経営管理ビザを取得するための事務所要件とは?オフィス形態別の要件や各種注意点も解説!

経営管理ビザの取得を目指す外国人起業家は、上陸許可基準に規定された事務所要件をクリアするために、日本国内に事務所を確保しなければなりません。

ただし、確保する事務所は単なるスペースではなく、業態に応じた広さや設備、独立性が求められます。こうした事務所の基本要件のほかに、オフィス形態別の取得要件や賃貸物件を事務所として使用する場合の留意点を抑えることが必要です。

これらを踏まえ、本記事では、経営管理ビザ取得に必要な事務所の基本要件のほか、オフィス形態別にみた経営管理ビザの取得要件について解説します。物件契約で注意すべきポイントや店舗型ビジネスを展開する場合の事務所要件についても解説するため、ぜひ参考にしてください。

経営管理ビザを取得するための事務所要件とは?

経営管理ビザを取得するための事務所要件とは、上陸基準省令に規定された要件のことです。具体的には、次のように省令上に記載されています。

一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。

出典:e-GOV法令検索「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令

上記に記載された事務所要件は必須要件の一つであり、クリアしなければ、経営管理ビザを取得できません。

経営管理ビザ取得に必要な事務所の基本要件

経営管理ビザ取得に必要な事務所の基本要件は、次の4つです。

  • 法人名義であること
  • 使用目的が「事業用」であること
  • 事業用としての実態を備えていること
  • 事務所として独立していること

これらの要件をクリアすることで初めて、事務所要件をクリアすることができます。ぜひ参考にしてください。

法人名義であること

事務所が賃借物件である場合は、賃貸借契約の名義を法人名義にしなければなりません。

したがって、個人名義で契約している場合は、名義を法人に変更するといった対応が求められます。

当然のことながら、賃貸借契約の名義が日本の協力者であっても、法人名義への変更は必須です。十分にご注意ください。

使用目的が「事業用」であること

賃貸物件では、賃貸借契約における使用目的が「事業目的」と記載されていなければなりません。

そのため、使用目的が「居住用」となっている場合は、その物件が事務所として認められません。

賃貸借契約における使用目的に関する問題は、もともと居住用の賃貸物件の一室を事業目的として使用する場合に起きるとされます。このような問題を招かぬよう、事前に家主の許可を得ることが大切です。

事業用としての実態を備えていること

事務所にはデスクや固定電話、パソコンなどをそろえ、事業用としての実態を備えさせる必要があります。

会社の存在が確認できるよう、外観を整えておくことも、事業用としての実態を証明するうえで不可欠です。具体的には、会社の看板・表札などを掲示したり、郵便受けに会社名を表示させたりする必要があるでしょう。

事務所として独立していること

事務所は壁やドアなどでほかのスペースと区分けされた仕切りがあり、独立したスペースが確保されていなければなりません。

したがって、バーチャルオフィスやコワーキングオフィスなど、個室がなく開放的な事務所は、独立した事務所として判断されない可能性があります。

逆に言えば、レンタルスペースの一角でも、明確な仕切りがあり、プライバシーが確保されていれば、独立した事務所として認められます。

オフィス形態別にみた経営管理ビザの取得要件

ここからは、オフィス形態別にみた経営管理ビザの取得要件について解説します。

レンタルオフィス

レンタルオフィスを経営管理ビザの事務所として利用するためには、まず業態に応じて一定以上の広さが確保されていなければなりません。

たとえば、Webマーケティングや翻訳業、経営コンサルタントといった、在庫のない業態は、広いスペースは不要です。一方、小売や飲食、設備工事など、大量の在庫や備品を抱える業態は、一定程度、物理的な広さを確保する必要があります。

インターネット回線やパソコン、複合機、電話機など、必要な設備がそろっていることも、必要条件です。これらの設備が備わっていなければ、営業の実態がないとみなされ、申請不許可になってしまいます。

レンタルオフィスでも、壁やドアなどが明確に仕切られていることが大切です。そのため、専用のスペースがないフリーデスクプランやコワーキングスペースなどは、独立性が低く、申請許可が下りません。

自宅兼事務所

在庫がない業態を運営したい申請者のなかには、自宅を事務所として利用したい方も少なくありません。

そこで、ここからは、自宅がマンションの場合、一戸建ての場合、それぞれのケースに分けて、事務所要件について解説します。

自宅がマンションの場合

自宅がマンションの場合、経営管理ビザの事務所要件を充足するのは難しいとされています。マンションは広い間取りであっても、事務所部分と住居部分が近接しており、経営管理ビザに適した事務所ではないと判断されるためです。

また、短期間居住を前提としたマンスリーマンションも、経営管理ビザの事務所として不適格としてみなされます。

自宅が一戸建ての場合

自宅が一戸建ての場合は、経営管理ビザの事務所として認められる可能性があります。

事務所として認められる可能性が高い一戸建ては、2階建て以上の物件です。2階建て以上の物件であれば、1階部分を事務所、2階部分を居住スペースとして運用できることから、事務所要件を満たせる可能性が高まります。

ただし、2階以上の物件でも、1階を居住スペース、2階を事務所として運用する場合は、注意が必要です。居住スペースを通って2階部分に行く間取りの場合、事務所の独立性が低いことから、許可の可能性がほぼゼロであるためです。

一方、外部階段で2階に直接行ける間取りの場合、居住スペースを通らないことから、2階を事務所とすることが許可される可能性があります。

バーチャルオフィス

実際に居住せず、住所や電話番号を借りられるバーチャルオフィスは、経営管理ビザを取得するための事務所として認められません。

バーチャルオフィスは、総務省が定める日本標準産業分類一般原則第二項で規定される次の事務所の要件を満たしていないためです。

経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること。 財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われていること。

出典:出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について

つまり、バーチャルオフィスは、経済活動が単一の経営主体によって一定の場所で行われ、継続的に人と設備を有して商品やサービスの生産・提供が行われていないと判断されます。言いかえれば、事務所の実態が伴っていないのです。

インキュベーションオフィス

創業支援に特化したインキュベーションオフィスは、経営管理ビザを取得するための事務所として認められる可能性があります。公的機関が運営するインキュベーション施設内に事務用オフィスとして割り当てられていることから、多くの場合、事務所要件が充足されているためです。

ただし、インキュベーションの利用に際しては、起業家やスタートアップ企業、新分野への進出を図る中小企業など、対象者が限定されているケースが少なくありません。したがって、入居する前に公的機関による審査を通過する必要があります。

特殊なケース(屋台やトレーラーハウスなど)

屋台やトレーラーハウスなどは、継続的に事業を運営する拠点にみなされにくいうえに、処分が容易なことから、経営管理ビザを取得するための事務所として認められません。

物件契約で注意すべきポイント

ここからは、物件契約で注意すべきポイントについて、賃貸物件を事務所として使用する場合と自宅を事務所として使用する場合に分けて解説します。

賃貸物件を事務所として使用する場合

賃貸物件を事務所として使用する場合は、以下の点を押さえておく必要があります。

賃貸借契約で使用目的は事業用、店舗、事務所など事業目的であることを明らかにする 賃貸借契約者は法人の名義とする 住居として賃借している物件の一部を使用して事業が運営される場合は、住居目的以外での使用を貸主が認めている 当該法人が事業を運営する設備を備えた事業目的占有の部屋を有している 当該物件にかかる公共料金の共用費用の支払いに関する取り決めが明確になっている 看板類似の社会的標識を掲げている

出典:出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について

賃貸物件の物件オーナーのなかには、会社を非設立の事業者に対して個人名での契約を求める方がいます。そのような方が賃貸人の場合は、法人設立後に名義変更が可能か事前に確認しておきましょう。

自宅を事務所として使用する場合

自宅を事務所として使用する場合は、一戸建て物件だとしても、事務所と居住スペースの密着性が高いことから、経営管理ビザの申請が不許可になる可能性があります。

一度許可が下りた場合でも、上陸許可基準の改正により、次回更新時に不許可になる可能性もゼロではありません。また、初回許可後の利用の態様によっては、上陸許可基準や申請先の地方出入管理局が変わっていないにもかかわらず、不許可になるケースもあり得るでしょう。

このように、自宅を経営管理ビザを取得するため事務所とすることは、難易度が高いとされています。こうした事情を踏まえ、申請者は、自宅以外に事務所を設ける選択肢を選ぶことを推奨します。

店舗型ビジネスを展開する場合の事務所要件

飲食店や小売店といった店舗型ビジネスを展開する場合は、店舗とは別に、バックオフィス機能を集約した事務所を確保する必要があります。

たとえば、店舗内に事務所を確保する場合は、店舗内・客室の一部を仕切りで簡単に区切っただけのスペースではなく、四方が壁に囲まれた個室を用意しなければなりません。

このような個室の事務所を店舗内に設けられなければ、店舗とは別に外部でレンタルオフィスのような事務所を借りる必要があります。

ただ、最初から多店舗展開をしない限り、事務所と店舗が離れている環境は、事業を進めるうえで非常に不便です。したがって、店舗型ビジネスを展開する場合は、店舗物件を選定する際に、店舗や客室に併設した個室があるかよく確認しましょう。

まとめ

起業家が経営管理ビザの事務所要件をクリアするためには、オフィス形態別にみた取得要件や、物件契約時の注意点を理解し、適した物件を選定することが大切です。

ただし、要件に合致した物件を選んでも、賃貸借契約書の内容や事業実態の説明次第で、申請が不許可になる場合があります。

申請不許可を招かないためには、行政書士をはじめとした在留資格の専門家の支援を得ることが重要です。専門家の支援を得て、必要書類をそろえるとともに、適切な物件を選べられれば、事務所要件をクリアできるでしょう。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
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