経営管理ビザは何人雇えばいい?人数要件と複数名申請の可否を解説!

日本国内での起業を目指す外国人には、「従業員を数人雇用しないと、経営管理のビザが取得できない」というイメージをお持ちの方が少なくありません。

しかし、実際は、500万円以上の資本金要件を満たせば、2人以上の常勤従業員を雇用しなくても経営管理ビザを取得可能です。

本記事では、経営管理ビザ取得における従業員雇用の必要性や1社で複数人が経営管理ビザを取得できる要件まで、経営管理ビザの「人数」に関する論点について解説します。経営管理ビザを保有する在留資格者の人数や経営管理ビザで雇用が必要なケース・不要なケースなど、気になるトピックについても解説するため、ぜひ参考にしてください。

経営管理ビザを保有する在留資格者の人数

出入国在留管理庁の発表によれば、経営管理ビザを保有する在留資格者は2024年末時点で、前年比10.9%増の4万1,615人でした。これは、在留資格を持つ在留外国人全体(376万8,977人)の約1.1%にあたる人数です。

また、過去6年間の年末時点における経営管理ビザ保有者の人数推移は、次のとおりです。

出典:出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数について

経営管理ビザの保有者はコロナ禍が落ち着いた2022年末以降、急激に増えています。起業準備を目的とした在留資格が付与され、最長2年間、起業準備活動に取り組める外国人起業活動促進事業をはじめ、公的支援が拡充しているためです。

しかし、2025年夏に経営管理ビザの取得に必要な資本金要件が従来の500万円から3,000万円に引き上げられるのに加え、1人以上の常勤職員の雇用も必須要件とする出入国在留管理庁の案がメディア報道で浮上しました。この案が実現すれば、要件の厳格化に伴い、経営管理ビザの増加基調は落ち着くと考えられます。

経営管理ビザには何人の雇用が必要?

出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令によれば、経営管理ビザを取得する要件の1つとして、2人以上の常勤職員の雇用があります。

申請人が次のいずれにも該当していること。 一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。  二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。   イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。   ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。   ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。 三 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は,事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額 以上の報酬を受けること。

出典:出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」

しかし、「申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること」という文言から明らかなように、2人以上の常勤職員の雇用は事業規模の要件を満たすうえでの一条件に過ぎません。

つまり、経営管理ビザの取得にあたって、必ず2人以上のフルタイム従業員を雇う必要はないのです。

常勤職員2人以上の雇用が求められる場合とは?

常勤職員2人以上の雇用が求められるのは、500万円以上の資本金要件を満たせない場合です。

ただし、飲食店や小売店、マッサージ店といった店舗系ビジネスを経営する外国人経営者は資本金要件を満たせても、経営や管理業務といった職務に専念する必要があります。つまり、調理やマッサージといった現場業務に従事できません。

したがって、店舗系ビジネスを運営する外国人経営者は資本金要件を満たせる場合でも、フルタイムの従業員を雇用する必要があります。

1社で複数人が経営管理ビザを取得できる?

経営管理ビザは実務上、1社1人が標準的なイメージです。ただし、事業規模や事業内容によって1社につき複数人の経営管理ビザの保有が認められるケースがあります。

ここからは、1社で複数人が経営管理ビザを申請する際の要件と認められた事例について解説します。

1社で複数人が経営管理ビザを申請する際の要件

1社で複数の外国人が経営管理ビザを申請し、その申請が認められる場合には、事業の規模や業務量、売上などの状況を勘案し、事業の経営または管理を複数の外国人が行う合理的な理由があると申請先の地方出入国在留管理局(入管)に認められる必要があります。

「1社につき複数の外国人が経営管理業務に従事する合理的な理由がある」と認められるための要件は次の3つです。

事業の規模や業務量の状況を勘案して、それぞれの外国人が事業の経営又は管理を行うことについて合理的な理由が認められること 事業の経営又は管理に係る業務について、それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として報酬額の支払いを受けることとなっていること

出典:出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について

要件をまとめると、まず各人の業務内容が明確に区分されているほか、各人に報酬が適切に支払われていることが必要です。そのうえで、事業の規模・業務量などから、複数人の経営・管理者が必要であると入管に判断されれば、1社につき複数人の経営管理ビザの保有が認められるといえるでしょう。

1社で複数人の経営管理ビザ取得が認められた事例

ここからは、出入国在留管理庁が公開しているウェブページ「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」をもとに、1社で複数の経営管理ビザ取得が認められた事例について解説します。

事例1

事例1では、外国人AとBがそれぞれ500万円を出資し、日本で輸入雑貨業を営む資本金1,000万円のX社を設立しました。

もともと、Aは通関手続きをはじめとした輸出入業務等海外取引の専門家、Bが輸入した物品の品質・在庫管理・経理の専門家でした。そこで、新設したX社の運営に際しては、Aが海外取引業務の面から、Bが輸入品の管理・経営面からそれぞれ業務状況を判断し、合議で経営方針を決定することにしました。

加えて、AとBの報酬は、事業収益からそれぞれの出資額に応じた割合で支払われているという背景もあり、事例1では、AとBの両者が経営管理ビザを保有することが認められました。

事例2

事例2では、外国人CとDがそれぞれ600万円と800万円を出資し、日本で運送サービスを提供する資本金1,400万円のY社を設立しました。

Y社を運営するにあたって、CとDは運送サービスを提供する担当地域を設定したうえで、自らが担当する地域で、事業を運営する独立的な形態を採用しました。そのうえで、Y社全体としての経営方針は、CとDが合議で決定することとし、CとDの報酬は事業収益からそれぞれの出資額に応じた割合で支払われるようにしました。

事例2では、明確に区分された業務内容や出資額に応じた報酬支払いなどを踏まえ、CとDの両者が経営管理ビザを保有することが認められました。

事例3

事例3では、外国人EとFが日本でデジタルマーケティングにかかる専門的トレーニングや教育を提供する事業を主業とした資本金1,000万円(出資額はEが800万円、Fが200万円)のZ社を設立し、国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業という枠組みのなかで起業活動を展開することを計画していました。

こうした構想のもと、Z社では、Eが過去の起業や人材育成の経験をもとにCEO兼ヘッドトレーナー、Fが長年のマーケティング会社での経験をもとにチーフ・マーケティング・オフィサーの職務をそれぞれに担い、両者は共同で事業を運営することにしました。

明確に区分された業務内容や複数人の経営・管理者が必要である合理性などを踏まえ、事例3では、EとFの両者が経営管理ビザを保有することが認められました。

経営管理ビザ取得で雇用が必須なケース・不要なケース

経営管理ビザ取得で雇用が必須かどうかは、業種によって異なります。

そこで、経営管理ビザ取得で雇用が必須なケース・不要なケースについて解説します。

経営管理ビザ取得で雇用が必須なケース

店舗系や工場系、建設業といった現場作業を伴う業種は、従業員の雇用が必須です。これらの業種では、申請者の外国人経営者は法律上、経営・管理の業務に専念しなければならないためです。

逆にこうした業種で従業員を雇っていない場合、経営者本人が現場業務に従事せざるを得ないと判断され、経営・管理への専念義務に反しているとみなされる可能性が高くなります。

したがって、現場作業を伴う業種では、外国人経営者は事業計画者との整合性が取れた従業員を確保しなければなりません。そのうえで、雇用契約書やシフト表、社会保険関連書類などの資料を入管に提出することが必要です。

経営管理ビザ取得で雇用が不要なケース

IT関連や不動産仲介、EC(電子商取引)ショップ運営、コンサルティング業など、現場作業を伴わない業種は、申請者の外国人経営者一人での申請が可能です。

これらのオフィスワーク系の業種では、資本金要件を満たしていれば、従業員の雇用は要求されません。従業員0人でも経営管理ビザの取得は可能です。

ただし、オフィスワーク系の業種でも、貿易仲介業における荷受け、積み込みなど、現場作業を伴う場合は、従業員の雇用が求められる場合があります。そのため、オフィス系の業種でも、外国人経営者は事前に入管に相談し、判断を仰ぐとよいでしょう。

まとめ

経営管理ビザの取得にあたって、オフィス系の業種での起業を目指す外国人経営者は、従業員2人を雇用する必要はなく、資本金要件を満たせば1人会社での申請が可能です。一方、店舗系や工場系など現場作業を伴う業種での起業を目指す外国人経営者は、現場スタッフを雇用しなければなりません。

このように経営管理ビザの取得にあたって、雇用が必要かどうかは、業種によって異なります。従業員の雇用が必要となれば、申請者の外国人経営者は、さまざまな必要書類を準備しなければなりません。

要件を把握し、必要書類を準備するのは想定以上に難しい部分があります。これを踏まえ、従業員の雇用が必要な外国人経営者は、行政書士をはじめとした在留資格の専門家に協力を求めるとよいでしょう。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
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