え、次の書類が必要です。

直近の年度の決算文書の写し 1通 直近の在留期間における事業の経営又は管理に関する活動内容を具体的に説明する文書[任意の様式](前回の在留申請時から変更がある場合はその理由の説明を含む)*令和7年7月10日追加 住民税の課税(または非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)各1通

出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」

カテゴリー4に該当する企業は上記に加え、外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料1通が求められます。

ウェブページに記載されていませんが、事務所移転した場合は、次の書類が求められます。

  • 登記事項証明書(新しい住所が登記されたもの)
  • 新事務所の賃貸借契約書
  • 新事務所の写真(建物外観、室内)
  • 新事務所の平面図(レンタルオフィスなどの場合)

また、役員報酬を上げた場合と従業員を雇用した場合は、次の書類を準備すると良いでしょう。

【役員報酬を上げた場合】

  • 取締役の報酬を決定する株主総会議事録

【従業員を雇用した場合】

  • 従業員との雇用契約書
  • 源泉納付書(全従業員分。税務署受付印があるもの)
  • 社会保険に加入していることを証明できるもの(社会保険料通知書など)

長期(3年、5年)の在留期間が認められるためのコツ

長期(3年、5年)の在留期間が認められるためのコツは次の3つです。

  • 事業の安定性を証明する
  • 従業員を雇用する
  • カテゴリー3以上の事業を展開する
  • 更新理由書を作成する

これらのポイントを押さえることで、長期の在留期間が認められやすくなります。ぜひ参考にしてください。

事業の安定性を証明する

長期の在留期間が認められるためには、事業に安定性があることを証明しましょう。

事業の安定性の有無は、直近2年間の決算状況で判断されます。具体的に直近2年間で一定以上の利益を継続し、債務超過がなければ、事業に安定性があるとみなされ、長期の経営管理ビザが認められやすくなります。

ただし、黒字決算を作り出すために、役員報酬を減らすといった方法は得策ではありません。役員報酬を極端に低く設定していると、過度な課税逃れをしていると判断されかねないためです。課税逃れを目的とした低額の役員報酬は、「事業の継続性に自信がない」と判断される可能性があるため、避けた方がよいでしょう。

従業員を雇用する

長期の在留期間が認められるためには、従業員を雇用しましょう。従業員を雇用していれば、従業員を雇うだけの経営体力があるとみなされやすくなるためです。

従業員の雇用は、雇用保険適用事業所番号で証明可能です。ただし、従業員の雇用は、長期の在留期間を認められるうえでマストな要素ではありません。

従業員を雇用していなくとも、事業の安定性を証明できれば、長期の在留期間を認められる可能性が高まります。たとえば、1人会社でも売上が1億円以上ある場合は、安定経営を実現できるているとみなされやすいでしょう。1人会社の申請者が売上高を証明する際は、特許・商標の登録証や大口取引先との契約書などを提示するのが有効です。

カテゴリー3以上の事業を展開する

長期の在留期間が認められるためには、企業の規模がカテゴリー3以上の事業を展開すると良いでしょう。

経営管理ビザにおける企業のカテゴリーは優良な順から、「カテゴリー1」から「カテゴリー4」までの4つに分類されます。各カテゴリーの定義は次のとおりです。


カテゴリー1カテゴリー2カテゴリー3カテゴリー4
区分 (所属機関)日本の証券取引所に上場している企業 保険業を営む相互会社 日本又は外国の国・地方公共団体 独立行政法人 特殊法人・認可法人 日本の国・地方公共団体認可の公益法人 法人税法別表第1に掲げる公共法人 高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業) 一定の条件を満たす企業等
前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人 カテゴリー3に該当することを立証する資料を提出した上で、在留申請オンラインシステムの利用申出が承認された機関前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)左のいずれにも該当しない団体・個人

出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」

会社を1年以上経営していれば、カテゴリー3に分類されます。

つまり、カテゴリー3は最低ラインであるため、長期の在留期間付与を目指す申請者はカテゴリー2を目指すべきでしょう。

更新理由書を作成する

長期の在留期間を取得するためには、更新理由書を作成するとよいでしょう。

更新理由書は、ビザ取得の必要性について説明する任意の書類です。更新に必須の書類ではありませんが、提出すると長期の在留期間が認められやすくなります。

更新理由書に記載すべき内容は次のとおりです。

  • 経営者の仕事内容:具体的な業務内容や日常の業務など
  • 中長期の事業計画:今後3年をめどとした事業計画の提示
  • 流動比率(流動資産/流動負債):200%以上が目安
  • 取引先の情報:取引先名・取引年数・年間取引額・取引内容・取引先の概要

経営管理ビザの更新でよくある質問

ここからは、経営管理ビザの更新でよくある質問とその回答について説明します。

Q.債務超過で経営管理ビザは更新できる?

債務超過とは、企業が抱えている負債総額が、資産総額を超えている財務状況です。

上述のとおり、企業が2期連続で債務超過になると、経営管理ビザの更新許可を得ることは認められません。ただし、債務超過の決算期が1期であれば、1年の経営管理ビザ更新を認められる可能性があります。

それでも、その場合は、中小企業診断士や公認会計士、税理士の国家資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に債務超過の状態でなくなることの見通しを含む)について、評価した書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る)の提出が必要です。

Q.赤字で経営管理ビザは更新できる?

直前の決算が赤字決算になったとしても1事業年度に留まる場合は、経営管理ビザの更新が認められる可能性があります。

ただし、その場合は入管が公表している必要書類に加え、追加書類を用意する必要があります。

具体的に用意すべき追加書類は、赤字決算になった理由や、来期決算でどう会社を運営し、決算を黒字にするかの計画を記載した事業計画書です。事業計画書には、根拠となる資料も添付しましょう。

また、債務超過の場合と同様に、中小企業診断士や公認会計士、税理士など企業評価を専門とする有資格者が評価した書面の提出も有効です。この評価書で会社の将来的な見通しが明るいことを証明できれば、更新申請が許可になる可能性が高くなります。

なお、2期連続の赤字決算でも、剰余金が減少しただけで、欠損金が生じておらず、事業継続できる利益剰余金や資本金があれば、更新できる可能性があります。

まとめ

経営管理ビザの更新申請では、初回申請と相違ない水準で厳格な審査が行われます。それでも、不可能なハードルが課せられるわけではありません。申請者の適正や事業の安定性などを証明すれば、問題なく更新を認められます。

とはいえ、更新申請に際しては、専門性やある種のコツが求められるのも事実です。これを踏まえ、経営管理ビザの更新申請で不安がある方は、行政書士をはじめとした在留資格の専門家に相談することをおすすめします。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
https://hiroshima-visa.link/
広島国際結婚&配偶者ビザ申請代行センター
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