経営管理ビザの事業計画書の書き方を徹底解説!不許可になりやすい特徴も解説!

外国人が日本で会社を設立・運営するためには、経営管理ビザを取得しなければなりません。

経営管理ビザの取得にあたって、一番重要な書類とされるのが、事業計画書です。精度の高い事業計画書を作成することで、経営管理ビザを取得しやすくなります。

しかし、経営管理ビザを初めて申請する外国人にとって、事業計画書の作成は大きなハードルの一つです。

そこで、本記事では、経営管理ビザ申請で提出する事業計画書に記載すべき内容について解説します。不許可になりやすい事業計画書の特徴や事業計画書を作成する際の注意点についても解説するため、参考にしてください。

経営管理ビザ申請で提出が必要な事業計画書とは?

はじめに、経営管理ビザ申請で提出が必要な事業計画書の概要について解説します。

一般的な事業計画書との違いや適切なボリューム、経営管理ビザ申請で大切な理由についても解説するため、参考にしてください。

事業計画書の概要

事業計画書とは、創業の動機や事業の目的、開業・運営にかかる資金とその調達方法、事業の見通しなどについて記載した計画書です。法的に作成が必須ではありませんが、自社事業を第三者に理解してもらったり、創業時に出資や融資を受けたりする際に重要な資料とされています。

事業計画書の有する重要性は、経営管理ビザ取得の場合も変わりません。事業計画書はビザ申請時に地方出入国在留管理局(入管)に対して、日本で安定的に経営できる能力があることを証明する役割を果たしてくれます。

一般的な事業計画書との違い

経営管理ビザの申請時に提出する事業計画書は、あくまでも在留資格該当性(行おうとする事業が在留資格に該当するかという要件)が担保されているかを証明する書類です。そのため、融資や投資を求めて金融機関や企業に提出する事業計画書とは目的が異なります。

このような背景により、経営管理ビザの事業計画書では、継続性や収益性など一般的な事業計画書で重視される項目に加え、経営管理ビザ取得の要件でもある次の項目が重視されます。

  • 事業が法律にのっとり、適正に運営されているか
  • 事業の安定性・継続性が担保されているか
  • 資本金の適法に用意され、その形成過程も問題ないか

事業計画書の適切なボリューム

経営管理ビザの事業計画書は、おおむねA4用紙で10ページ前後にまとめるのが一般的です。このページ数より多くなると、入管の審査官に内容を十分に確認してもらったり、内容を理解してもらったりすることが困難になる可能性があります。

経営管理ビザの事業計画書は、ワードやパワーポイントなど使用するツールにかかわらず、できるだけグラフや図表を用いてシンプルに表現することが大切です。そのうえで、適宜文章の説明文を加えることで、読み手に伝わりやすい内容にしましょう。商品がある場合は写真を載せるのもおすすめです。

経営管理ビザ申請で事業計画書が大切な理由

繰り返しますが、経営管理ビザ申請で事業計画書が大切なのは、在留資格該当性を証明する資料になるためです。

したがって、申請者は、事業計画書が出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令に記載される次の要件に合致しているかを意識しながら作成しなければなりません。

申請人が次のいずれにも該当していること。  一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。 二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。 イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。 ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。 ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。 三 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は,事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」

また内容によっては、出入国在留管理庁がウェブサイトで公開している資料「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」も参考にすると良いでしょう。

経営管理ビザ申請で提出する事業計画書に記載すべき内容

経営管理ビザ申請で提出する事業計画書に記載すべき内容には、次の6つがあります。

  • 事業の内容
  • 起業の動機と市場規模
  • 取引先
  • 売上と経費の収支計画
  • 主な商品と商品の販売方法
  • 具体的な人事計画

これらの内容を事業計画書に盛り込むことで、説得性が高まります。ぜひ参考にしてください。

事業の内容

事業の内容については、具体的にどのような事業を展開するのかを簡潔に記載しましょう。

その際、業種や提供するサービス・製品の内容、事業目標などを図や写真を交えながら明確にすることが重要です。事業内容をわかりやすく明示することで、事業の具体性や目標への実現可能性が審査官に伝わりやすくなります。

他方、会社名や資本金、所在地などの基本情報は審査官が理解しやすいよう、表形式で記載するのがおすすめです。

起業の動機と市場規模

起業の動機については、これまでの職歴や培ったスキルと関連付けながら、なぜ事業を立ち上げようと考えたかを具体的に記載しましょう。特に、起業予定のビジネスに関連する経験や知見は、審査でプラスに評価されやすいため、盛り込むことをおすすめします。

市場規模については、官公庁や調査会社が公開する統計やデータを用いて説明する形でも構いません。公開データをもとにターゲット市場の規模や成長性、競合企業などを分析したうえで、ターゲット市場のどういった点に商機があるかも論じましょう。

取引先

取引先については、事業の継続性や実現可能性を裏付ける重要な要素であることから、具体的に記載しましょう。

たとえば、販売先や仕入れ先の住所や電話番号、会社名、担当者名に加え、取引の態様や商品・サービスの仕入れ条件、年間の取引予定金額までを明確に記載することが大切です。解像度の高い情報は、売上計画に対する根拠となり、審査で評価されやすくなるでしょう。

また、取引先の信頼性を示すために、商談の進捗状況がわかる資料を別途提出することも有効です。たとえば、契約書や覚書、取引先の信用情報などを添付するとよいでしょう。書面による証拠があれば、ビジネスの実態があることを証明可能です。

また顧問契約を結ぶ税理士や弁護士がいる場合は、事務所名や担当名を記載することをおすすめします。税理士名や弁護士名の記載により、税務・法的リスクへの対策がしっかり施されていることを対外的に証明できるでしょう。

売上と経費の収支計画

事業の経済的な実現可能性を示す収支計画については、最低でも1年、可能であれば3年分を記載しましょう。一般的に創業1年目はなかなか売上が見込めないものの、しっかりと取り組めば、3年目で事業が安定してくるためです。

収支計画には、所定の書式は定められていません。収支やキャッシュの流れの把握という目的が達成できれば形式は自由ですが、売上見込みや経費、利益予測などは最低限記載し、その根拠も明示しましょう。

その点、日本政策金融公庫の「月別収支計画書」は必要事項が網羅されているため、参考にすることをおすすめします。

出典:日本政策金融公庫「月別収支計画書

主な商品と商品の販売方法

主な商品とその商品の販売方法については、誰でもイメージできる形で記載しましょう。たとえば、商品は画像・写真を添付しながら、価格や料金プランなどを提示することが大切です。

商品の販売方法についても同様です。販売方法も、「法人向けには注文に応じて直接納品し、個人消費者にはAmazonに出品のうえ、販売する」といった形で具体的に記載しましょう。

具体的な人事計画

事業拡大を考えている場合は、会社組織図や将来的な人員配置、採用計画など具体的な人事計画を明示するとよいでしょう。人事計画を明示すれば、事業計画書の説得力が増し、高評価につながります。

特に高評価につながりやすいのが、採用計画です。職種ごとの採用目標人数や求める人物像、採用チャンネル、選考方法などをまとめた採用計画を提示すれば、人事計画全体が一層評価されやすくなります。

経営管理ビザ申請が不許可になりやすい事業計画書の特徴

経営管理ビザ申請が不許可になりやすい事業計画書には、次のような特徴があります。

  • 事業計画(ビジネスプラン)の見通しが甘い
  • 競合分析が十分になされていない

ここからは、これらの特徴を持つ事業計画者がなぜ不許可になりやすいのか理由を含めて解説します。ぜひ参考にしてください。

事業計画(ビジネスプラン)の見通しが甘い

事業計画(ビジネスプラン)の見通しが甘い場合は、不許可を受けやすくなります。見通しが甘ければ、初期の資金が潤沢でも、収支の赤字によって企業経営がジリ貧になっていくとみなされるためです。

入管の審査官は経営の専門家ではありません。それでも、申請者は事業計画書で、明確な根拠をもとに、事業計画の実現性や継続性のある収益構造を証明しなければなりません。これらを証明するうえでは、少なくとも次の項目を明示する必要があります。

  • 売上の根拠
  • 減価率の根拠
  • 経費の根拠
  • 減価償却費
  • 借入金計算
  • 火災保険・損害保険の有無
  • 社会保険料の有無
  • 所得税・事業税の見通し
  • 償却資産税

これらの項目は最低限の記載事項です。参入障壁が低い業界や競争が激しい業界であれば、現実的な事業計画書を作成したうえで、計画が下方修正された場合のシミュレーションも立てる必要があるでしょう。

競合分析が十分にされていない

競合分析が十分にされていない事業計画書も、申請不許可を招きやすくなります。

事業計画書に添付する、販売の根拠や競合優位性を裏付ける資料は、調査会社が公開している市場調査データや競合分析レポートでも構いません。

ただし、競合他社の分析については、競合他社を特定したうえで、彼らの商品・サービス、価格、マーケティング戦略、強みと弱みなどを調査する必要があるでしょう。その際、自社の強みと弱み、機会、脅威の4要素を分析するSWOT分析や、市場・顧客、競合、自社の3つの視点から分析する3C分析といったフレームワークを活用することが有効です。

経営管理ビザ申請で提出する事業計画書を作成する際の注意点

経営管理ビザ申請で提出する事業計画書を作成する際の注意点には、次の3つがあります。

  • 事業計画書は日本語で作成する
  • わかりやすい事業計画書を作成する
  • 事業計画書の裏付け資料を添付する

これらの注意点に留意して事業計画書を作成すれば、審査官からマイナス評価を受けにくくなります。ぜひ参考にしてください。

事業計画書は日本語で作成する

事業計画書は入管に提出する資料であるため、正確な日本語で作成しなければなりません。

逆に日本語の読み書きが不得意な外国人が事業計画書を作成すると、審査時に「事業内容を理解してもらえない」「正しい意味で伝えられない」といった問題が発生します。そのような問題が発生すれば、当然、申請が許可されることはありません。

費用はかかりますが、日本語の読み書きに自信がない方は、翻訳もできる専門業者に事業計画書の作成を依頼しましょう。

わかりやすい事業計画書を作成する

事業計画書は図や写真を交えながらわかりやすく説明しましょう。審査官はビジネスのプロではないうえに、専門用語が羅列された文字ばかりの事業計画書では、何が書いてあるかうまく伝わらないためです。

食品や衣類、不動産など、有形商材を提供する場合は、特に写真が必要です。またソフトウエアや人材サービス、金融商品など無形商材を提供する場合でも、サービスの流れを図解したほうが、文章のみの説明よりも伝わりやすいでしょう。

事業計画書の裏付け資料を添付する

事業計画書には、売上や経費の根拠となる裏付け資料を添付しましょう。具体的な裏付け資料は次のとおりです。

  • 契約書類:ビジネス関係を証明するうえでは、取引先との販売契約書や業務委託契約書、覚書、発注書などが有効です。
  • 見積書、カタログ:収益予測を証明するうえでは、販売計画書や商品メニュを一覧化したカタログなどが有効です。
  • 二次データ:市場規模を分析するうえでは、官公庁による統計データや業界団体の報告書、研究機関・公的機関による調査レポートが有効です。

まとめ

経営管理ビザの取得を目指すうえで、精度の高い事業計画書の作成は必要不可欠です。具体的かつ信頼性のある事業計画書を作成し、審査官に事業の安定性と継続性を効果的にアピールできれば、経営管理ビザ取得の成功率は高まるでしょう。

しかし、入管が申請人の外国人に求める水準は高く、インターネットや生成AIでの情報だけでは不十分な場合があります。そのため、独力で事業計画書を作成する自信のない方は、行政書士をはじめとした在留資格の専門家に協力を求めるとよいでしょう。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

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