高度外国人材が永住ビザを取得するにはどうすればいい?要件や必要書類を解説!

高度外国人材とは、高度な専門的な能力を持つ人材として法務省令に基づく基準を満たした外国人です。高度外国人材に特化した在留資格には「高度専門職」があり、2023年末時点で2万3,958人がこの「高度専門職」を取得しています。

高度専門職の保有者のなかには、在留歴にかかる永住許可(永住ビザ)要件の緩和措置を利用し、永住ビザの取得を目指す方が少なくありません。

そこで、本記事では、高度外国人材(高度専門職)が永住ビザを取得するための要件や、永住ビザ取得時に緩和される条件について解説します。高度外国人材が永住ビザを取得する際に必要な書類についても解説するため、参考にしてください。

高度外国人材とは?

高度外国人材は、主に仕事の領域で専門的な技術力や知識を有する外国籍人材です。高度人材ポイント制に基づき、一定以上のポイントを獲得した外国籍人材は、在留資格の「高度専門職」を取得できます。

なお、経済産業省は、高度外国人材について、次のような人材を具体的に想定しています。

日本国内または海外の大学・大学院卒業などの最終学歴を有し、企業で、技術者や法律・会計などの専門職、営業職、経営などに従事する外国人 在留資格では、「高度専門職」や「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「法律・会計業務」といった「専門的・技術的分野」に該当

出典:経済産業省近畿経済産業局「高度外国人材等

つまり、厳密な意味では、高度外国人材は、「高度専門職」の在留資格を持つ外国人に限定されません。一定以上のポイントを持っていれば、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」といった在留資格の保有者であっても、高度外国人材とみなされます。

高度人材ポイント制とは?

高度人材ポイント制とは、出入国在留管理上の優遇措置を付与することにより、高度外国人材の受け入れの促進を図ることを目的とした制度です。2012年5月7日に導入されました。

高度人材ポイント制では、学歴・職歴・年収などの項目ごとに付与されるポイントで、その合計が「70点(70ポイント以上」に達した方が高度外国人材として認められ、在留資格「高度専門職1号」を取得できます。「80点(80ポイント以上」の場合は「高度専門職2号」を取得でき、さらなる優遇措置を受けることが可能です。

具体的なポイントの計算方法については、ポイント計算表をご参照ください。

高度外国人材の優遇措置とは?

高度人材ポイント制をもとに、高度外国人材に認定されると、次のような出入国在留管理上の優遇措置が認められます。

高度専門職1号の場合
複合的な在留活動の許容高度外国人材は、大学での研究活動とあわせて関連する事業を経営活動を展開できるなど、複数の在留資格にまたがるような活動を行えます。
在留期間「5年」の付与高度外国人材には、法律上最長の在留期間である「5年」が一律に付与されます。
在留歴にかかる永住許可要件の緩和高度外国人材としての活動を引き続き3年している場合や、高度外国人材のなかでも特に高度と認められる方(80点以上の方)については、永住許可申請に必要な在留歴が従来の10年から3年、あるいは1年に短縮されます。
配偶者の就労高度外国人材の配偶者は、学歴・職歴を満たさない場合でも、在留資格「教育」、「技術・人文知識・国際業務」などに該当する活動を展開できます。
一定の条件の下での親の帯同の許容①高度外国人材またはその配偶者の7歳未満の子(養子を含む。)を養育する場合、②高度外国人材の妊娠中の配偶者または妊娠中の高度外国人材本人を介助する場合については、一定の要件の下で、高度外国人材または配偶者の親の入国・在留が認められます。
一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容高度外国人材については、世帯年収1,000万円以上や、帯同する家事使用人が1人といった条件を満たせば、外国人の家事使用人の帯同が認められます。
入国・在留手続の優先処理高度外国人材に対する入国・在留審査は、入国事前審査にかかる申請が申請受理から10日以内をめどに処理されるなど、優先的に早期処理が進められます。
高度専門職2号の場合
a 「高度専門職1号」で認められる活動のほか、その活動にあわせて就労に関する在留資格で認められるほぼすべての活動を行えます。
b 在留期間が無期限になります。
c 上記①〜⑥までの優遇措置が受けられます。

出典:出入国在留管理庁「どのような優遇措置が受けられる?

高度専門職2号を取得すれば、在留期間が無期限になります。そのため、高度外国人材における永住ビザのニーズについては、基本的に高度専門職1号の保有者から生まれているといえるでしょう。

高度専門職から永住ビザを取得するための要件

高度専門職から永住ビザを取得するための要件には、次の3つがあります。

  1. 素行が善良であること
  2. 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
  3. その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

一般的な永住許可の要件と重複する部分もありますが、参考にしてください。

要件① 素行が善良であること

素行善良要件では、高度専門職の在留資格者はほかの在留資格者と同様に、拘禁刑や罰金といった刑罰を受けていなかったり、違法行為を犯してなかったりする必要があります。

要件② 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること

独立生計要件では、高度専門職の在留資格者は転職のたびに在留資格の変更許可申請をしなければなりません。

ただ、転職前後の給与や職務上の地位が下がったり、転職を繰り返していたりする場合は、勤続の安定性の観点でマイナス評価を受けて永住不許可となる可能性があります。そのため、このケースでは、最低でも転職後1年くらい経過してから、永住許可を申請するとよいでしょう。

高度専門職1号イ(教授・研究者等)には年収要件がないものの、扶養家族が1人増えるごとに70万円程度の最低年収の加算が必要とされています。

要件③ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

国益適合要件では、高度専門職の在留資格者は、次の要件を満たす必要があります。

①ーA 高度ポイント制に基づくポイント計算で70点以上を有し日本に3年以上継続して在留していること

この要件では、具体的に次のような方が該当します。

ア)「高度外国人材」として必要な点数を維持して3年以上継続して日本に在留していること イ)永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職令に規定するポイント計算をした場合に70点以上の点数を有していたことが認められ、3年以上継続して70点以上の点数を有し日本に在留していること

出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)

上記要件が当てはまるのは、高度専門職の在留資格者だけではありません。「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「法律・会計業務」といった「専門的・技術的分野」の在留資格者も、該当します。

①ーB 高度ポイント制に基づくポイント計算で80点以上を有し日本に1年以上継続して在留していること

この要件では、具体的に次のような方が該当します。

ア)「高度外国人材」として必要な点数を維持して1年以上継続して日本に在留していること イ)永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職令に規定するポイント計算をした場合に80点以上の点数を有していたことが認められ、1年以上継続して80点以上の点数を有し日本に在留していること

出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)

② 納税義務をはじめとした公的義務を履行していること

この要件では、会社員や経営者など、就業形態に問わず、各種税金を適正に支払っており未納がないことが求められます。ただ支払っているだけでなく、納付期限を遵守しているかをチェックされる点にも注意が必要です。

③ 現に有している在留資格について、最長の在留期間を持って在留していること

高度専門職の在留資格者は許可時に法定上、最長の在留期間(高度専門職1号は5年、高度専門職2号は無期限)が付与されるため、この要件を自動的にクリアできます。

④ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがない

この要件では、エボラ出血熱や新型コロナウイルス感染症などの感染症に罹っていなかったり、麻薬・大麻・覚醒剤などの慢性中毒者でなかったりすることが必要です。

⑤ 著しく公益を害するおそれがない

この要件は、素行善良要件と同じです。法令に違反し、拘禁刑や罰金に処されていないか、違法行為や風紀を乱す行為を繰り返していないかを審査されます。

高度外国人材が永住ビザを取得する際に緩和される条件

高度外国人材として認められると、永住ビザを取得するための条件が緩和されます。具体的には、永住ビザを取得するうえで必要な在留期間が、従来の10年から、1年または3年に短縮されます。

ただし、いわゆる「原則10年在留に関する特例」については、80ポイント以上と70ポイント以上の場合とで適用条件が異なるため、ご留意ください。

80ポイント以上の場合

高度人材ポイント制で80ポイント以上を持っている方は、次の条件を満たせば、特例が適用されます。

ア)「高度人材外国人」として必要な手数を維持して1年以上継続して日本に在留していること イ)永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算をした場合に80点以上の点数を有していたことが認められ、1年以上継続して80点以上の点数を有して日本に在留していること

出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)

70ポイント以上の場合

高度人材ポイント制で70ポイント以上を持っている方は、次の条件を満たせば、特例が適用されます。

ア)「高度人材外国人」として必要な点数を維持して3年以上継続して日本に在留していること イ)永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算をした場合に70点以上の点数を認められ、3年以上継続して70点以上の点数を有して日本に在留していること

出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)

高度外国人材が永住ビザを取得する際に必要な種類

高度外国人材が永住ビザを取得する際に必要な書類は、現状の在留資格によって異なります。

そこで、本記事では、申請人が高度専門職の在留資格者だと仮定し、永住ビザ申請に必要な書類を説明します。

80ポイント以上の場合

80ポイント以上を保持し、高度専門職を保有する方は、永住ビザ申請にあたり、次の書類を提出する必要があります。

永住許可申請書 写真(縦4㎝×横3㎝) 永住許可を必要とする理由書 申請人を含む家族全員の住民票 ①在職証明書、②確定申告書控えの写し、③営業許可書の写し、④職業にかかる説明書およびその立証資料、のいずれかの書類 直近1年分の住民税の課税(または非課税)証明書 直近1年分の住民税の納税証明書 直近1年分の住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写しなど) ①源泉所得税・復興特別所得税、②申告所得税・復興特別所得税、③消費税・地方消費税、④相続税、⑤贈与税、のすべての情報が記載された書類 直近1年分のねんきん定期便またはネットの「各月の年金記録」の印刷画面 直近1年分の国民年金保険料領収証書(写し) 健康保険被保険者証(写し) 国民健康保険被保険者証(写し) 直近1年分の国民健康保険料(税)納付証明書 直近1年分の国民健康保険料(税)領収証書(写し) 直近1年分の健康保険・厚生年金保険料領収書(写し) 直近1年分の社会保険料納付証明書または社会保険料納入確認(申請)書 高度専門職ポイント計算表(永住許可申請時点) 高度専門職ポイント計算結果通知書(80点以上)の写し 高度専門職ポイント計算にかかる疎明資料 ①預貯金証明書の写し、②不動産の登記事項証明書のいずれかの書類等 身元保証書 身元保証書にかかる資料 了解書

出典:出入国在留管理庁「永住許可申請にかかる提出書類一覧表(概要版(就労資格))

70ポイント以上の場合

70ポイント以上を保持し、高度専門職を保有する方は、永住ビザ申請にあたり、次の書類を提出する必要があります。

永住許可申請書 写真(縦4㎝×横3㎝) 永住許可を必要とする理由書 申請人を含む家族全員の住民票 ①在職証明書、②確定申告書控えの写し、③営業許可書の写し、④職業にかかる説明書およびその立証資料、のいずれかの書類 直近3年分の住民税の課税(または非課税)証明書 直近3年分の住民税の納税証明書 直近3年分の住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写しなど) ①厳選所得税・復興特別所得税、②申告所得税・復興特別所得税、③消費税・地方消費税、④相続税、⑤贈与税、のすべての情報が記載された書類 直近2年分のねんきん定期便またはネットの「各月の年金記録」の印刷画面 直近2年分の国民年金保険料領収証書(写し) 健康保険被保険者証(写し) 国民健康保険被保険者証(写し) 直近2年分の国民健康保険料(税)納付証明書 直近2年分の国民健康保険料(税)領収証書(写し) 直近2年分の健康保険・厚生年金保険料領収書(写し) 直近2年分の社会保険料納付証明書または社会保険料納入確認(申請)書 高度専門職ポイント計算表(永住許可申請時点) 高度専門職ポイント計算にかかる疎明資料 ①預貯金証明書の写し、②不動産の登記事項証明書のいずれかの書類等 身元保証書 身元保証書にかかる資料 了解書

出典:出入国在留管理庁「永住許可申請にかかる提出書類一覧表(概要版(就労資格))

80点以上の場合と比べると、必要書類の年数は住民税関連が1年から3年、年金関連と健康保険関連が1年から2年に伸びています。一方で、高度専門職ポイント計算結果通知書の写しが不要なのが特徴です。

まとめ

高度外国人材は在留歴にかかる永住許可要件が緩和されるため、ほかの在留資格者と比べて永住ビザを取得しやすいといえます。

それでも、実際に永住ビザを申請するまでに多数の必要書類を集める必要があります。また、申請時に一定以上のポイントを有しているかについては、専門家によるチェックが推奨されます。

そのため、高度外国人材から永住ビザの取得を検討している方も、行政書士をはじめとした法律の専門家に相談するとよいでしょう。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
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