外国人のオーバーステイが職場で発覚したら?企業と本人が知るべき法律と対処法

在留期間を1日でも過ぎると不法残留(オーバーステイ)となり、入管法違反として刑事罰の対象になります。本人はもちろん、状況を知りながら雇用を続けた企業も厳しいペナルティを受けます。さらに2025年6月以降、雇用主への不法就労助長罪の罰則が大幅に引き上げられました(最大拘禁刑5年・罰金500万円)。うっかりミスも含めて早めの対処が不可欠です。

📋 この記事でわかること
  • オーバーステイ(不法残留)とは何か、どうやって起きるか
  • 本人に科されるペナルティと再入国禁止期間
  • 雇用主が問われる「不法就労助長罪」の内容と2025年改正の影響
  • 自主出頭(出国命令制度)の流れと要件
  • 在留期間の更新申請中に期間が満了したときの扱い
  • 企業が今すぐ実施すべきチェックリスト

手続きが複雑な場合や、すでにオーバーステイ状態になっている方は、早めに専門家へご相談ください。→ ビザ相談窓口(無料相談受付中)

オーバーステイ(不法残留)とは

オーバーステイとは、正規の在留資格を取得して日本に入国した外国人が、許可された在留期間を過ぎても出国せずに日本に残留している状態のことです。法律上の呼称は「不法残留」(出入国管理及び難民認定法〈入管法〉第70条第1項第5号)です。

オーバーステイと「不法入国」の違い

混同されやすいですが、オーバーステイ(不法残留)と不法入国は別の概念です。

区分 定義 典型例
不法残留
(オーバーステイ)
合法的に入国したが、在留期限後も出国しない 就労ビザの更新を忘れて期限が切れた/留学ビザが切れてもそのまま働き続けた
不法入国 偽造パスポートや密入国など、入国審査を経ずに入国 偽造ビザで審査を通過した/船や貨物に紛れて上陸した

本記事が主に扱うのはオーバーステイ(不法残留)です。最初は適法に在留していたものの、更新手続きの失念など比較的軽微なきっかけで発生することが多く、本人が気づいていないケースも少なくありません。

1日でもアウト — 理由・悪意の有無は問われない

「うっかり忘れた」「更新手続きに手間取った」であっても、在留期限を1日でも超えた時点で不法残留となります。法律は意図や過失の有無を区別しません。在留カードの有効期限を定期的に確認することが、本人・雇用主ともに最大の予防策です。

日本国内の不法残留者の現状(2025年最新)

出入国在留管理庁が公表している最新統計(令和7年7月1日現在)によると、日本国内の不法残留者数は7万1,229人です。2024年1月1日時点の約7万9,000人と比べると減少傾向にありますが、依然として7万人超の規模で推移しています。

71,229人
不法残留者数
(令和7年7月1日現在)
60.7%
男性の割合
(女性 39.3%)
60.7%
在留資格が「短期滞在」
観光・親族訪問で来日後に残留

国籍別上位(令和7年7月1日現在)

国籍・地域別では以下の順で多くなっています(出入国在留管理庁公表データより)。

順位国籍・地域主な残留資格
1位ベトナム技能実習・短期滞在
2位タイ短期滞在(ビザ免除)
3位韓国短期滞在(ビザ免除)
4位以降中国・フィリピン・インドネシア など

「短期滞在」からの残留が最多の背景

不法残留者全体の約60%は、もともと「短期滞在」資格(観光・商用・親族訪問等)で入国した人々です。タイや韓国はビザ免除対象国であるため入国自体は容易な一方、在留期限を守らないまま残留するケースが後を絶ちません。次いで「技能実習」「特定活動」からの残留が多く、これら上位3資格で全体の約85%を占めます。

政府の「不法滞在者ゼロプラン」(2025年5月)

政府は2025年5月23日に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を発表し、出入国在留管理の厳格化を進めています。雇用主への不法就労助長罪の厳罰化(後述)も、この流れの一環です。最新の公式情報は出入国在留管理庁でご確認ください。

オーバーステイはこうして発覚する

オーバーステイは永遠に気づかれないということはありません。主に以下の3つのルートで発覚します。

本人または周囲からの気づき → 自主出頭

在留カードを自分で確認して期限切れに気づく、または家族・知人から指摘されるケース。この場合のみ、後述する「出国命令制度」を利用できます。

在留カード提示求められて発覚(職務質問・雇用主確認)

警察官・入国警備官・雇用主から在留カードの提示を求められ、期限切れまたは未提示で発覚。雇用主からの通報につながることもあります(入管法上、通報は義務ではありませんが、発覚後の放置は「不法就労助長罪」を問われる可能性があります)。

入管当局による摘発(パトロール・情報提供など)

入管当局が独自に把握・摘発するケース。このルートで発覚した場合は出国命令制度を利用できず、退去強制手続きに移行します。

発覚が早いほど選択肢が広がる

発覚のルートによって適用される制度が変わります。自主出頭の場合のみ出国命令制度(収容なし、上陸拒否1年)が利用できます。摘発された場合は退去強制となり、上陸拒否期間が5年以上に延びます。気づいたら、まず専門家に相談することを強くお勧めします。

本人に科されるペナルティ

① 刑事罰(入管法第70条)

オーバーステイは「不法残留罪」として以下の刑事罰の対象になります。

自由刑
3年以下の拘禁刑(旧:懲役・禁錮)
罰金刑
300万円以下の罰金
併科
拘禁刑と罰金の両方が科される場合もあり

※2025年6月以降、刑事法の改正により「懲役刑・禁錮刑」は「拘禁刑」に一本化されています。オーバーステイに対する刑事罰の上限は従来と変わりませんが、呼称が変わっています。

初犯の実態:執行猶予がつくことが多いが…

初犯・比較的短期のオーバーステイであれば、実務上は刑事罰に執行猶予がつくことが一般的です。ただし、執行猶予がついても行政処分(退去強制・上陸拒否)は別途課されます。「刑事罰さえ軽ければいい」という認識は危険で、将来の日本再入国に重大な影響が残ります。

② 退去強制・上陸拒否

刑事罰とは別に、行政処分として以下の上陸拒否期間が設定されます。

ケース上陸拒否期間
自主出頭 → 出国命令制度で出国(初回) 1年間
退去強制処分で出国(初回) 5年間
過去に退去強制・出国命令歴あり(2回目以降) 10年間
1年以上の拘禁刑に処された場合など悪質ケース 永久(恒久的)拒否の可能性

上陸拒否期間が経過しても再入国できるとは限らない

上陸拒否期間が終了しても、入管当局がビザ申請を許可するとは限りません。過去のオーバーステイ歴は永続的に記録され、配偶者ビザ等の申請でもマイナス要因となります。

雇用主への罰則|不法就労助長罪(2025年6月厳罰化)

オーバーステイ状態の外国人が働いている場合、雇用主も不法就労助長罪(入管法第73条の2)に問われます。「知らなかった」という主張は原則として通りません。確認義務を怠った過失も処罰対象です。

2025年6月より罰則が大幅強化されました

区分改正前(~2025年5月)改正後(2025年6月~)
自由刑 3年以下の懲役 5年以下の拘禁刑
罰金刑 300万円以下の罰金 500万円以下の罰金
法人への罰金 300万円以下 500万円以下(最大1億円の可能性あり)
公訴時効 3年 5年(罰則強化に伴い延長)

※2024年6月14日公布の改正入管法に基づき施行。法人(会社)には両罰規定(入管法第76条の2)が適用され、法人自体にも罰金刑が科されます。

不法就労助長罪が問われる3つのケース

① オーバーステイと知りながら雇用した

在留期限切れを把握しつつ、そのまま働かせ続けた場合。悪質なケースとして重く処罰される可能性があります。

② 確認を怠って(過失)雇用した

在留カードを確認せずに採用した場合や、採用後に更新期限が過ぎても放置した場合。「知らなかった」は免責になりません。

③ 直接雇用以外でも対象

派遣・業務委託で受け入れた場合、宿舎を提供した場合、斡旋・仲介した場合も不法就労助長罪の対象になります。

就労ビザへの切り替えや在留資格の確認が必要になりそうな場合は、就労ビザのサポートページもご参照ください。

自主出頭・出国命令制度の流れ

オーバーステイ状態に気づいたら、自ら出入国在留管理局へ出頭することが最善の対処です。自主的に出頭した場合のみ「出国命令制度」の対象となり、収容を経ずに出国できる可能性があります。

1
事前に専門家(行政書士・弁護士)へ相談

出頭前にオーバーステイに至った経緯を整理し、申告内容に一貫性を持たせておくことが重要です。

2
最寄りの地方出入国在留管理局へ出頭

パスポート・在留カード(失効していても)など身分証明書類を持参します。出頭できる主な拠点:札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡およびその支局。

3
出国命令制度の対象者として認定(2週間〜1か月程度)

以下の要件を全て満たす場合に認定されます。

  • 自ら出頭し、速やかに帰国する意思がある
  • オーバーステイ以外の退去強制事由に該当しない
  • 日本国内で犯罪による拘禁刑を受けていない
  • 過去に退去強制処分・出国命令を受けていない
  • 速やかに日本から出国することが見込まれる
4
収容なし・自由の身のまま出国

認定されれば収容されずに出国できます。この場合の上陸拒否期間は1年間(退去強制の5年より大幅に短い)。

在留特別許可という選択肢もある

日本人や永住者との婚姻関係がある場合など、一定の事情があれば「在留特別許可」を申請できる場合があります。ただし許可・不許可は法務大臣の裁量によるもので、必ずしも認められるわけではありません。在留特別許可の審査には数か月〜数年かかることもあります。詳細はビザ相談窓口にてご確認ください。

更新申請中に在留期間が満了した場合

在留期間の更新許可申請が審査中に在留カードの有効期限が来た場合、法律上、審査結果が出るまでは不法残留にはなりません(入管法第20条第5項)。ただし審査の結果、更新が不許可になった場合はどうなるでしょうか。

不許可になった場合の特別措置

審査中に在留期限が満了し、最終的に更新が不許可となった場合、通常であれば在留期限の翌日から不法残留となります。しかし実務上は、出国準備のための「特定活動ビザ」への切り替えが入国審査官から案内され、事後的に不法残留期間がなかったものとして処理されるのが一般的な取り扱いです。不安な場合は審査官の案内に従い、速やかに対応してください。

満了日が休日・年末年始と重なる場合

在留期間の満了日が土日・祝日・年末年始と重なった場合、満了日は前の平日には遡りません。その後の最初の平日が実質的な満了日として扱われます。ただし、3か月前から申請できる更新手続きは余裕を持って進めてください。ギリギリの申請に対しては、審査官から厳しく注意を受けることもあります。

企業担当者の確認チェックリスト

2025年6月の厳罰化を受け、企業側のチェック体制の強化が急務です。以下を定期的に確認してください。

採用時に在留カードを原本確認——期限・在留資格・就労可否を必ず確認。コピーだけでの確認は不十分です。
在留カードの真偽確認——出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サービスでカード番号と有効期限を照合する。ICチップ読み取りも有効です。
在留期限の管理台帳を整備——全外国人労働者の在留期限をカレンダーや管理システムで一元管理し、満了3〜6か月前にアラートを設定する。
更新手続きのサポート——在留期限の3か月前から更新申請が可能。本人任せにせず、会社側でも進捗を確認する。
在留資格の範囲内の業務か確認——在留カードが有効でも、付与された在留資格の活動範囲外の業務をさせると不法就労になります。
派遣・業務委託先も同様に確認——不法就労助長罪は直接雇用に限らず、派遣受入れや業務委託も対象です。
オーバーステイに気づいたら即時対応——発覚後に放置した場合も「知っていながら雇用継続した」として重く問われます。すぐに専門家へ相談してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 在留カードの期限が昨日切れました。どうすればいいですか?
A. すぐに出入国在留管理局へ相談することを強くお勧めします。期限が切れた翌日からオーバーステイ状態になっていますが、自ら出頭することで出国命令制度の対象となり、収容を避けられる可能性があります。出頭前に行政書士へご相談いただくと、申告内容の整理がしやすくなります。→ ビザ相談窓口へ
Q. 雇っている外国人がオーバーステイだとわかりました。今すぐ解雇すれば大丈夫ですか?
A. 解雇するだけでは不法就労助長罪の責任から逃れられない場合があります。知った時点から雇用継続した期間が問題になります。すぐに入管に届け出るか、専門家に相談して適切な対応を取ることが重要です。2025年6月の厳罰化後、不法就労助長罪の罰則は拘禁刑5年・罰金500万円(法人は最大1億円)に引き上げられています。
Q. 在留期間の更新を申請中に期限が切れました。違法になりますか?
A. 適法に更新申請を提出していれば、審査結果が出るまでの間は不法残留にはなりません(入管法第20条第5項)。ただし申請が不許可となった場合は、審査官の案内に従い「特定活動ビザ」への切り替え等の対応が必要になります。
Q. オーバーステイで日本人と結婚している場合、在留特別許可を受けられますか?
A. 日本人配偶者がいることは在留特別許可の積極要素の一つですが、必ず許可されるわけではありません。婚姻の実態の有無、本人の素行、犯罪歴などを総合的に判断されます。配偶者ビザの取得は退去強制処分後に申請することになり、上陸拒否期間が影響します。→ 配偶者ビザのサポートページ
Q. オーバーステイで一度退去強制になった後、日本に戻れますか?
A. 退去強制処分の場合は原則5年間(繰り返しの場合は10年以上)の上陸拒否期間が設けられます。期間終了後も必ず再入国できるとは限らず、ビザ申請の際に審査でマイナスに働きます。自主出頭→出国命令制度を利用した場合は上陸拒否期間が1年に短縮されます。
Q. 偽造在留カードを提示された場合、企業は責任を問われますか?
A. 精巧な偽造カードであっても、「ICチップ読み取りなど公的に推奨されている確認手段を尽くしたか」が問われます。目視確認だけでは確認義務を果たしたと認められないケースがあります。出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」を活用してください。

まとめと次にやること

この記事のポイント

  • 在留期間を1日でも超えると不法残留(オーバーステイ)となり、理由・悪意の有無を問わず入管法違反になる
  • 本人への刑事罰は拘禁刑3年以下・罰金300万円以下。退去強制の場合は最低5年間の上陸拒否
  • 自主出頭 → 出国命令制度を利用すれば収容なし・上陸拒否1年に短縮できる
  • 雇用主への不法就労助長罪は2025年6月に厳罰化(拘禁刑5年以下・罰金500万円以下)。「知らなかった」は免責にならない
  • 法人にも両罰規定が適用され、最大1億円の罰金が科される可能性がある
  • 在留カードの真偽確認・期限管理・業務範囲の確認を徹底することが企業の最大のリスク回避策
🔍 今すぐ確認・相談を

「在留期限が迫っている」「すでにオーバーステイかもしれない」「雇用している外国人の在留資格が心配」——そのような場合は、1日も早くご相談ください。状況を整理してから動くだけで、選べる選択肢が大きく変わります。

※本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。制度・運用は変更される場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁でご確認ください。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
https://hiroshima-visa.link/
広島国際結婚&配偶者ビザ申請代行センター
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広島永住ビザ申請代行センター

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蜂須賀 昭仁

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