日本の永住権取得はなぜ難しい?不許可になるケース9選も解説!

永住権(永住者)は取得するのが難しい在留資格です。実際、年間3万人を超える永住権の申請者が、不許可になっています。

本記事では、そんな永住権の取得が難しい理由について解説します。永住権申請が不許可になるケースや、不許可後の対応方法についても解説するため、参考にしてください。

永住権の許可率は高くない

永住権の許可率は際立って高いわけではありません。実際、政府の出入国管理統計から導き出される許可率は過去5年間で、51.7〜65.6%で推移しています。

総件数(人)許可件数(人)許可率(%)
2019年56,90232,21356.6
2020年57,57029,74751.7
2021年64,14936,69157.2
2022年58,92737,99264.5
2023年50,98633,47065.6

出典:e-Stat「地方出入国在留雨管理局管内別 在留資格の取得等の受理及び処理人員

一見すると、永住権の許可率は高いように見えます。しかし、申請人の多くは許可要件を満たしていると判断したうえで申請しています。

そのため、不許可率が約35%〜約50%に上る上記データは、厳しい現実を反映しているといえるでしょう。

日本の永住権取得が難しい理由

日本の永住権取得が難しい理由は、次の2つです。

  • 取得要件が難しい
  • 申請書や書類を完璧に用意するのが難しい

それぞれ解説するため、参考にしてください。

取得要件が厳しい

日本の永住権取得が難しいのは、第一に取得要件が厳しい点にあります。出入国在留管理庁が提示する永住許可に関するガイドラインによれば、永住権を取得するためには、次の要件を満たさなければなりません。

素行が善良であること 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること その者の永住が日本国の利益に合すると認められること 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日)

このうち、在留外国人が永住許可を取得するうえで最も高いハードルとなるのが、10年以上の在留期間です。この10年という在留期間を、在留年数の短縮特例が適用されない在留外国人がクリアするのは、容易ではありません。

実際、多くの在留外国人は就業先との契約条件の見直しや同居家族の転勤などにより、10年という在留期間を迎える前に帰国を強いられています。

 

このほかに、外国人である申請者本人が要件を満たしているか判断するのも容易ではありません。こうした取得要件の定性的側面が、永住権の取得を難しくさせています。

申請書や書類を完璧に用意するのが難しい

日本の永住権取得が難しいとされる2つ目の理由は、申請人が独力で申請書や書類を完璧に集めるのが難しい点にあります。

たとえば、就労資格(技術・人文知識・国際業務等)の在留資格者が永住許可申請するうえでは、次の書類を準備しなければなりません。

永住許可申請書 写真(縦4㎝×横3㎝) 永住許可を必要とする理由書 申請人を含む家族全員の住民票 ①在職証明書②確定申告書控えの写し③営業許可書の写し④職業にかかる説明書およびその立証資料 直近5年分の住民税の課税(または非課税)証明書 直近5年分の住民税の納税証明書 直近5年分の住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写しなど) ①源泉徴収税および復興特別所得税②申告所得税および復興特別所得税③消費税および地方消費税④相続税⑤贈与税、の情報がすべて記載された書類 直近2年分のねんきん定期便またはネットの「各月の年金記録」の印刷画面 直近2年分の国民年金保険料領収証書(写し) 健康保険被保険者証(写し) 直近2年分の国民健康保険料(税)納付証明書 直近2年分の国民健康保険料(税)領収証書(写し) 直近2年分の健康保険・厚生年金保険料領収書(写し) 直近2年分の社会保険料納付証明書または社会保険料納入確認(申請)書 ①預貯金証明書の写し②不動産の登記事項証明書のいずれかの書類 身元保証書 身元保証書にかかる資料 我が国への貢献にかかる資料(ある場合のみ) 了解書

出典:出入国在留管理庁「永住許可申請にかかる提出書類一覧表(概要版(就労資格))

申請者は上記のような書類を集めたうえで、外国語の資料を添付する場合は日本語の翻訳を添付したり、書類の内容に一貫性を持たせたりする必要があります。

また、必要書類以外にも、疎明資料や理由書など、提出すると有利になる書類を自分で判断して収集・作成することが求められます。

このように、細かい留意点が多い点も、永住権の許可率を低くしています。

永住権申請が不許可になるケース9選

永住権申請が不許可になるケースには、次の9つがあります。

  • 申請理由書の書き方に問題がある
  • 年収が300万円未満
  • 海外出国歴が多い
  • 審査中に事情が激変した
  • 税金や国民健康保険、年金の滞納、支払期限を守らない
  • 扶養人数が多すぎる
  • 軽微な交通違反を繰り返している
  • 在日居住年数が足りない
  • 身元保証人が不適切

これらのケースを押さえることで、事前に不許可を回避することが可能です。ぜひ参考にしてください。

申請理由書の書き方に問題がある

永住権の申請理由書は、申請者本人が永住したい理由や自分の状況をまとめた資料です。永住権申請で、最も重要な書類の1つとして位置付けられています。

この申請理由書の書き方に不備や問題があると、不許可になる可能性が高くなります。たとえば、日本語が不自由な場合や、永住理由に説得力がない場合は、審査官によい印象を与えられません。

申請理由書の作成で重要なのは、自己の経験や将来の計画を反映させ、自分の言葉で永住理由を伝えることです。そのため、インターネットのテンプレートを使用することも避けるべきでしょう。

年収が300万円未満

年収が300万円未満の方は、永住権許可を受けにくくなります。年収が300万円未満だと、永住権取得要件にある独立生計要件を充足できず、審査官に安定した生活を送れていないと判断されてしまうためです。

また、扶養家族がいる場合は、さらに年収要件が厳しくなります。具体的には、扶養家族1人につき、60万円〜80万円程度を上乗せする必要があります。

海外出国歴が多い

海外出国歴が多いと、永住権申請で不利になる場合があります。永住権を申請するためには、少なくとも10年の在留年数が必要になるためです。

また、在留年数が10年以上を超えていても、次のような状況は、在留年数がリセットされてしまいます。

  • 1回の出国で90日以上海外に出る
  • 1年で合計150日以上出国している

上記のような出国歴でなくとも、頻繁な海外出国は、審査官に「生活の基盤が日本にない」と判断される可能性があります。注意しましょう。

審査中に事情が激変した

永住権の審査中に失業したり、転職したりして事情が変化すると、不許可になりやすいとされます。特に仕事上の変化を理由とする生活環境の変化は、独立生計要件を満たしにくくなると判断されやすいためです。

仮に転職で、年収が上がったとしても、審査でマイナスに評価される場合があります。永住権審査における安定とは、収入の多寡ではなく、仕事の継続状況によって判断されるためです。

したがって、在職中の方は申請中の転職を避けましょう。また、やむを得ず転職した場合は、少なくとも1年以上働いてから永住権を申請することをおすすめします。

税金や国民健康保険、年金の滞納、支払い遅延

税金や国民健康保険、年金の滞納、支払い遅延は、永住権の許可を大きく遠ざけます。

このうち、税金の対応、支払い遅延は、永住権許可を得るうえで致命的です。申請者の経済的信用性を大きく失わせ、確実に不許可を招くと言っても過言ではありません。

税金や国民健康保険、年金は会社員の場合、会社で天引きされるため、支払いに際して問題が生じません。しかし、会社経営者や個人事業主の方は自分で支払う必要があるため、納期限を守ったうえで支払い漏れがないようにしましょう。

扶養人数が多すぎる

収入と扶養人数のバランスが悪い場合は、永住権不許可の可能性が高くなります。扶養人数が多いと生活費の増加によって経済的負担が大きくなり、申請者の経済的安定性が疑われてしまうためです。

減税のために本来扶養に入れるべきではない人、たとえば母国の家族を扶養に入れている場合は、脱税行為です。永住権申請にかかわらず、税務署に修正申告をし、必要に応じて追加徴税も受け入れましょう。

軽微な交通違反を繰り返している

軽微な交通違反を繰り返している人は、永住権申請で不利に働きます。軽微な交通違反は素行善良要件に反していると判断されるためです。

軽微な交通違反とは、次のような道路交通法に基づく点数制度上6点以下の交通違反が該当します。

  • 携帯電話使用等(保持)
  • 駐停車違反(駐停車禁止場所等)
  • 割り込み等
  • 交差点左右折方法違反
  • 踏切不停止等

これらの交通違反により、過去3年間の違反点数が6点以上になると、永住権申請が可能になるまで5年以上待たなければなりません。

在日居住年数が足りない

特例が適用される在留資格者を除いて、10年以上の在日居住年数がない場合は、永住権申請が許可されません。

ここでいう10年以上の在日居住年数とは、過去の居住歴を含めた合計の年数ではありません。たとえば、大学・大学院で6年間留学した後、何年か経ってから日本で4年間就業した場合、10年間日本に居住したとはみなされません。

連続した在日居住年数が10年を超える場合でも、就労資格または居住資格をもって5年以上在留が求められる点にも注意が必要です。

身元保証人が不適切

身元保証人が不適切な場合は、永住権許可が不許可になる可能性が上がります。身元保証人の属性を通じて、申請者の信頼性が担保されていないと判断されてしまうためです。

このような事態を招かないために、次のような要件を満たす身元保証人を選ぶ必要があります。

  • 日本人または永住者
  • 一定以上の資産
  • 納税義務の履行
  • 身元保証人になる意思

これらの要件を満たす身元保証人がいない場合、民間企業が提供する身元保証人代行サービスを利用する方もいます。しかし、地方出入国在留管理局によっては、身元保証人サービスの利用自体がマイナスに評価されるため、利用を避けるのが賢明です。

永住権申請が不許可になった場合の対応方法

永住権申請が不許可になった場合は、次の対応を取ってみましょう。

  • 出入国在留管理局へ出向いて不許可の理由を確認する
  • 申請計画を練り直す

いずれも不許可後に永住権許可を得るうえで欠かせない対応です。ぜひ参考にしてください。

出入国在留管理局へ出向いて不許可の理由を確認する

永住権が不許可になった後は、申請した出入国在留管理局へ出向いて審査官から不許可の理由を聞きましょう。

出入国在留管理局へ出向く際は、審査官との情報共有を円滑にするため、申請時に利用した書類一式を持っていくことをおすすめします。また、行政書士や弁護士に依頼していた場合は、同行をお願いするとよいでしょう。

申請計画を練り直す

出入国在留管理局で不許可理由を伺った後は、今後の申請計画を練り直しましょう。

不許可の理由が説明不足であれば、追加資料で補強してすぐに再チャレンジしてください。逆に、不許可の理由が年金・健康保険の納付遅れや、軽微な交通違反の繰り返しなど、解決に時間がかかる場合は、数年後に再挑戦しましょう。

まとめ

永住権は取得要件が厳しいうえに、申請に必要な書類が多いことから、取得が難しいとされています。

それでも、10年以上の在留年数といった最低限の取得要件を満たしていれば、永住権を取得するのは、決して難しいことではありません。説明が必要な経歴があっても、適切なサポートを受けることで、永住権取得の成功率を高められるでしょう。

このような状況を鑑みると、永住権取得を切に希望される方は、行政書士をはじめとする専門家のサポートを受けることをおすすめします。専門家は永住権の取得が難しい案件でも一緒に解決方法を探し、サポートしてくれるでしょう。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
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