永住権を取得するための3つの条件とは?10年以上の在留が不要となる特例も解説!

永住権とは、外国人が在留期間の制限を受けることなく、滞在国に永久に住める権利です。日本で永住権を取得するとは、在留資格の「永住者」を取得することを意味します。
永住権取得についての最終的な許可・不許可の判断は、法務大臣の自由裁量に委ねられており、明確な基準が定められていません。それでも、法務省は、法律上の要件として、永住許可に関するガイドラインを定めています。
そこで、本記事では、法務省のガイドラインをもとに、永久権を取得するための3つの条件について解説します。10年以上の在留が不要となる特例についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
永住権を取得するための3つの条件
永住権を取得するための条件は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第22条の2第2項に基づき、次の3つが定められています。
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
それぞれ解説するため、参考にしてください。
① 素行が善良であること
1つ目の条件は、素行が良く、法律・法令の違反がないことです。
この条件では、申請者が法律を遵守し、日常生活で住民として社会的に非難されることのない生活を送っているかどうかが審査されます。
道路交通法におけるスピード違反や器物損壊罪といった軽微な違反については、素行不良とみなされにくいとされます。とはいえ、これらの軽犯罪も厳密には前科にあたるため、繰り返せば、不許可に影響する可能性が高いといえるでしょう。
② 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
2つ目の条件は、日本で暮らしていくための収入や、スキルがあることです。
この条件では、日常生活で生活保護をはじめとした公共の負担になっておらず、申請者の職業または収入レベルなどから将来にわたって安定した生活が見込まれるかどうかが審査されます。
課税証明書や納税証明書をもとに判断される収入条件については基準額が明確に公表されていませんが、最低でも年収300万円以上を5年連続で満たす必要があります。つまり、永住許可の申請時には、 申請時を起算点として直近5年分の課税証明書を取得しなければなりません。
ただし、収入条件については世帯単位で判定されます。そのため、申請者が日本人の配偶者など身分系の在留資格を所有しており、配偶者や同居人の収入が十分である場合は、申請者の収入が少なくても問題ないとされます。
③ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
3つ目の条件は、申請者の永住が日本の利益になることです(国益適合要件)。具体的には、次の4つのポイントから構成されています。
ア)原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)または居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。 イ)罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理および難民認定法に定める届出といった公的義務を適正に履行していること ウ)現に有している在留資格について、出入国管理および難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。 エ)公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと |
出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」
ここからは、それぞれのポイントについて説明します。
〈アについて〉
「居住要件」と呼ばれるアについては、原則として、第一に「永住者」以外の在留資格で、日本に10年以上在留し続ける必要があります。
さらに、トータルの在留期間のうち、5年間は、「技能実習」と「特定技能1号」を除く就労資格(技術・人文知識・国際業務ビザなど)か、居住資格(配偶者ビザ・定住者ビザなど)で滞在しなければなりません。
〈イについて〉
イについては、罰金刑や懲役刑などの前歴、社会保険料や税金の未納・滞納、各種届出の遅延などがないことが求められます。
在留資格のうち、日本人・永住者の配偶者等などは素行善良要件が免除されるものの、この国益適合要件は課されます。そのため、申請人に前科前歴や税金の未納・滞納といった公的義務違反がある場合は、素行善良要件が免除されても、法務大臣が不許可を下す可能性があるため、注意が必要です。
〈ウについて〉
ウについては、保有する在留資格のなかで、最も長い在留期間を与えられている必要があります※現状では3年以上の在留期間が必要です。
在留資格別の在留期間については、出入国在留管理庁の「在留資格一覧表」で公開されているため、ご参照ください。
〈エについて〉
エについては、申請者本人が感染症に罹患していない、薬物中毒に陥っていないなど、公衆衛生上の問題がないことが求められます。
これら(ア)~(エ)の条件を満たす場合は永住許可を申請できます。審査を経て、法務大臣の許可が下りると、在留資格「永住者」が取得可能です。
10年以上の在留が不要となる特例とは?
永住許可を申請するためには10年以上の在留が必要ですが、次の要件に当てはまる場合は特例が適用されます。特例が適用されると、許可に必要な在留期間を短縮可能です。
特例① 日本人、永住者および特別永住者の配偶者またはその実子
日本人、永住者および特別永住者の配偶者の場合は、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、引き続き1年以上日本に住んでいれば、永住許可を申請できます。たとえば、申請者のビザが就労ビザだとしても、日本人と結婚していれば、この特例が適用されます。
ただし、婚姻して3年以上経過していても、この期間中に別居していれば、「実体を伴った婚姻生活」を送っていたとはみなされません。つまり、特例の適用を受けるために、婚姻生活を偽装するような行為は許されないというわけです。
また、日本人、永住者および特別永住者の実子の場合は、1年以上日本に在留していれば永住申請が可能です。ここでいう実施について年齢制限はありませんが、18歳以上の場合は、学校に通っているか、仕事に就いていることが求められます。
特例② 在留資格が定住者の方
定住者の在留資格で5年以上継続して日本に在留している方は、永住許可を申請できます。
この特例要件では、必ずしも定住者単体での在留期間が5年以上である必要はありません。たとえば、「日本人の配偶者等」のビザを取得していたものの、離婚によって定住者ビザに変更した場合、両者のビザの在留期間が計5年以上であれば、特例が適用されます。
特例③ 難民認定を受けた方
難民認定または、補完的保護対象者の認定を受けた方は認定後5年以上日本に在留していれば、永住許可を申請できます。
難民認定審査の平均処理期間は32.2カ月(2021年)と長いのですが、審査期間中の在留については、特例の申請に必要な在留とみなされません。
特例④ 特定の分野で日本に貢献したと認められる方
外交、社会、経済、文化などの分野で日本への貢献があると認められる方は、日本に5年以上在留していれば永住許可を申請できます。
この特例の基準について明確な基準はありませんが、次のような方が対象として挙げられます。
- ノーベル賞受賞者
- 上場企業の役員として経営に携わり、経済の発展に貢献した方
- 芸術分野で権威ある賞を受賞した方
- 日本代表としてオリンピックなどの国際スポーツ大会で上位入省した方
特例⑤ 特定区域内にある機関で、日本に貢献したと認められる方
地域再生計画の区域内に所在する公私の機関で、特定活動告示36号または第37号のいずれかに該当する活動をし、当該活動により日本への貢献があると認められる方は、3年以上日本に在留していれば、永住許可が申請できます。
在留資格の特定活動とは、ほかの在留資格に該当しない活動を行う外国人に付与される特別な在留資格です。特例の対象になる特定活動告示36号(特定研究等活動)は「研究者・教育者あるいは、研究・教育に関する経営者」、特定活動告示37号(特定情報処理活動)は「情報技術処理者」として活動する方が該当します。
特例⑥ 高度専門職省令のポイント計算で70点以上の方
この特例要件では、次のいずれかに該当する必要があります。
ア)「高度人材外国人」として必要な点数を維持して3年以上継続して日本に在留していること イ)永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算をした場合に70点以上の点数を有していたことが認められ、3年以上継続して70点以上の点数を有し日本に在留していること |
出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」
高度外国人材とは、専門的な技術力や知識を持った外国人材です。具体的には次のような人材が想定されます。
日本国内または海外の大学・大学院卒業などの最終学歴を有し、企業で、技術者、法律・会計などの専門職や営業職、経営などに従事する外国人 在留資格では、「高度専門職」や、「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「法律・会計業務」などの「専門的・技術的分野」に該当する外国人 |
出典:経済産業省近畿経済産業局「高度外国人材等」
一方、イについては、高度外国人材を対象にした出入国在留管理上の優遇措置「高度人材ポイント制」に基づく基準です。同制度に基づき、学歴や職歴、年収などの項目ごとに設けられたポイントで、3年以上継続して70点以上の点数を獲得した方は、永住許可を申請できます。
ポイント計算の詳細については、出入国在留管理庁が公開している「ポイント計算表」をご参照ください。
特例⑦ 高度専門職省令のポイント計算で80点以上の方
この特例要件では、次のいずれかに該当する必要があります。
ア)「高度人材外国人」として必要な点数を維持して1年以上継続して日本に在留していること イ)永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められ、1年以上継続して80点以上の点数を有し日本に在留していること |
出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」
この特例要件は、上記⑥と趣旨が同じで、高度人材ポイント制で、80点以上の方は永住権の特例要件に該当します。
特例⑧ 特別高度人材省令に基準に該当する方
この特例要件では、次のいずれかに該当する必要があります。
ア)「特別高度人材」として1年以上継続して日本に在留していること イ)1年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として特別高度人材省令に規定する基準に該当することが認められること |
出典:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」
特別高度人材は学歴や職歴、年収などの要件で、高い基準を有する外国人材です。高度学術研究活動に従事する大学教授や研究者などで、修士号以上、年収2,000万円以上といった要件を満たした場合に、特別高度人材として認められます。
詳細については、出入国在留管理庁の「特別高度人材制度(J-Skip)」をご参照ください。
永住権の許可申請の審査で厳しくチェックされやすい項目
永住権の許可申請の審査で厳しくチェックされやすい項目には、次の3つがあります。
- 納税義務の履行
- 社会保険の支払い状況
- 犯罪歴・違反歴の有無
それぞれ解説するため、参考にしてください。
納税義務の履行
納税義務の履行については、永住許可の申請で最も厳格に審査される要件の1つです。特に厳格に審査される税目は、住民税だとされます。
住民税の納税審査に関しては、未納がないことを前提に、納期限に遅れることなく支払っているかどうかも審査されます。納期限を守っていなかった場合、不許可リスクが極めて高くなるため、ご注意ください。
社会保険の支払い状況
国民年金や国民健康保険といった社会保険の支払い状況も審査対象です。
社会保険の支払い状況の審査については、税金と同様に未納はもちろん、遅延納付に関しても厳格に審査されます。遅延納付は自営業者などで国民健康保険・国民年金に加入している第1号被保険者で頻発しやすいため、注意が必要です。
犯罪歴・違反歴の有無
刑から一定の期間(懲役刑は刑から10年、罰金刑は刑から5年)が経てば、永住許可が下りる可能性があるものの、犯罪歴がある方はない方に比べて審査が厳しくなります。
そのため、過去に罰金刑や犯罪歴がある場合は、その詳細を申請時に明示し、しんしに改善に努めたことを説明しましょう。また、軽微な違反であっても、隠したり、言い訳したりせず、違反理由と反省の姿勢を明示することが重要です。
まとめ
外国人が永住権を取得するためには、素行善良要件・独立生計要件・国益適合要件の3つの条件を満たさなければなりません。
これらの条件についてはある程度基準が明確にされているものの、実際の審査では、申請者の生活実態といった定性的な側面が許可・不許可に大きな影響を及ぼします。定性的な側面は申請者単独での判断が難しい部分もあるため、行政書士をはじめとする在留許可申請の専門家に相談することをおすすめします。
記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁
2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応
講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師
運営HP
広島外国人ビザ相談センター
https://hiroshima-visa.link/
広島国際結婚&配偶者ビザ申請代行センター
https://eightlinks.link/marriage/
広島永住ビザ申請代行センター
https://hiroshima-visa.link/permanent/
広島外国人雇用&就労ビザ申請代行センター
https://eightlinks.link/work/
広島外国人会社設立&経営管理ビザ申請代行センター
https://hiroshima-visa.link/businessmanagement/
広島帰化申請代行センター
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Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁
2016年9月〜
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専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし年間500件以上の相談に対応
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