経営管理ビザより「高度専門職1号(ハ)」の方が有利?

2023.05.30

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日本で会社を立ち上げて経営したり、日本を拠点とする企業に役員・幹部として関与したりする外国人は、その在留資格として経営管理ビザを取得するのが一般的です。ただ、もうひとつ、同じように企業経営・管理を行う外国人のための「高度専門職1号(ハ)」と呼ばれる在留資格もあります。いわゆる「高度外国人材」と呼ばれる外国人です。

この両者のビザにはどのような違いがあり、高度専門職ビザにはどんなメリットがあるのでしょうか。また、経営管理ビザから高度専門職ビザに変更することはできるのでしょうか。

■経営管理ビザと比べた、高度専門職ビザのメリットとデメリット

「高度専門職」ビザの制度は、さまざまな分野で特に能力が高い優秀な外国人について、優遇して迎え入れることによって、日本社会に利益をもたらす人材を増やそうとする政策に基づいて、2015年から始まりました。4種類あるのですが、その中でも「高度専門職1号(ハ)」は、経営管理ビザと同じように、日本で起業している、あるいは日本企業に役員・幹部として所属している外国人の在留資格として定められています。

よって、経営管理ビザに比べて有利な点がいくつかあります。まずは5年の在留期間が認められる点です。経営管理ビザの場合は、基本が1年間の在留期間で、更新を重ねて出入国在留管理局の信頼を得ていくと3年ないし5年の在留期間が認められるようになります。しかし、高度専門職1号(ハ)のビザであれば、最初から5年の在留期間が認められ、安定的に日本で活動できる点はメリットといえます。赤字決算になっていたり、債務超過が起きていたりするなど、経営不振の状態が続くと、経営管理ビザの場合は更新が認められず、それ以上日本に滞在できなくなるリスクもあります。しかし、高度外国人材の経営者は少なくとも5年間はビザが有効となるので、ゆとりある経営計画で進められるのもメリットです。

また、複合的な在留活動が許容されていることも高度専門職ビザのメリットです。経営管理ビザでは、日本国内で会社経営の活動しか基本的に認められません。しかし、高度外国人材は、たとえば会社経営をしながら大学での研究活動も行えるなど、複数の目的にまたがって日本に在留できるのが特徴です。

また、高度外国人材の配偶者は、フルタイムの正社員として働くことが認められるのもメリットです。経営管理ビザの外国人の配偶者は、多くの場合、家族滞在ビザで日本に暮らしているのが一般的ですが、週28時間以内のパートタイム・アルバイトでの勤務しか認められていません。

さらに、家族滞在ビザでは母国の両親を日本に招くことが法的に認められていないところ、高度外国人材は一定の条件の下で親を帯同して日本に暮らすことが認められています。他にも、入国手続きやビザ更新の手続きなどが、高度外国人材について優先的に処理されるメリットも見逃せません。

永住に関しても高度外国人材が有利に取り扱われます。経営管理ビザの場合、引き続き10年以上日本に在留し、そのうち5年以上が経営管理ビザに基づく在留でなければ永住を申請する資格が認められません。しかし、「高度専門職1号(ハ)」のビザがある外国人経営者は、日本に暮らし始めて1~3年後には永住許可の申請が可能になります。

なお、弁護士や会計士などの外国人専門家が日本で事務所を経営している場合、経営管理ビザの取得が認められません(「法律・会計」ビザのみ)が、その外国人専門家の経営者が高度外国人材として認定されれば、例外なく「高度専門職1号(ハ)」の在留資格が認められる特徴もあります。

高度外国人材のデメリットは、そのビザが許可されるためのハードルが高く、なかなか認められないことと、手続きが比較的複雑になりやすい点が挙げられます。

■高度外国人材の「ポイント制」とは?

高度外国人材はポイント制が導入されており、日本の外国人経営者の場合、経営管理ビザの要件を満たしたうえで、かつポイントが70点以上であれば「高度専門職1号(ハ)」の在留資格を取得できます。

その点数が高いほど、さらに有利に扱われます。たとえば、70点であれば、在留期間3年以降に永住権の申請ができるようになりますが、80点以上なら在留期間1年で永住権を申請できるようになるなどです。

ポイントは、学歴・職歴・年収などの要素ごとに、優秀であるほど加点されていきます。数字などで算出できる定量的な基準が多いので、ポイントの計算もしやすいです。

■経営管理ビザから「高度専門職1号(ハ)」ビザに変更できる?

結論から言えば、ポイントが70点を超えたときに変更は可能です。しかし、事後的に加点できるポイントに限られます。職歴や年収であれば、経営が順調にいけば増えていくことが想定されますので、そういう意味でも頑張って経営をしましょう。とはいえ、高度外国人材の制度や手続きは複雑で理解しにくいので、勘違いがないように一度、行政書士に相談することをおすすめします。