4カ月の経営管理ビザとは?メリットや申請の流れ、注意点を解説!

4カ月の経営管理ビザは、日本の銀行口座への資本金入金や事務所の賃貸借契約が不要など、低リスクで起業準備が進められる短期滞在ビザです。理論上は海外在住の外国人が、日本の協力者なしに日本で会社を設立できるというメリットがあります。

本記事では、そんな4カ月の経営管理ビザのメリットや申請するまでの流れについて解説します。申請時の必要書類や注意点についても開設するため、参考にしてください。

4カ月の経営管理ビザとは?

4カ月の経営管理ビザとは、日本での会社設立を検討している外国人が、起業前の準備期間として利用できる在留資格です。2015年4月の改正出入国管理及び難民認定法の施行を機に設立されました。

通常の経営管理ビザとの違い

通常の経営管理ビザは、1年の在留期間で付与されます。

しかし、1年の経営管理ビザを取得するためには、ビザ申請前に会社設立や資本金入金、事務所の確保などを済ませ、申請時にそれらの証明書類を提出する必要があります。そのため、通常の経営管理ビザでは、諸々の手続きを進めてくれる日本国内での協力者が必要です。

一方、4カ月の経営管理ビザは、会社設立を念頭に制度設計されていることから、起業家自らが来日して起業準備することが可能です。具体的には、住民登録をした後、銀行口座の開設や携帯電話の登録、賃貸オフィス、会社設立登記などの準備を進められます。

なお、90日間の短期滞在ビザは希望の有無にかかわらず住民登録できないため、起業準備を進められません。

4カ月の経営管理ビザが新設された理由

4カ月の経営管理ビザが新設されたのは、2012年7月に在留カード制度が導入されたのを機に、短期滞在ビザで、印鑑登録や銀行口座開設ができなかったためです。

その後、日本での会社設立を希望する外国人起業家は、日本人の協力者を雇ったり、ほかの在留資格から変更したりしなければ、経営管理ビザを取得できなくなりました。

こうした経営管理ビザの取得に伴う課題を解決するため、4カ月の経営管理ビザが創設されました。

4カ月の経営管理ビザのメリット

4カ月の経営管理ビザには、次の2つのメリットがあります。

  • 日本国外にいながらビザ申請できる
  • 空白期間に支払う事務所家賃や会社設立費用を無駄にするリスクがない

4カ月の経営管理ビザのメリットを把握することで、取得に向けて前向きになれます。ぜひ参考にしてください。

日本国外にいながらビザ申請できる

4カ月の経営管理ビザでは、申請者は日本国外にいながらビザ申請できます。

たとえば、北京市在住の王さんが4カ月の経営管理ビザを広島出入国在留管理局管内で取得することにします。

王さんは独力で必要書類を集められれば、在留資格認定証明書の交付申請を広島出入国在留管理局にオンライン申請することが可能です。在留資格認定証明書の交付を受けた後は、査証(ビザ)申請を北京市の日本大使館ですることができます。

このように、4カ月の経営管理ビザでは、申請者は理論上、日本国外にいながらビザ申請することができます。

空白期間に支払う事務所家賃や会社設立費用を無駄にするリスクがない

4カ月の経営管理ビザでは、事業が始まるまでの空白期間に支払う事務所家賃や会社設立費用を無駄にするリスクがありません。1年以上の在留資格の許可が出てから会社の設立登記を申請するためです。

株式会社の設立には、登録免許税や定款認証費用などで最低でも20万円以上がかかります。当然、設立登記に先立ち、事務所の家賃をはじめ、運営費用も支払わなければなりません。

4カ月の経営管理ビザでも運営費用を支払いますが、発生する空家賃(契約開始日から実際に入居する日までの間に発生する家賃)はせいぜい3〜4カ月分です。対して、1年以上の経営管理ビザは、不許可になって再申請した場合、12カ月分の空家賃が発生するおそれがあります。

このように、通常の経営管理ビザでも、4カ月の経営管理ビザでも、会社の設立費用や運営費用を支払います。しかし、4カ月の経営管理ビザでは、1年以上の在留資格の許可が出てから会社を設立する点で、費用のロスが少ないといえます。

4カ月の経営管理ビザを申請するまでの流れ

4カ月の経営管理ビザは、次の流れに沿って申請手続きを進めていきます。

  1. 定款案を作成する
  2. 事務所の候補地を決める
  3. 事業計画書を作成する
  4. 地方出入国在留管理局で在留資格認定証明書を交付申請する
  5. ビザ許可後、現地の日本大使館でビザ申請する

詳しく解説するため、参考にしてください。

定款案を作成する

まずは、会社の定款案を作成します。

定款は、会社の基本的なルールを定めた書類です。目的や商号、本店の所在地、発起人の氏名、住所、資本金などを記載します。

定款を作成した後は、会社を設立予定の地域を管轄する都道府県の公証役場で、公証人による定款認証を受けなければなりません。定款の認証手続きは、印鑑証明書に代わってサインを公証するサイン証明書(宣誓供述書)を用意することで、進められます。

公証役場に直接訪問できない場合は、行政書士や司法書士などの専門家に定款作成や認証手続きを頼むとよいでしょう。

事務所の候補地を決める

事務所は基本的に契約期間が1年の物件が多いため、4カ月の経営管理ビザを申請する段階で、事務所を確保するのは容易ではありません。

ただ、実際に事務所の物件オーナーと賃貸借契約を結ばなくとも、どのエリアでどの物件と契約を結ぶ予定なのか候補を書面にまとめておく必要があります。この候補物件の情報をまとめた書面が、4カ月の経営管理ビザを申請する際に地方出入国在留管理局に提出する資料になります。

事業計画書を作成する

4カ月の経営管理ビザを申請する際も、事業計画書を作成します。

事業計画書は、創業の動機や事業の戦略、実行計画、数値計画などを詳細に説明した文書です。事業計画書の内容をもって、事業の安定性や継続性、申請者としての適法性を地方出入国在留管理局に証明することになります。

このように、事業計画書は、4カ月の経営管理ビザを取得するうえで最重要書類の一つです。専門家の協力を仰ぎながら、精度の高いものを作成しましょう。

地方出入国在留管理局で在留資格認定証明書を交付申請する

必要書類がそろったら、地方出入国在留管理局で在留資格認定証明書を交付申請しましょう。

交付申請する在留資格認定証明書は、日本に入国しようとする外国人が、日本での活動内容が申請する在留資格に該当するかどうか上陸のための条件に適合していることを証明するための書類です。在外公館(日本大使館・総領事館など)における査証(ビザ)申請や上陸申請の際に提出・提示します。

在留資格認定証明書の標準処理期間は、1カ月〜3カ月です。ただし、近年は申請件数の増加や地方出入国在留管理局での人手不足により、標準処理期間が延びているため、計画よりも早めに申請するとよいでしょう。

ビザ許可後、居住地の日本大使館で手続きを済ませる

在留資格認定証明書の交付を受けた後は、居住地を管轄する日本大使館で査証(ビザ)申請を行います。

在留資格認定証書をはじめ、提出書類や申請内容に問題がなければ、申請受理の翌日から5業務日でビザが発行されます。ただし、申請数が多いと、それ以上の日数がかかる場合があるため、ご注意ください。

なお、日本への入国は原則として、在留資格認定証明書の交付日から3カ月以内に行わなければなりません。

4カ月の経営管理ビザを申請する際に必要な書類

4カ月の経営管理ビザを申請する際に必要な書類は、次のとおりです。

在留資格認定証明書交付申請
写真(申請書貼付け用4㎝×3㎝)
返信用封筒
履歴書
事業計画書
定款
オフィスの候補書類
残高証明書

出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」

来日後にすること

来日後にすることは、次の2つです。

  • 来日後4カ月以内に会社を設立する
  • 来日後4カ月以内に通常の経営管理ビザを更新申請する

会社設立の手順は住民登録や個人の銀行口座開設など、詳細に手続きが細分化されていますが、ぜひ参考にしてください。

来日後4カ月以内に会社を設立する

会社設立の手続きは、次のような手順で進めていきます。

  1. 住所登録、印鑑登録
  2. 銀行口座開設
  3. 開設した銀行口座に資本金を入金
  4. 事務所の賃貸借契約
  5. 会社設立登記
  6. 税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所などへの各種届出
  7. 必要な場合は許認可取得
  8. 法人口座の開設、社会保険の加入

来日後4カ月以内に通常の経営管理ビザを更新申請する

会社設立の手続きをひととおり済ませたら、来日後4カ月以内に通常の経営管理ビザへの更新申請をする必要があります。

更新申請の審査で、事業の安定性を証明できれば、日本での1年の経営管理ビザが取得可能です。1年の経営管理ビザを取得後は、事業を本格的にスタートさせられます。

4カ月の経営管理ビザを申請する際の注意点

4カ月の経営管理ビザを申請する際の注意点は、次の3つです。

  • 事業計画書を入念に作り込む必要がある
  • 銀行で口座開設を拒否されやすい
  • 賃貸借契約を締結してもらえない可能性が高い

これらの注意点を押さえておけば、4カ月の経営管理ビザ申請が拒否されたり、ビザ取得後にトラブルに巻き込まれたりするリスクが小さくなります。ぜひ参考にしてください。

事業計画書を入念に作り込む必要がある

4カ月の経営管理ビザを取得するためには、事業計画書を入念に作り込む必要があります。事業計画書を通じて、次の要件を満たせなければ、ビザ取得が困難になるためです。

  • 日本国内で株式会社や持分会社などを設立する意思があること
  • 株式会社や持分会社などの設立がほぼ確実に見込まれること

つまり、4カ月の経営管理ビザを取得するためには、審査官に日本で会社を設立し、事業をスタートさせる意思を明確に伝える必要があります。

もちろん、単に事業をスタートさせる意思を伝えるだけでは、4カ月の経営管理ビザを取得できません。中長期を見据えた事業計画書を提出し、事業の安定性や持続性をアピールすることも、経営管理ビザを取得できるかどうかの鍵となります。

銀行で口座開設を拒否されやすい

4カ月の経営管理ビザでは、在留期間が短いうえに、その後のビザ更新や長期滞在が保証されていないことから、金融機関に口座開設を拒否されやすい傾向にあります。

実際、多くの銀行は、長期滞在を前提とした、次のような口座の開設制限を設けています。

  • 入国時に決定された在留期間が3カ月あるいは6カ月以下の方
  • 在留期間の残存期間が6カ月未満の方

このような制限により、4カ月の経営管理ビザで日本に在留する外国人は、ほとんどの銀行で口座を開設できません

こうした事情を踏まえ、申請者は非居住者向けの口座開設サービスを提供している金融機関を探すことが重要です。たとえば、東京スター銀行では、台湾国籍の非居住者を対象にした口座開設サービスを提供しています。同行のサービスはあくまでも一例ですが、とにかく外国人起業者向けの金融サービスを提供している金融機関を探すとよいでしょう。

賃貸借契約を締結してもらえない可能性が高い

前述のとおり、4カ月の経営管理ビザでは、賃貸借契約を締結してもらえない可能性が高いとされます。事業がスタートしていない4カ月の経営管理ビザでは、物件オーナーに対して事業の安定性や信頼性を証明するのが難しいためです。

それでも、問題の解消策がないわけではありません。すでに母国で事業の結果を残している方は、貸借対照表や損益計算書といった決算公告書類を物件オーナーに開示し、事業の継続性と収益性をアピールするとよいでしょう。これらをアピールしておけば、申請前に賃貸借契約の締結に至らずとも、来日後の契約締結に向けた信頼関係を構築しやすくなります。

外国人が利用できる賃貸保証会社や、外国人を対象にした物件仲介に強い不動産会社を介して、外国人起業家に理解のある物件オーナーを探すことも、解決策の一つといえるでしょう。

まとめ

本記事は4カ月の経営管理ビザを取得するうえで賃貸借契約は不要とお伝えしました。しかし、実務上は事務所の賃貸借契約が必須です。地方出入国在留管理局も申請時に賃貸借契約書の提出を求めているという実態があります。

それでも、4カ月の経営管理ビザで日本に在留する外国人は多くの場合、物件オーナーに事務所の賃貸借契約を締結してもらえません。そのため、事務所の賃貸借契約を締結するために、借主になってくれる日本在住の協力者が必要とされるのが実情です。

このように、4カ月の経営管理ビザを取得するうえでは、さまざまな落とし穴があります。落とし穴にハマったことで申請が不許可にならないよう、まずは行政書士をはじめとした在留資格の専門家に相談することをおすすめします。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
https://hiroshima-visa.link/
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