韓国人が日本に帰化するまでの流れとは?必要書類や注意点も解説!

日本と韓国は地理的に近いこともあり、日本には2024年末時点で40万9,238人の韓国籍の在留資格者がいます。
韓国籍の在留資格者のうち、中長期で滞在する方の多くが望んでいるのが、永住許可か、帰化許可です。
一方で、帰化申請に先立って必要な韓国書類には取得が難しいものもあり、帰化申請に二の足を踏んでいる方が少なくありません。
そこで、本記事では、韓国人が日本に帰化するまでの流れや韓国籍の申請者自らが取り寄せる必要がある種類について解説します。日本に帰化する際の注意点も解説するため、参考にしてください。
韓国人の日本への帰化申請の現状
法務省民事局が発表する統計によれば、過去3年の韓国・朝鮮人の帰化許可者数は次のとおりです。
2022年 | 2023年 | 2024年 | |
韓国・朝鮮 | 2,663人 | 2,807人 | 2,283人 |
出典:法務省民事局「国籍別帰化許可者数」
表からわかるように、日本では毎年、二千人超の韓国・朝鮮人が帰化していることがわかります。
なお、国籍別帰化許可数は韓国・朝鮮人と中国人が圧倒的に多く、この2国が毎年1位の座を争っています。
韓国人が日本に帰化するまでの流れ
韓国人が日本に帰化する際の流れは次のとおりです。
- 住所地を管轄する法務局に相談する
- 必要書類の収集・作成
- 法務局に帰化申請書類を提出
- 法務局での審査面接・必要に応じた追加書類の提出
- 結果通知
- 帰化許可後の手続き
日本に帰化するまでの流れは他国の方とほぼ変わりません。それでも、必要書類の入手先や帰化許可後の手続きが異なるため、参考にしてください。
住所地を管轄する法務局に相談する
まずは住所地を管轄する法務局に出向き、帰化に関する相談をします。
帰化に関する相談では、相談員が申請希望者の出生地や国籍、親族関係、職業、過去の法令違反歴などについてヒアリングするため、事実関係を正確に説明しましょう。
ヒアリングを通じて、申請希望者が帰化申請の条件を満たしていると判断した場合、相談員が、帰化申請書類一式の用紙を渡してくれます。
必要書類の収集・作成
帰化申請書類の一式を受け取った後は、提出を指示された必要書類の収集・作成を進めていきます。
帰化申請者が自分で作成する必要がある書類については、「帰化申請の必要書類とは?自己作成書類・取り寄せ書類別に解説!」で解説しているため、参考にしてください。
法務局に帰化申請書類を提出
必要書類の収集・作成ができたら、住所地を管轄する法務局に再度出向き、帰化申請書類を提出してください。
書類に不備がなければ、帰化申請が受理され、正式に受付が完了します。受付が完了すると、連絡票と呼ばれる紙が交付されます。連絡票には、受付番号や担当官の氏名、帰化申請後の注意事項が記載されているため、申請手続きが終わるまで持っておきましょう。
なお、担当官による窓口での書類チェックに際し、不備があると、再提出を求められる場合があります。いわゆる「補正」にかかる負担は大きいため、法務局に出向く前に提出書類のチェックを怠らないようにしましょう。
法務局での審査面接・必要に応じた追加書類の提出
帰化申請が受理されると、法務局による審査が始まります。
審査が始まってから2〜3カ月後に、法務局の担当官から面接のスケジュールを確認する連絡が入ります。その後、指定された日時に管轄の法務局に出向き、面接審査を受けなければなりません。
面接審査で聞かれる内容は人によって異なりますが、身分関係や仕事内容、日本に居住する意思の確認などを聞かれるケースが多いとされます。特別永住者以外の在留資格者に対しては、簡易な日本語テストが実施される場合もあります。
面接審査の終了後は、提出書類や面接審査でのヒアリング内容が法務省(本省)に送られます。結果通知が来るまでの間も、申請が取り消しとならないよう、納税の遅延や交通違反などに注意してください。
結果通知
法務省(本省)での最終審査と法務大臣決裁が終了した後、帰化が許可された場合は官報での告示と管轄の法務局から送られてくる通知書を通じて、知らされます。
許可連絡を受ける際には、「帰化者の身分証明書」の交付日も指定されます。
一方、帰化が不許可となった場合は、管轄の法務局から送られてくる通知書でのみ知らされます。
帰化許可後の手続き
法務局から帰化者の身分証明書が発行されたら、帰化者が新しく定めた本籍地または所在地の市区町村役場で帰化届書と帰化者の身分証明書を提出しましょう。
帰化届の届出期日については、官報の告示日から、告示日を含めて1カ月以内となっています。届出遅れがないよう注意してください。
帰化届を市区町村役場に提出すると、自動的に新戸籍・新住民票が作成されます。新戸籍については提出後1週間から10日間前後で、取得可能です。
帰化届の提出後は、住居地を管轄する地方出入国在留管理局に在留カードを返納しなければなりません。
また、元韓国籍の帰化者には、韓国の法律に基づき、管轄の韓国領事館に国籍喪失届を提出する義務があります。国籍喪失届を提出しなかった方への罰則はないものの、韓国側での職権による国籍喪失処理が確実にしてもらえる保証はありません。そのため、国籍喪失届は韓国領事館に必ず提出しましょう。
韓国人が日本の帰化申請書に添付する必要がある書類
韓国人が日本の帰化申請書に添付する必要がある書類は次のとおりです。
国籍証明書 身分関係を証する書面 居住歴を証する書面 運転記録証明書 資産・収入に関する各種証明書 納税に関する各種証明書 社会保険の納付証明書 その他の書類 |
出典:東京法務局「帰化許可申請書に添付する書類(韓国籍の方)」
これらの書類は、韓国人の申請者が自ら取り寄せる必要がある書面です。いずれも申請時に欠けてはならないため、ご留意ください。
なお、申請者が自分で作成する書類は国籍を問わず、共通しています。
国籍証明書
国籍証明書は、次の書類を用意する必要があります。
- 申請者の基本証明書(詳細)
- パスポートの写し
申請者の基本証明書を用意できない場合は、家族関係登録簿作成前の韓国・朝鮮の戸(除)籍謄本を提出する必要があります。
家族関係登録簿作成前の韓国・朝鮮の戸(除)籍謄本も提出できない場合は、申請者にかかる身分事項の記載のある日本の戸(除)籍謄本、戸籍届書の記載事項証明書などを提出してください。
パスポート(旅券)については、所持しているすべてのパスポートの写しを提出する必要があります。
身分関係を証する書面
身分関係を証する書面では、次のような書類が必要です。
- 申請者に関する書面
- 家族関係証明書
- 婚姻関係証明書
- 入養関係証明書
- 親養子入養証明書
- 申請者の父母に関する関する書類
- 父および母の家族関係証明書
- 母の婚姻関係証明書
- 韓国の除籍謄本
- 父母が婚姻して以降の除籍謄本
- 母が懐胎可能年齢(おおむね10歳ごろ)に達して以降のすべての除籍謄本
- その他の書類
- 日本の戸籍(除籍)謄本(全部事項証明書)
次のケースに当てはまる場合は、日本国民である方、日本国民であった方の日本の戸籍(除籍)謄本(全部事項証明書)を持参する必要があります。
- 申請者の配偶者(前配偶者、内縁関係を含む)・子(養子)・父母(養父母)が日本国民であるとき(養父母の場合は、養子縁組事項の記載があるものを含む)
- 申請者が日本国民であった方の子(養子)であるとき(ただし、日本国籍喪失事項の記載があるもの)
- 申請者が日本の国籍を失った方であるとき(ただし、日本国籍喪失事項の記載があるもの)
- 申請者の父母・兄弟姉妹・子のなかで帰化または国籍取得をした方がいるとき(ただし、帰化事項または国籍取得事項の記載があるもの)
- 届書の記載事項証明書
日本の市区町村役場に、出生届、死亡届、婚姻届、離婚届、親権者変更届、養子縁組および認知届を届け出しているときは、各届書の記載事項証明書を取得のうえ、提出する必要があります。
- 確定証明書のついた審判書または判決書の謄本
日本または韓国(外国)の裁判所で、離婚、親権、養子縁組、認知などについて裁判をしている場合は、確定証明書のついた審判書または判決書の謄本を持参する必要があります。
居住歴を証する書面
居住歴を証する書面では、氏名と生年月日、性別、在留資格、在留期間、在留期間の満了日、在留カード番号(特別永住者証明書番号を含む)および法定住所期間内の居住歴が記載された住民票の写しを持参する必要があります。
提出する住民票の写しについては、個人番号、住民票コードが記載されていないものを用意しなければなりません。
このほか、住民票に法定住所期間の居住歴が記載されていない場合は法定住所期間の居住歴が記載された除住民票を持参する必要があります。
運転記録証明書
自動車運転免許証を持っている方は、自動車安全運転センターが発行した過去5年間の運転記録証明書を提出しなければなりません。
また、自動車運転免許証が失効した方、取り消された方は、運転免許経歴証明書を提出してください。
資産・収入に関する各種証明書
資産・収入に関する各種証明書では、次の書類を提出する必要があります。
- 収入関係
- 給与所得者の方
- 在勤(在職)証明書
- 直近1カ月の給与証明書または給与明細書(会社名の記載または押印があるもの)
- 個人事業経営者の方
- 許認可証明書(例:営業許可書、各種免許書書類など)
- 会社等法人の役員の方
- 会社等法人の登記事項証明書
- 許認可証明書(例:営業許可書、各種免許書書類など)
- 資産関係
- 不動産を所有している方
- 土地・建物登記事項証明書(戸建て)
- 区分建物登記事項証明書(マンション)
- 預貯金を有している方
- 預貯金現在高証明書
- 預貯金通帳の写し(未使用ページは除く)
- ウェブ通帳を印刷したもの
- その他の書類
- 不動産を借りている方
- 不動産賃貸借契約書の写しまたは入居決定通知書の写し
- 国外居住親族を扶養している方
- 国外居住親族への送金関係書類(例:海外送金依頼書の控えなど)
- 年金を受給している方
- 年金受給を証明する書面(例:年金額改定通知書、年金振込通知書、公的年金などの源泉徴収票)
- 各種手当を受給している方
- 児童手当・育休手当などの受給を証明する書面
納税に関する各種証明書
課税・納税を証明する書類は、給与所得者または事業経営者によって異なります。必要書類を収集する際は、下記表を参考にしてください。
提出書類の種類 | 請求先 | 形態 | |||||
給与所得者 | 事業経営者 | その他の人 | |||||
源泉徴収されている人 | 源泉徴収されていない確定申告をしている人 | 2カ所以上から給与を得ている人、給与が年間で2,000万円を超える人 | 法人 (取締役・監査役を含む) | 個人 | |||
源泉徴収票 | 勤 | ◎ | ◎ | ◎ | |||
都道府県、市区町村民税の課税証明書または非課税証明書(総所得金額の記載のあるもの) | 都市 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
都道府県・市区町村民税の納税証明書 | 都市 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ||
法人都道府県民税の納税証明書 | 都 | ◎ | |||||
法人市区町村民税の納税証明書 | 市 | ◎ | |||||
事業税の納税証明書 | 都 | ◎ | ◎ | ||||
法人税の納税証明書(その1、その2) | 税 | ◎ | |||||
個人の所得税の納税証明書(その1、その2) | 税 | ◎ | ◎ | ◎ | |||
消費税の納税証明書 | 税 | ◎ | ◎ | ||||
確定申告書の控え(別表、決算報告書、青色申告決算書、収支内訳書) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |||
源泉徴収簿の写しおよび納付書の写し | 勤 | ー | ◎ | ー | ー |
出典:法務省「帰化許可申請のてびき」
*請求先欄は、「勤」は勤務先、「市」は市区町村役場、「都」は都道府県税事務所、「税」は税務署を表します。
社会保険の納付証明書
社会保険の納付証明書では、次の書類を用意する必要があります。
- 健康保険被保険者証または組合員証(表・裏)の写し
健康保険被保険者証は世帯全員分のものを持参しなければなりません。
もし健康保険被保険者証または組合員証の写しを用意できない場合は、資格確認書もしくはマイナポータル内の健康保険証の資格情報または医療保険の資格情報を印刷のうえ、持参する必要があります。
- 社会保険料の納付証明書
- 公的年金保険料の納付証明書(直近1年分)
ねんきん定期便の写しや年金保険料の領収書の写しなど
- 国民健康保険料の納付証明書(直近1年分)
国民年金保険料納付証明書や国民年金保険料の領収書の写しなど
- 後期高齢者医療保険料の納付証明書(直近1年分)
後期高齢者医療保険料納付証明書や後期高齢者医療保険料の領収書の写しなど
- 介護保険料の納付証明書(直近1年分)
介護保険料納付証明書や介護保険料領収書など
- 厚生年金保険法・健康保険法の適用事業所の事業主にかかる納付証明書(直近1年分)
年金保険料や公的医療保険料の領収書の写しなど
①、③、④については、申請者および配偶者の各納付証明書または申請者が世帯主であって同一世帯に各被保険者(公的年金保険は第1号被保険者、後期高齢者医療保険は75歳以上の方、介護保険は65歳以上の方)がいる場合は、当該被保険者分の各納付証明書を持参しなければなりません。
また、②については、申請者が世帯主であって同一世帯に被保険者がいる場合は、申請者(世帯主)の納付証明書を持参してください。
その他の書類
その他の書類は、次の書類を用意してください。
- 在学を証する書面
- 最終学歴を証する書面
- 技能・資格を証する書面
日本語能力試験を受験された方は成績証明書を持参してください。
- 帰化相談質問票
初回相談時までに記載のうえ、持参する必要があります。
- 帰化相談必要書類の確認表(韓国)
初回相談時までに、集めた書類に丸を付けたうえで、持参する必要があります。
韓国人が日本に帰化する際の注意点
韓国人が日本に帰化する際の注意点には、次の2つがあります。
- 韓国書類を請求する際は登録基準地(本籍地)が必要
- 母親の除籍謄本の取得難易度は高い
注意点に留意すれば、帰化申請に際して補正が発生する頻度が少なくなります。ぜひ参考にしてください。
韓国書類を請求する際は登録基準地(本籍地)が必要
韓国書類を取り寄せるためには、登録基準地(本籍地)を把握しなければなりません。
登録基準地は、本籍に対応する個人情報の一つです。韓国の除籍謄本や各種証明書などを発行する際に必要となります。登録基準地がわからなければ、韓国の官公庁が発行する書面の取り寄せは不可能と言っても過言ではありません。
登録基準地が判然としない場合は、出入国在留管理庁に外国人登録原票を開示請求してください。外国人登録原票には、本籍地の記載があるためです。
過去に韓国総領事館に在外国民登録をした方は在外国民登録簿、ご両親が日本で結婚した場合はご両親の「婚姻届出記載事項証明書」の発給・発行を請求するという方法もあります。状況に応じて、適切な手段を取ってください。
母親の除籍謄本の取得難易度は高い
母親の除籍謄本は韓国書類を収集するうえで最難関とされています。韓国戸籍は筆頭者(戸主)を中心とした家単位の制度が残ることから、母親の除籍謄本は結婚や離婚といった変更事項により増えやすいという構造になっているためです。
韓国籍の母親の除籍謄本は生涯で平均2〜3回、変動が生じているといわれています。したがって、日本に帰化申請する韓国人は、15歳ごろから現在に至る母親の除籍謄本を3〜4部ほど取得しなければなりません。
また、韓国の除籍謄本はすべてハングルで発行されるほか、作成日が古ければ古いほど、手書きで作成するものが多いことから、読み取りが難しい傾向にあります。このように、韓国の除籍謄本は取得難易度が高いため、専門家に依頼するとよいでしょう。
まとめ
韓国人による帰化申請は、一部韓国書類の取得が難しいことから、比較的難易度が高いとされます。
それだけに、日本に在留する韓国人で帰化取得を検討されている方は、行政書士をはじめとした専門家の力を借りることをおすすめします。
専門家の力を借りても、確実に帰化の許可が下りる保証はありません。それでも、申請手続きがスムーズに進む可能性が高くなるでしょう。
記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁
2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応
講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師
運営HP
広島外国人ビザ相談センター
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広島国際結婚&配偶者ビザ申請代行センター
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広島外国人会社設立&経営管理ビザ申請代行センター
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記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁
2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所 「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし年間500件以上の相談に対応
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中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師
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