帰化と永住権の違いとは?相違点を徹底解説!

帰化と永住権は在留期限が無期限という点で共通していますが、権利関係でさまざまな相違点があります。
そこで、本記事では、帰化と永住権の違いについて、許可後の国籍や戸籍など、さまざまな観点で解説します。帰化と永住権の比較表も作成したため、ぜひ参考にしてください。
帰化と永住権の違いとは?
まずは帰化と永住権の違いについて解説します。
帰化の特徴
帰化とは、法務大臣の許可を受けた外国人が、国籍を外国籍から日本国籍に変えることです。国籍が日本人となるため、帰化者は、社会保障や参政権などの日本人と同等の権利を有することになります。
ただし、帰化者は母国の国籍を捨てなければなりません。国際社会では、二重国籍を認める国が多い反面、日本では二重国籍が認められていないためです。
これから帰化申請を考えている一方で、自身のアイデンティティを大切にされる在留資格者は、帰化によって母国の国籍が喪失する点に注意する必要があるでしょう。
永住権の特徴
永住権は、外国籍のまま日本に永続的に住める権利です。在留資格(いわゆる永住者)の一つであることから、「永住ビザ」とも呼ばれています。
永住権は、取得すると日本での活動や在留期間の制限が撤廃されます。社会的信用度も向上することから、自由に転職できるほか、住宅ローンや事業融資を受けやすくなるメリットもあります。
この点、永住権は日本での活動の自由度を高めたい一方で、将来的に母国へ戻ることを検討されている方にとって最適な在留資格といえるでしょう。
帰化と永住権の比較表
帰化と永住権の違いは比較表にすると、一目瞭然です。
帰化 | 永住権 | |
管轄 | 法務局 | 出入国在留管理庁 |
根拠法 | 国籍法 | 出入国管理及び難民認定法 |
申請窓口 | 住居地を管轄する法務局 | 住居地を管轄する出入国在留管理局 |
審査期間 | 10カ月から12カ月 | 4カ月から6カ月 |
許可時の手数料 | 無料 | 10,000円(2025年4月以降) |
日本での居住要件 | 原則、5年以上 | 原則、10年以上(就労・居住資格で5年以上) |
許可後の国籍 | 日本国籍 | 母国 |
戸籍 | あり | なし |
取り消しの有無 | 原則なし | あり |
パスポート | 取得 | 取得不可 |
在留カードの更新 | なし | あり(7年ごと) |
再入国許可 | 不要 | 必要 |
外国人登録 | 不要 | 必要 |
参政権 | 有 | 無 |
活動の制限 | なし | なし |
公務員 | 制限なし | 一部の公務員 |
退去強制 | 対象となる | 対象外 |
大きな相違点は、許可後の国籍です。永住権は外国籍のままなのに対し、帰化は日本国籍となります。
許可後の国籍の違いにより、帰化と永住権には手続きの義務や権利関係に違いが生まれている格好です。
詳しい相違点については後述するため、参考にしてください。
帰化と永住権の相違点を解説
ここからは、帰化と永住権の相違点について、次の項目別に解説します。
- 許可後の国籍
- 戸籍の取得
- 申請先
- 審査基準
- 申請にかかる費用・期間
- 要件や手続きの難易度
- 選挙権・被選挙権
- 職業の制限
- 社会保障制度
- 在留期限
- ビザ・在留カードの更新
- 再入国許可
- 日本のパスポート
- 強制退去処分
- 永住や許可の取消し
これらの違いについて把握すれば、ご自身にとって、帰化を選ぶべきか、永住権を選ぶべきかが明白になります。ぜひ参考にしてください。
許可後の国籍
帰化は法務大臣から申請を許可されると、国籍が日本国籍となります。
海外では、帰化しても二重国籍が認められる国もありますが、日本は一人の国民が複数の国籍を持つ二重国籍が認められていません。そのため、日本国籍を取得した帰化者は、母国の国籍を手放す必要があります。
一方で、永住権は取得後も国籍が外国籍のままです。アイデンティティは保持されるものの、身分上は外国人のままのため、日本で生活を送るうえではさまざまな制約があります。
戸籍の取得
帰化者は帰化の告示の日から1カ月以内に帰化届を、住所地を管轄する市町村役場か、任意に設定した本籍地の市町村役場に提出すれば、戸籍の取得が可能になります。
一方で、永住者は自分の戸籍を持てません。代わりに、身分証としての機能を担う在留カードが発行されます。
申請先
申請先については帰化が住所地を管轄する法務局、永住権が住所地を管轄する出入国在留管理庁です。
いずれも法務省の下に置かれる行政組織です。ただし、法務局は国民の財産や身分関係を保護する役所、出入国在留管理庁は外国人の出入国・在留を管理する役所であり、それぞれ役割が異なります。
広島市在住の外国人が帰化申請する場合は広島法務局、永住権を申請する場合は広島出入国在留管理局に申請書類を提出します。
申請にかかる費用・期間
帰化は申請にあたって手数料がかからず、許可された後も手数料が発生しません。標準処理期間は定められていませんが、許可になるまで約1年かかります。
一方、永住権も申請時に手数料がかかりませんが、許可されたときは1万円を手数料として支払わなければなりません。標準処理期間は4カ月から6カ月に設定されていますが、1年近い審査期間を要する場合もあります。
要件や手続きの難易度
要件や手続きの難易度は、帰化よりも永住権の方が厳しい傾向にあります。実際に比較表を作成すると、その違いは一目瞭然です。
在留期間(就労期間) | 年収要件 | 社会保険料 | |
帰化 | 5年以上(3年以上) | 生計が成り立っていれば問題なし | 支払い遅れがあってもリカバリー可 |
永住権 | 10年以上(5年以上) | 年収300万円以上 | 支払い遅延があったら即却下の可能性大 |
このように要件は帰化より永住権の方が厳しいことから、許可率も帰化の方が永住権と比べて高くなっています。
選挙権・被選挙権
帰化者は選挙権・被選挙権の両方が認められます。被選挙権が与えられる意義は大きく、帰化後に国政選挙や地方選挙に当選する例が相次いでいます。
ただし、帰化者は日本人となることから、母国での選挙権・被選挙権が失われます。
一方、永住者は、選挙権・被選挙権の両方が与えられません。ただし、住民投票に参加できる権利については、一部自治体で認められています。
職業の制限
帰化・永住権はともに活動制限がないため、就労制限もありません。
しかし、永住者は国家公務員をはじめとした日本人にしかなれない職業に就けません。一方、帰化者は日本国内での幅広い職業選択の自由が保障され、公務員になることもできます。
社会保障制度
帰化者は健康保険や年金、生活保護に関して日本人と同等の社会保障を受けられます。
一方、永住者も条件がそろえば健康保険や年金などの面で日本人と同等の社会保障を受けられますが、社会保障面で不利益を被る方も少なくありません。具体的に永住者のなかには、母国と日本で二重の社会保険料を支払っている方や、加入歴が足りず、母国に帰国した際に年金を受け取れない方がいらっしゃいます。
このような永住者が被る社会保障上の不利益は、帰化するとなくなります。
在留期限
帰化者と永住者はともに在留期限がありません。
ただし、永住者は所有する在留カードに有効期限があるため、7年1度、最寄りの出入国在留管理局で更新手続きを済ませる必要があります。
ビザ・在留カードの更新
帰化者は日本人となるため、ビザと在留カードの更新手続きをする必要がありません。
一方、永住者はほかの在留資格と違い、在留期限が無期限であることから、在留資格の更新手続きが不要です。ただし、在留カードには、7年の有効期限があるため、定期的に更新手続きをする必要があります。
再入国許可
再入国許可(入管法第26条)は、日本に在留する外国人が一時的に出国し再び日本に入国しようとする場合に、出国に先立って与えられる許可です。
帰化者は日本人となるため、再入国許可を受ける必要がありません。一方、永住者は依然として身分は外国人のままのため、再入国許可を受ける必要があります。
永住者に与えられる有効期限は最大5年間です。ただし、6年間を超えない範囲で延長も認められます。病気や母国での戦争など、日本に戻れない特別な事由があるときは、母国にある日本大使館で有効期限の延長を申請することが可能です。
日本のパスポート
帰化者は住所地を管轄するパスポートセンターで手続きすることで、日本のパスポートを取得できます。ただし、母国のパスポートが使えなくなる点に注意が必要です。
一方、永住者は外国籍のままのため、母国のパスポートを継続して使います。
退去強制処分
永住者は日本人であるため、重大な法令違反を犯しても、退去強制が下される可能性はありません。
一方、永住者は外国籍の対象であるため、退去強制の対象です。無期または1年を超える懲役・禁錮の実刑に処されたときや、薬物に関する犯罪で有罪判決を受けたときなどは、退去強制処分を受ける可能性があります。
永住や帰化の取消し
日本の国籍法には帰化の取り消しの条文が存在しないため、帰化者は他国で帰化や市民権を取得しない限り、許可を取り消されません。それは、現在までに帰化許可が取り消された事案がないことからも明白です。
一方、永住者は新住居地の届出をしなかった場合や虚偽の住居地を届け出た場合などに取り消される可能性があります。ほかの在留資格と比べて取消件数は圧倒的に少ないですが、毎年数件ほど発生しています。
まとめ
権利関係では、永住権よりも帰化の方がメリットが大きいといえます。
だからと言って、永住権より帰化の方がおすすめできるとは断定できません。外国人のなかには、国籍を変えたくない方がいるほか、母国の国籍を保持することで、メリットを受ける方も多いためです。
いずれにせよ、日本での生活を永続的に行うために、帰化と永住権、どちらを選ぶかは重大な決断に相違ありません。後悔しないよう、慎重に決断されることをおすすめします。
記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁
2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応
講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師
運営HP
広島外国人ビザ相談センター
https://hiroshima-visa.link/
広島国際結婚&配偶者ビザ申請代行センター
https://eightlinks.link/marriage/
広島永住ビザ申請代行センター
https://hiroshima-visa.link/permanent/
広島外国人雇用&就労ビザ申請代行センター
https://eightlinks.link/work/
広島外国人会社設立&経営管理ビザ申請代行センター
https://hiroshima-visa.link/businessmanagement/
広島帰化申請代行センター
https://hiroshima-visa.link/naturalization/
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