経営管理ビザの許可率について

2023.05.30

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日本での起業を考えている、あるいは日本企業に幹部・役員として参画しようとしている外国人は、日本に長期滞在するために経営管理ビザの取得を考えていることが多いです。

ただし、ビザの申請には厳しい審査があります。日本社会にとってメリットが少ない、あるいは損害を与えるおそれがある外国人の入国は認めたくないからです。日本に限らず、他の国でも同じような審査が課されます。

つまり、経営管理ビザを申請したからといって、ビザの発行が必ず認められるわけではないのです。では、経営管理ビザが許可される確率はどれくらいなのでしょうか。

■経営管理ビザの難しさ

経営管理ビザの許可率に関して、法務省などによる公式の統計は示されていません。しかし、ビザ業務に携わる専門家である私の感覚としては、他の就労ビザと比較しても、入念な準備をせず申請してしまうと不許可となる確率がかなり高いビザである印象があります。つまり、数あるビザの中でも、経営管理ビザは取得するのが一番難しい部類に入るといえるでしょう。

なぜ経営管理ビザの申請は通りにくくなっているのでしょうか。それは多くの場合、会社の経営や管理の実態を、書類で把握することができていない点が挙げられます。申請人は、日本で会社経営を進めていくやる気に満ちているとしても、そのやる気を客観的に書類で示すことができていない人が目立ちます。

■経営管理ビザの許可率を上げるには?

<準備の様子をしっかりと見せる>

経営管理ビザが出されない典型的な例は、ビジネスを本気で準備しようとしている形跡が見られない場合です。オフィス用に賃貸物件を借りていても、机やイスすらも置かれておらず、空っぽの状態であれば経営管理ビザはまず発行されないでしょう。せめて、机とイス、電話、PC、本棚ぐらいは用意して設置し、事務所としての体裁は整えておかなければなりません。

また、自宅兼事務所やバーチャルオフィス、シェアオフィスで起業しようとすることも、経営管理ビザの申請では不利に働きます。自宅の一部を事務所にしていたり、間借りの形式で事務所を借りていたりすると「本当に日本で起業するつもりがあるのか」「在留資格が欲しいだけの偽装工作ではないか」と疑われても仕方ないからです。経営管理ビザを確実に取得するには、起業のために使うオフィス用の物件を購入するか、占有できる形式で借りていなければなりません。そのために、不動産登記の登記事項証明書のコピーや賃貸契約書のコピーなどを証拠資料として申請書に添付します。それによって、「日本で起業する真剣度」を出入国在留管理局に伝えるのです。

※現在の入管の審査のスタンスでは、原則的には、独立性が担保されないバーチャルオフィスやパーテーションだけで仕切られているシェアオフィスなどは認められていません。

もちろん、本国なら自宅やバーチャルオフィスから起業を始めるのも自由でしょうが、外国で起業する場合はそうもいきません。日本もその例外ではないのです。本国で起業するのと似たような感覚で、日本で起業して在留資格を取ろうとしても通用しないということは覚えておいてください。とにかく、事務所や店舗として使う物件の確保は必須と考えておきましょう。

<要件をしっかり満たす>

日本人等を2人以上、正社員として雇用し、500万円以上の資本金を入れて、日本国内で会社を立ち上げる準備の形跡をハッキリと示すこと。そして、日本で起業する理由や将来のビジョンを明確に描いていること。このように日本で定められたルールを守り、ビザ申請を軽く捉えすぎずに「やるべきことをやっている」のであれば、経営管理ビザは確実に許可されることでしょう。

※資本金として500万円以上を出資していれば、業種によっては従業員2名の雇用は不要です。

外国人が忘れがちなのは、業種ごとに日本の官公庁や役所から得なければならない許可や認可です。たとえば、飲食店であれば清潔な店づくりをしていて安全性の高い食材や調理法を採用しているかどうか、保健所のチェックを受けて許可を得なければなりません(飲食業許可など)。リサイクルショップも、盗品など不正なものを売り買いしないよう、日本の警察署から許可をもらわなければならないのです(古物商許可など)。

<将来性をしっかり示す>

さらに大事なのは経営計画がしっかりしていることです。なぜ日本で起業しようとしているのか、どのような将来のビジョンを描いていて、どんな商品やサービスを販売して日本社会ないし世界市場に貢献しようとしているのか。具体的に記した事業計画書や収支計画書を申請書に添付できていれば、経営管理ビザの許可率もおのずと引き上がるでしょう。

経営管理ビザの許可を得るには厳しい審査を乗り越える必要があります。しかし、それはビザの審査を甘く見ている外国人が多いという実情が残念ながらあるからです。出入国在留管理局は、不正の目的で日本に滞在しようとしているのではないかと厳しく審査するのと同時に、「このビジネスは長く続くのか」を気にしています。せっかくビザが下りても、ほとんど売上があがらずに数ヶ月で潰れるような見込みの甘いビジネスでは、経営管理ビザを出した甲斐がないからです。本人は本気で立ち上げた会社であろうと、客観的に見れば「在留資格を取ることが目的で、適当に立ち上げたビジネス」だとみなされても仕方ありません。

ご自身のビジネスが本気であることを、説得力のある書類で伝えるようにしましょう。経営管理ビザを取得する可能性を確実に上げるには、行政書士の力を借りることを強くお勧めします。