日本人の配偶者から永住権を取得するにはどうすればいい?メリットや要件も解説!

日本人の配偶者等の在留資格者は、永住権(永住ビザ)を取得するための要件が大きく緩和されています。

そのため、在留資格者のなかには、永住ビザの取得を目指す方も少なくありません。

しかし、永住ビザ取得に係る要件や制度について理解しないまま永住ビザを申請し、不許可になる事例が後を絶ちません。

そこで、本記事では、日本人の配偶者等から永住ビザを取得する際に課される要件や、申請時に必要な書類について解説します。日本人の配偶者等から永住ビザを取得するメリットについても解説するため、参考にしてください。

日本人の配偶者等とは?

日本人の配偶者等は、日本人の配偶者もしくは特別養子または日本人の子として出生した方に与えられる在留資格です。具体的には、日本人の夫または妻、実子、特別養子などが該当します。

日本人の配偶者等における「配偶者」は、現に婚姻中の者を指し、日本人の夫・妻と死別した方や離婚した方は含まれません。また、法律上の婚姻関係を成立させている必要があるため、婚約者や内縁関係・事実婚の相手方も該当しません。

日本人の配偶者等には、職種や就労時間などの制限がありません。そのため、日本人の配偶者等の在留資格者は取得後に日本人と同じように働けます。もちろん、転職も自由です。

また、家族滞在ビザと異なり、日本人の配偶者等は、必ずしも日本人の夫、妻の扶養を受ける必要はありません。そのため、日本人の夫が専業主婦で外国人の妻(申請人)が就労し、家庭の生計を支えている場合でも、日本人の配偶者等を取得できます。

日本人の配偶者等からの永住権申請

日本人の配偶者等の在留資格者のうち、婚姻実態のある結婚生活を3年以上送り、日本に1年以上在留している方は、永住許可申請の特例要件が適用されます。そのため、入管法上の要件とされる10年間の在留期間がなくとも永住許可を申請可能です。

また日本人の実子または特別養子のうち、日本に引き続き1年以上在留している方も特例が適用されます。

日本人の配偶者等から永住権を取得するメリットとは?

日本人の配偶者から永住ビザを取得するメリットには、次の4つがあります。

  • 在留期限が無期限になる
  • 婚姻状況が変わっても在留資格が失われない
  • 外国人としての身分を保ったまま日本に無期限滞在できる
  • 社会的な信用度が向上する

これらのメリットを把握しておくと、永住ビザを取得したい気持ちが高まるため、ぜひ参考にしてください。

在留期限が無期限になる

永住ビザを取得すると、在留期限が無期限になります。

日本人の配偶者等は最長でも5年という在留期間が定められており、引き続き在留するには期限内に更新手続きが必要です。更新手続きを怠れば、本国に帰国しなければなりません。

一方、永住ビザを取得すれば、在留期限が無期限になるため、煩雑な更新手続きから解放されます。在日外国人にとって死活問題の1つである、ビザ更新の不安からの解放は、大きなメリットといえるでしょう。

ただし、永住許可後に交付される在留カードには、7年の有効期限があります。有効期限が切れた在留カードを所有していると、不法滞在とみなされ、刑事罰に処される可能性があります。

在留カードの有効期限が切れても、在留資格は失効しません。しかし、刑事罰に処されるリスクを踏まえると、在留カードの更新手続きは、忘れずにする必要があるでしょう。

婚姻状況が変わっても在留資格が失われない

永住ビザを取得すると、配偶者との離婚や死別などによって婚姻状況が変わっても在留資格に影響がありません。つまり、日本人の配偶者であるかどうかにかかわらず、日本に滞在可能です。

一方、日本人の配偶者等の在留資格者は、日本人の配偶者との婚姻関係の維持が要件となるため、配偶者と死別や離婚した場合に在留資格の変更が必要です。在留資格の変更時に、もしほかの在留資格の要件を満たせなければ、帰国しなければなりません。

以上により、永住ビザはほかの在留資格と比べて身分の安定性に優れた在留資格だといえます。

外国人としての身分を保ったまま日本に無期限滞在できる

永住ビザを取得すると、国籍を変更せず、外国人としての身分を保ったまま日本での無期限滞在が可能になります。そのため、戦争の勃発や親の介護といった事情により母国に帰らざるを得ない事情ができても手続きが楽です。

永住ビザの取得に対し、外国籍を日本国籍に変更することは、「帰化」と言います。帰化すると、永住権だけでなく、社会保障や政治参画といった面で日本人と同様の権利が与えられます。

しかし、帰化すると、在留資格制度からは外れ、母国の国籍を手放さなければなりません。結果、母国へ帰国する際にビザが必要になったり、母国での滞在日数や活動内容が制限されたりします。

国によっては元の外国籍を取り戻すのが難しい国もあるため、それらの事情を踏まえて国籍が変わらない永住ビザの取得を選ぶ人も少なくありません。

社会的な信用度が向上する

永住ビザを取得すると、社会的な信用度が向上します。結果、就職や転職が有利になったり、金融機関から住宅ローンや事業資金を借りやすくなったりします。不動産の賃貸もほかの在留資格と比べて容易に契約可能です。

一方、日本人の配偶者等の在留資格者は、永住ビザの取得者と比べて、社会的信用度が高くありません。そのため、住宅ローンや事業者向けローンを組んだり、クレジットカードを発行したりするのが難しいとされます。

日本人の配偶者等から永住権を取得する際に課される要件

日本人の配偶者等の在留資格者は永住ビザ取得に必要な要件である素行善良要件と独立生計要件が免除されます。

そのため、日本人の配偶者等から永住ビザを取得する際に求められる要件は、次の2つになります。

  1. その者の永住が日本の利益になると認められること(国益適合要件)
  2. 身元保証人がいること

ここからは、それぞれの要件について詳しく解説するため、参考にしてください。

要件① その者の永住が日本の利益になると認められること(国益適合要件)

①日本に1年以上(婚姻から3年以上経過)引き続き在留していること

日本継続在留要件と呼ばれるこの要件では、日本人と結婚した外国配偶者は、実態を伴う婚姻を3年以上継続させ、かつ、引き続き1年以上日本に在留している必要があります。

これは、日本人との婚姻から3年が経過していれば、日本での居住は1年でもよいという意味です。たとえば、韓国籍の方が韓国で日本人と結婚して現地で2年暮らした後、来日して1年経っている場合などが該当します。

この要件を充足するうえでは、実体法上の身分関係として、日本人の配偶者であればよく、「日本人の配偶者等」の在留資格者であることは求められません。したがって、高度専門職や経営・管理といった就労資格で日本に滞在している方も対象になります。

なお、日本人の実子または特別養子の方は、引き続き1年以上日本に在留していることが必要です。ただし、普通養子の方はこの要件緩和に当てはまらないため、引き続き10年在留していることが求められます。

②納税義務等公的義務を適正に履行していること

この要件では、ほかの在留資格者と同じように、住民税や国民健康保険税、国民年金などが適正に支払われていることが必要です。

この要件を充足するためには、単に税金や年金を払っているだけでは足りません。納期限を守って滞納や遅延などを起こしていないかもチェックされます。過去の納付履歴に問題があれば、不許可になる可能性が高いといえるでしょう。

そのため、会社員のように給与から年金や税金が天引きされない、フリーランスや個人事業主、企業経営者の方は、確実に納付できているか注意が必要です。

③現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること

永住ビザの申請では、在留資格の最長の在留期間を有していることが原則です。

しかし、日本人の配偶者等の在留資格者は在留期間が3年以上であれば、入国管理局に最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱ってもらえます。

④公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

この要件では、感染症予防法第6条に規定されるエボラ出血熱やペスト、結核などの感染症に罹患していないことや、麻薬や大麻、覚醒剤などの慢性中毒者でないことが求められます。

また、住環境が地域住民から役所のクレームがいくようなゴミ屋敷になっていないかも精査されます。

⑤著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること

免除されている素行善良要件で本来審査される要件ですが、国益適合要件でも審査されます。

具体的に求められる要件については、まず日本の法令に違反して懲役・禁錮や罰金に処されていないことがあります。ただし、懲役と禁錮の場合は刑務所から出所してから10年を経過(執行猶予の場合は執行猶予期間が満了してから5年を経過)していれば、処罰者として取り扱われません。同様に、罰金・拘留・科料の場合は、支払い終えてから5年を経過していれば、処罰者ではないとみなされます。

また、20歳未満の方は、少年法24条の保護処分に基づく保護処分が継続中でないことが求められます。

他方、この要件では、懲役・禁錮・罰金・拘留・科料に該当しないような軽微な法令違反を繰り返していないかもチェックされます。具体的には、交通違反を繰り返していなかったり、街宣活動で地域社会に迷惑をかけていなかったりすることが必要です。

要件② 身元保証人がいること

永住ビザの申請では、安定的な収入があり、納税義務を適法に果たしている身元保証人を用意する必要があります。

身元保証人は日本人または永住ビザを持つ外国人である必要がありますが、日本人の配偶者等の在留資格者は、日本人配偶者や日本人の親に身元保証人を依頼することになります。日本人の配偶者や親に身元保証人になってもらえない場合は実体の婚姻関係を形成していると認められず、不許可になる可能性が高くなります。

日本人の配偶者から永住権を取得するために必要な書類

日本人の配偶者から永住ビザを取得するために必要な書類は、次のとおりです。

永住許可申請書 写真(縦4㎝×横3㎝) 配偶者の戸籍謄本 申請人を含む家族全員の住民票 ①在職証明書、②確定申告書控えの写し、③営業許可書の写し、④職業にかかる説明書およびその立証資料、のいずれかの書類 直近3年分の住民税の課税(または非課税)証明書 直近3年分の住民税の納税証明書 直近3年分の住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写しなど) ①源泉所得税・復興特別所得税、②申告所得税・復興特別所得税、③消費税・地方消費税、④相続税、⑤贈与税、のすべての情報が記載された書類 直近2年分のねんきん定期便またはネットの「各月の年金記録」の印刷画面 直近2年分の国民年金保険料領収証書(写し) 健康保険被保険者証(写し) 国民健康保険被保険者証(写し) 直近2年分の国民健康保険料(税)納付証明書 直近2年分の国民健康保険料(税)領収証書(写し) 直近2年分の健康保険・厚生年金保険料領収書(写し) 直近2年分の社会保険料納付証明書または社会保険料納入確認(申請)書 身元保証書 身元保証書にかかる資料 了解書

出典:出入国在留管理庁「永住許可申請にかかる提出書類一覧表(概要版(就労資格以外))

戸籍や婚姻証明関連では、日本人の実子は日本人親の戸籍謄本、永住者・特別永住者の配偶者は配偶者との婚姻証明書等、永住者・特別永住者の実子は出生証明書等の提出が必要です。

日本人の配偶者等が永住権を許可されたらどうなる?

日本人の配偶者等が永住ビザを許可されると、通常の永住ビザ申請と同じように、在留資格の欄に「永住者」と記載された在留カードが交付されます。在留カードの受け取り後は、永住者として日本に在留可能です。

まとめ

日本人の配偶者等の在留資格者は永住ビザ取得にかかる要件が緩和されていますが、審査の難易度はほかの在留資格者の場合と変わりません。同じように、審査に必要な必須書類のほかに、疎明資料や理由書といった任意書類を提出する必要があります。

任意書類については、配偶者である日本人が申請人のために作成するケースがありますが、制度の理解や証明の不足などにより、不許可となる事案が後を絶ちません。

そのため、日本人の配偶者等の在留資格者であっても、永住ビザの申請に際しては、行政書士をはじめとする法律の専門家に申請代行を依頼することをおすすめします。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

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