経営管理ビザの在留期間はどうやって決まる?

2023.05.30

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外国人が日本に滞在し続けるには、在留資格が必要となります。その中でも、日本で会社を新たに立ち上げて起業したり、日本企業の役員・幹部として関わったりするために必要なのが経営管理ビザです。

会社経営は長期的な視点に立って取り組まなければなりませんので、日本には数年単位で居住することが前提となるでしょう。ただし、経営管理ビザには期限が決められていて、その期限を超えて日本での在留を希望するなら、更新の手続きを行わなければなりません。

このページでは、経営管理ビザで認められている在留期間について解説していきます。

■経営管理ビザの在留期間は、比較的短め

経営管理ビザで認められる在留期間としては、原則的には「1年」「3年」「5年」が定められており、その他には「4ヶ月(起業準備)」というレアな在留期間も設定されています。新規で経営管理ビザが発行されるときは、「1年」の在留期間であることが多いです。そして、更新を重ねていくと「3年」「5年」と、より長期の在留期間が認められていきます。

1年間の在留期間が基本となっているのは、「会社経営」という比較的難しい目的をもって日本に居住するからでしょう。中小企業庁の調べによると、日本では起業から5年後にも存続している会社が、およそ4割しかないとされています。つまり、6割の会社は5年も続けられずに倒産や廃業を余儀なくされているのです。まして、母国から来日してビジネスをしようとする外国人であれば、日本人の好みや文化、商慣習などを理解し、慣れるのにも時間がかかってしまい、経営がなかなか軌道に乗らない難しさもあるはずです。

それで、出入国在留管理局は1年間という比較的短い期間で様子を見たいのかもしれません。初年度の業績をチェックすることにより、納税状況が良好で、事業が将来も継続し、拡大していく見込みがあれば、経営管理ビザの更新も許可されます。継続性や信頼性が高いビジネスの持ち主であれば、「3年」「5年」といった長期の在留期間も認められるでしょう。

■経営管理ビザの在留期間が定まる目安

原則的に1~5年の在留期間が定められている経営管理ビザですが、どのような外国人経営者であれば、どれだけの在留期間を認めるのか、その基準は公表されていません。しかし、行政書士としての経験を踏まえれば、次のような目安によって決まっていると考えられます。

経営管理ビザは、基本的に1年間の在留期間で始まります。ただし(例外的に)、ベンチャー企業のスタートアップ準備を進めるための日本滞在は、1年未満の在留期間(6ヶ月・4ヶ月・3ヶ月)となることもあります。スタートアップのために、準備期間が何年もかかる起業家も珍しくありませんが、本当に日本で起業するつもりがあるのか、それとも資金調達や人材確保などでどうしても時間がかかってしまうのか、更新の審査で見極めなければなりません。

真剣に起業するつもりがなく、ただビザがほしいだけの目的であれば、なるべく早くビザの更新を不許可にして帰国してもらわなければなりません。悪意を隠して、起業家に偽装して日本に滞在する外国人がいないとも断言できないからです。

その一方、起業家としての1年間の在留期間で、会社の初年度に安定した業績を上げていて、事業に将来性も見込めて、納税状況や素行も善良だと認められれば、ビザの更新が認められることはもちろん、新たな在留期間が「3年」や「5年」と延びる望みもあります。2期連続で黒字を出せば、更新時に在留期間が延びる確率も高いです。3年以上の在留期間が認められた外国人経営者は、日本の永住権を取得できる可能性もあります。

出入国在留管理局の立場としては、不正なビジネスを日本で行ったり、稼ぐだけ稼いで税金を納めなかったりする外国人の滞在を認めるわけにはいきません。また、日本で売れそうもない商品やサービスを販売していたり、無駄づかいが多くて事業を改善する努力を怠っていたりする外国人経営者にも、長々と日本に滞在してもらっては困るのです。

もし、2期連続で赤字を出すと、経営管理ビザの更新に黄信号が点灯するといわれます。つまり、更新が不許可になったとしてもおかしくありません。とはいえ、赤字が出てしまうのは売り上げ不振など経営者の手腕不足によるものばかりではないでしょう。社会的な不況が続いて、消費が冷え込んでしまえば、どうしても売上は伸ばしにくくなります。新型コロナウイルスの流行のように、思わぬ時代の変化に巻き込まれてしまうこともありえます。その場合は、事業計画書や業務改善説明書で、事情を具体的かつ説得力のある形で説明すれば、不利な状況を十分に挽回できます。

※場合によっては、公認会計士や中小企業診断士が作成した経営診断書の提出が必要となります。

裏を返せば、日本国内で手堅く順当にビジネスを進めて、納税などでも日本社会に貢献している外国人経営者は、出入国在留管理局の審査官にも信頼されます。よって、「3年」「5年」という比較的長期の在留期間も認められるようになるのです。