経営管理ビザの取得には資本金500万円が本当に必要?取得方法や問題になるケースも解説!

経営管理ビザの取得に向けて多くの外国人が奔走するのは、500万円以上の資本金の用意です。

一方、経営管理ビザの資本金要件については、正確な理解がないため、どうクリアすれば良いのかわからない方が少なくありません。

そこで、本記事では、経営管理ビザ申請時の要件である資本金要件について解説します。資本金500万円の取得方法や、ビザ取得に際して資本金が問題になるケースについても解説するため、参考にしてください。

経営管理ビザ申請時の要件である資本金500万円

出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令によれば、経営管理ビザを取得する要件の1つとして、500万円以上の資本金が求められています。

申請人が次のいずれにも該当していること。 一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。  二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。   イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。   ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。   ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。 三 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は,事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額 以上の報酬を受けること。

出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」

上記のとおり、経営管理ビザを取得するにたり得る事業規模があることを証明するためには、日本に居住する常勤の職員(日本人や特別永住者、日本人の配偶者等、永住者など)を雇うか、500万円以上の資本金を用意する必要があります。

このほか、経営管理ビザの取得要件には、独立した事務所の確保や事業の管理に従事する場合、3年以上の実務経験が求められます。

経営管理ビザの取得に必要な資本金500万円の取得方法

経営管理ビザの取得に必要な資本金500万円の取得方法には、次の5つがあります。

  • 個人資産
  • 家族からの資金
  • 投資家からの出資
  • ローンや融資
  • 有償新株予約権の発行

このうち、有償新株予約権による資金調達は経営管理ビザのガイドライン改正に伴い、2024年3月から可能になりました。ぜひ参考にしてください。

個人資産

申請者自身が500万円以上の個人資産を持っている場合は、これを経営管理ビザの資本金として証明できます。ここでいう個人資産は、個人名義の口座にある預貯金や所有する建物・土地の不動産評価額、金融資産などです。

しかし、申請者の年収から照らし合わせて個人資産額の500万円が不相応に高い場合、申請者はその出所の詳細について説明しなければなりません。

家族からの資金

申請者の家族が500万円以上の資金を貸付あるいは贈与で申請者に提供する場合は、これを経営管理ビザの資本金として証明できます。申請先の地方出入国在留管理庁(入管)に証明する際、家族からの貸付、贈与であっても、貸付・贈与の事実を証明する契約書が必要です。

また、親や兄弟から現金を手渡しで貸付、贈与を受けた場合は、現金を自身の銀行口座に振り込んだことを証明する銀行口座のコピーの提出が求められます。

母国で家族から現金を受け取り、現金で日本に持ち込んだ場合は、税関の「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の控えを保管しておきましょう。控えがあれば、申請先の入管への説明がしやすくなります。

このほか、貸付者や贈与者との関係性を証明するために、日本の戸籍謄本に該当する書類を準備する必要があります。

投資家からの出資

国内外の投資家から500万円以上の出資を受けた場合は、これを経営管理ビザの資本金として証明できます。入管に証明する際、投資契約書や株主総会議事録、払込証明書などが必要です。

ローンや融資

金融機関からのローンや融資を受けた場合は、これを経営管理ビザの資本金にできます。入管に証明する際は、事業ローン契約書や銀行明細などが必要です。

有償新株予約権の発行

2024年3月に経営管理ビザの改正に伴い、有償新株予約権を利用して得た調達資金も、経営管理ビザの資本金として認められるようになりました。

有償新株予約権は、新株予約権の一種で、発行時に受け手が特定の価格を支払って株式を取得できる権利です。主に上場企業の資金調達手段として活用されています。

一方、これまで有償新株予約権による調達資金は入国時の要件を満たす出資金として認められるかどうか明確な基準が示されていませんでした。

そうしたなか、出入国在留管理庁は海外からの起業家やスタートアップ創業人材が活動しやすい環境を整えようと、ガイドラインを改正。以下の1・2の両方を満たす新株予約権の発行による払込金の金額について、経営管理ビザの資本金として計上できるようにしました。

新株予約権の発行によって払い込こまれた、返済義務のない払込金であること 上記1の払込金について、将来、新株予約権が権利行使されることで払込資本となる場合及および権利行使されずに失効し利益となる場合のいずれであっても、資本金として計上することとしていること
 なお、上記に係る提出資料としては、以下の書類等が必要となります。
ⅰ新株予約権の発行にあたり締結された投資契約書(J-KISS型新株予約権契約書など) ⅱ上記iの締結によって実際に払い込まれた額を証明する資料(通帳の写し若もしくは取引明細書の写し) ⅲ上記iの締結によって実際に払い込まれた額のうち、上陸基準省令「経営・管理」の項の第2号ロの「500万円」として計上して申請しようとする額について、将来、新株予約権が権利行使された際に資本金として計上することの誓約書等

出典:出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について

つまり、新株予約権の発行による払込金については、①返済義務のない払込金であること、②権利行使の有無にかかわらず、将来、資本金として計上することとしていること、の2点を満たせば、出資金として認められます。

経営管理ビザの取得には資本金500万円が本当に必要?

ここからは、「経営管理ビザの取得に資本金500万円が本当に必要?」という質問に回答した後、資本金が500万円に満たない場合の条件について解説します。

外国人・外国法人による500万円以上の資本金は必須ではない

結論からいえば、経営管理ビザの取得に際して外国人・外国法人による500万円以上の資本金は必須ではありません。

入管法第7条第1項第2号の基準を定める省令にも記載があるとおり、事業規模については、2人以上の常勤従業員を雇用することで、充足できるためです。

今でこそ、経営管理ビザの資本金要件は充足が必須ではありませんが、2015年4月1日以前は、外国人あるいは外国法人が日本で経営活動を展開する際、500万円の資本金が必要でした。しかし、2014年の出入国管理及び難民認定法の改正により、日本国内で外国人が事業体を経営する際、資本金要件を満たさなくてもよくなりました。

資本金が500万円に満たない場合の条件

資本金が500万円に満たない場合は、次の条件をクリアしなければなりません。

  • 2人以上の常勤の従業員を雇用すること
  • 従業員は日本人または永住者・日本人の配偶者等・定住者の在留資格者であること
  • 労働保険(労災保険・雇用保険)に加入していること

このように、資本金500万円以上を用意せずとも、経営管理ビザの取得は可能です。ただし、会社の創業初期に常勤従業員を2人も雇用するのは現実的ではありません。その意味で、資本金要件をクリアするほうが容易だといえるでしょう。

経営管理ビザの取得に際して資本金が問題となるケース

経営管理ビザの取得に際して資本金が問題となるケースには、次の3つがあります。

  • 500万円形成の経緯がオーバーワークに起因
  • 過去の年収からみて資本金の形成過程が不自然
  • 資本金500万円の出所が立証できない

これらのケースを把握しておけば、問題の発生を回避しやすくなります。ぜひ参考にしてください。

500万円形成の経緯がオーバーワークに起因

留学生は留学中のアルバイトの給与収入で資本金500万円を準備した場合、経営管理ビザの申請が許可されない可能性があります。留学生は資格外活動の包括許可を受けても、1週間で最大28時間しか個人事業活動やアルバイトに従事できないためです。

したがって、留学生の資格外活動許可に関するルール(入管法第19条)を破って、個人事業活動やアルバイトで資本金500万円を準備した場合は、申請が不許可になりやすくなります。

過去の年収からみて資本金の形成過程が不自然

過去の年収からみて資本金の形成過程が不自然な場合は、経営管理ビザの申請が却下され

やすくなります。

たとえば、就労ビザを持つ申請者がある企業で年収300万円で1年間勤務し、そこでの給与をもって経営管理ビザへ移行しようとしたと仮定します。この場合、1年間の勤務だけでは、就労ビザから経営管理ビザへ変更できません。

年収300万円で、500万円の貯金は不可能なためです。このケースでは、申請者は1年間の勤務で得た貯金額に加え、不足額の具体的な形成過程を立証しなければなりません。

資本金500万円の出所が立証できない

申請者は経営管理ビザ取得にあたって資本金を提示する場合、その資本金をどのように集めたかを説明しなければなりません。経営管理ビザの審査では、マネーロンダリング(資金洗浄)や、資本的に一時的に多く見せかける「見せ金」を防ぐ観点から、資本金の出所がチェックされるためです。

したがって、申請者は資本金500万円をどのように準備したかを立証する必要があり、立証できない場合は経営管理ビザを取得できません。

資本金の出所を立証するうえで、有効な資料は次のとおりです。

  • 所得証明書
  • 海外への送金に関する通知はがき
  • 携行品・別送品申告書(税関)
  • 金銭消費貸借契約書
  • 本国の通帳

経営管理ビザの資本金でよくある質問

ここからは、経営管理ビザの資本金でよくある質問に回答します。

Q.ビザ更新時に再び500万円の資本金を用意する必要はある?

経営管理ビザを更新する際は、再び500万円以上の資本金を用意する必要はありません。更新申請の審査では、事業の継続性や収益性、経営実態が細かくチェックされるためです。

したがって、更新申請では、資本金残高ではなく、売上や利益などの事業実績や納税状況が審査対象となります。

Q.会社設立後に資本金は引き出せる?

経営管理ビザの許可がおり、会社を設立した後でも、資本金を引き出すのは、避けた方が賢明です。

会社設立後に資本金を引き出す行為自体は違法行為ではありません。しかし、資本金の出所を厳格に審査される経営管理ビザの審査では、その行為により資本金が見せ金だとみなされるリスクがあります。

関東信越税理士会によれば、見せ金とは、相手の信用を得るために見せる金銭を指します。また、株式の仮装払い込みの手段として、発起人が払込取扱金融機関以外から資金を借り入れ、その借入金を出資の払い込みに充て、会社設立後すぐに会社の資金を引き出して借入を返済する行為も、「見せ金」と呼ばれています。

つまり、見せ金は、払い込みの外観を偽装する仮装の払い込みの典型例です。

経営管理ビザの申請に際して拠出した資本金を借入金やローンで賄っている場合、会社設立後に資本金を引き出す行為は見せ金とみなされる可能性があります。

最悪の場合、公正証書原本不実記載等罪(刑法157条)や出資の履行を仮装した場合の発起人・役員の責任(会社法52条の2)にも抵触するため、設立直後の資本金の引き出し行為はやめておきましょう。

まとめ

500万円以上の資本金要件をクリアするうえでは、単に資本金を準備するのではなく、出所の証明が求められます。したがって、家族からの資金やローン、有償新株予約権など、取得方法に問わず、資金の形成過程について入管に説明できるようにしておきましょう。

このように資本金要件をクリアするためには入念な準備が必要です。それでも、この要件をクリアすれば、最難関とされる経営管理ビザの取得に一歩でも二歩でも近づくでしょう。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
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