就労ビザの審査期間はなぜ長い?採用企業が事前に知るべきカテゴリー・書類・注意点まとめ

「うちは小さな会社だけど、外国人を採用できるだろうか?」——この疑問を抱える経営者・人事担当者は少なくありません。結論から言えば、1人会社でも外国人の就労ビザ申請は可能です。ただし、会社規模に関わらず、出入国在留管理庁は会社の安定性・継続性を厳しく見ます。その評価軸が「企業カテゴリー区分」です。

この記事では、採用企業が知っておくべき企業カテゴリーの全容、審査期間の実態、採用理由書・雇用契約書の作成ポイント、在留資格認定証明書の取り扱い上の注意点を一本にまとめました。

📌 この記事でわかること
  • 企業カテゴリー1〜4の判定基準と、カテゴリーによって何が変わるか
  • 中小企業・新設会社が審査を通過するために必要な準備
  • 就労ビザの審査期間の実態(認定・変更・更新の違い)
  • 採用理由書・雇用契約書の作成上の注意点
  • 在留資格認定証明書を紛失した場合の対処法

手続きが複雑で不安な場合は、早めにビザ相談窓口でご相談ください。

企業カテゴリー1〜4とは何か?

出入国在留管理庁は、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、経営・管理など)の申請において、受け入れ企業を「カテゴリー1〜4」の4区分に分類しています。このカテゴリーによって、提出必要書類の量と審査の厳しさが大きく異なります。

カテゴリーの判定基準は「会社の規模の大小」ではなく、「事業の安定性・継続性の証明のしやすさ」です。1人会社や中小企業であっても、実態が安定していれば審査を通過できます。

カテゴリー 該当する企業・団体 書類負担 審査の厳しさ
カテゴリー1 上場企業、保険業を営む相互会社、国・地方公共団体、独立行政法人、特殊法人・認可法人、公益法人、法人税法別表第1の公共法人 など 少ない 緩やか
カテゴリー2 前年分の法定調書合計表の「給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額」が1,000万円以上の団体・個人
または在留申請オンラインシステムの利用申出の承認を受けている機関
比較的少ない 緩やか
カテゴリー3 前年分の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)
=決算を1期以上終えた一般企業の多くが該当
多め 厳格
カテゴリー4 カテゴリー1〜3のいずれにも該当しない団体・個人
=設立後1年未満で決算未了の新設会社など
非常に多い 最も厳格
ℹ️ カテゴリーによる審査期間の目安

カテゴリー1・2は比較的書類が少なく審査もスムーズです。カテゴリー3では2か月以上、カテゴリー4では3か月以上かかるケースも少なくありません。採用スケジュールには十分な余裕を見てください(詳しくは審査期間のセクション)。

カテゴリー2の「源泉徴収税額」とは?

カテゴリー2の判定に使う「源泉徴収税額1,000万円以上」とは、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」に記載された源泉徴収税額の合計のことです。給与総額ではないため注意が必要です。一般的に従業員数が多い、または高給与の企業が該当します。なお、在留申請オンラインシステム(e-VISA)の利用承認を受けている機関は、税額が1,000万円未満でもカテゴリー2として扱われます。

中小企業・新設会社の審査対策

中小企業(カテゴリー3)や新設会社(カテゴリー4)は、提出書類が多く、審査も厳格です。ただし、適切な書類でしっかり実態を示せれば、許可を得ることは十分可能です。

カテゴリー3(決算1期以上の会社)の場合

最終決算の財務内容(売上・利益・資産)が芳しくない場合でも、事業計画書で将来性を補強することで審査官の不安を払拭できます。「なぜこの会社に外国人が必要なのか」「今後どのように事業が成長するのか」を数値と根拠で示すことが重要です。

カテゴリー4(新設会社)の場合

決算実績がない分、事業計画書が審査の中心になります。事業内容の具体性・収益モデルの合理性・外国人採用の必要性をビジュアルや数値で明確に示してください。許可の可否に直結する重要書類です。

🚨 1人会社・スタートアップ特有のリスク
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられているにもかかわらず未加入の場合、審査で不利になります。
  • 決算書の赤字が複数期続いている場合、事業計画書なしでの申請は通過が難しくなります。
  • 事業実態(オフィス・取引先・受注状況)を証明できる資料を可能な限り揃えてください。

書類準備に不安がある場合は、就労ビザのサポートページもご覧ください。

就労ビザの審査期間の実態

就労ビザの手続きには「認定(在留資格認定証明書の交付申請)」「変更(在留資格変更許可申請)」「更新(在留期間更新許可申請)」の3種類があります。処理期間は申請の種別と企業カテゴリーによって大きく異なります。

申請の種別 概要 目安の審査期間(2024〜2025年実績)
認定(呼び寄せ) 海外にいる外国人を新たに日本に招へいする場合 2〜3か月以上(最も長い)
変更 すでに日本在留中の外国人の在留資格を変更する場合 1〜2か月程度
更新 現在の在留資格を同じ種類で延長する場合 1〜2か月程度(3種別中最も早い傾向)
⚠️ 審査期間に関する重要な注意点
  • 2024年はとくに長期化が顕著で、月によっては88日を超えるケースも報告されています(2025年以降は改善傾向ですが、なお2か月超が実態)。
  • 出入国在留管理庁は毎月、在留審査処理期間を公表しています。採用計画を立てる際は最低4か月前からの準備開始を推奨します。
  • 審査中に追加書類の提出を求められた場合、迅速に対応しないと審査がさらに長期化します。
  • 申請書類の完成度が審査期間に直結します。「必須書類を揃えた」だけでは不十分なことも多く、任意書類での補強が許可の分かれ目になります。

「審査官の立場で申請書を作る」という鉄則

就労ビザの申請書類を作る際の最重要ポイントは、「審査官になったつもりで申請書を作る」ことです。必須書類だけで説明が完結しない場合は、任意書類(理由書・資料・事業計画書など)で積極的に補強してください。口で言うのは簡単ですが、実際には相当の知識と経験が必要です。不安な場合は専門家への相談を検討してください。

採用理由書の作成ポイント

採用理由書(理由書)は、カテゴリー3・4の企業が就労ビザ申請をする際に特に重要な任意書類です。審査官が「なぜこの会社がこの外国人を必要としているのか」を納得できる内容でなければなりません。

なぜ日本人ではなくこの外国人でなければならないのかを具体的に述べる(語学力・専門知識・海外との取引実績など)
担当する職務内容を具体的・詳細に記載する(「営業」「事務」などの曖昧な表記はNG)
職務内容が分かりにくい場合は、写真・パンフレット・業務フロー図などを添付してビジュアルで補足する
在留資格(技術・人文知識・国際業務など)の要件に合致した職務内容であることを論理的に説明する
申請人(外国人)の学歴・職歴・専門性と職務内容の関連性を明確にする
ℹ️ 採用理由書はカテゴリー1・2でも有効

カテゴリー1・2は書類が少なくて済みますが、在留資格の要件との整合性に疑義が生じそうな場合は、採用理由書を添付することで審査官の疑問を先回りして解消できます。必須書類ではないからこそ、戦略的に活用することが大切です。

在留資格認定証明書を紛失したら

海外にいる外国人社員を日本に招へいする際には、出入国在留管理庁から在留資格認定証明書(COE:Certificate of Eligibility)の交付を受け、国際郵便(EMSなど)で外国人本人に送付します。この書類を紛失する方が稀におられます。

⚠️ 在留資格認定証明書に関する重要事項
  • 有効期限は交付日から3か月です。この期間内に査証(ビザ)申請・取得・入国まで完了する必要があります。
  • 在留資格認定証明書には再発行制度がありません。紛失・有効期限切れの場合は、原則として最初から申請をやり直す必要があります。
  • 再申請となると入国・就労スケジュールが大幅に遅れるため、郵送前後の取り扱いには細心の注意が必要です。
  • 現在は表裏両面のコピーを保存しておくことで、紛失時の手続きが一部緩和されるケースがあります(詳細は申請を担当した入管にご確認ください)。
交付後すぐに表裏両面のコピーを保存する(必須)

万が一の紛失・毀損に備え、交付を受けたら必ずコピーを取って保管してください。

紛失に気づいたらすぐに入管へ連絡・再申請を検討

再申請は最初からの手続きとなります。時間的余裕があるかどうか確認し、採用・入国スケジュールの見直しも検討してください。

再申請書類を準備・提出する

原則として最初の申請と同様の書類一式が必要です。審査期間も再び発生します。採用先が変わっていない場合でも、書類の内容に変更がないか確認してから提出してください。

雇用契約書に必ず記載すべき事項

雇用契約書のコピーは就労ビザ申請時に出入国在留管理庁へ提出する必須書類です。記載内容が不明確な場合、追加書類の提出を求められたり、審査が長引く原因になります。必ず以下の項目を明記してください。

職務内容:「何をするのか」を具体的に記載。在留資格の要件に合致した内容であること。
就業場所:勤務地の住所を明記。複数拠点がある場合は主たる就業場所を明示。
勤務時間:始業・終業時刻、休憩時間、休日を記載。フルタイム勤務かどうかを明確に。
職務上の地位(役職):「社員」「主任」「マネージャー」など、組織上の位置づけ。
給与(報酬):月額・年額を明記。日本人と同等以上の報酬であることが審査上も重要。
ℹ️ 「日本人と同等額以上」の報酬が求められる理由

技術・人文知識・国際業務などの就労ビザでは、同等業務に従事する日本人と同等額以上の報酬を支払うことが要件のひとつです。これは外国人労働者の安易な低賃金雇用を防ぐための規定であり、雇用契約書の報酬額が著しく低い場合は不許可になる可能性があります。

よくある質問

1人会社でも外国人を雇えますか?
はい、1人会社でも外国人を雇用することは可能です。ただし、事業の実態・安定性・継続性を証明する書類がより重要になります。1期以上決算を終えていればカテゴリー3、設立直後であればカテゴリー4として扱われ、それぞれ追加書類が必要になります。
カテゴリー3の決算書が赤字でも許可が出ますか?
赤字だからといって自動的に不許可になるわけではありません。事業計画書で今後の改善見通しを合理的に説明し、外国人採用の必要性と業務内容が在留資格要件に合致していれば、許可が下りるケースもあります。ただし審査が慎重になることは避けられないため、書類の充実が重要です。
就労ビザの審査期間中、外国人に業務をさせてよいですか?
在留資格の変更・更新申請中の場合、従来の在留資格のまま在留期間満了後も一定期間は在留・就労が継続できる特例措置があります(入管法の規定による)。一方、まだ日本に入国していない(認定申請中の)外国人は、認定証明書の交付・査証取得・入国が完了するまで就労できません。状況によって異なりますので、詳細はご相談ください。
在留申請オンラインシステムを使うと何が変わりますか?
在留申請オンラインシステム(e-VISA)の利用申出承認を受けた機関は、源泉徴収税額に関わらずカテゴリー2として扱われます。カテゴリーが上がることで提出書類が減り、手続きがスムーズになります。ただし利用申出には一定の要件があります。詳細は出入国在留管理庁の公式情報でご確認ください。
不許可になった場合、すぐに再申請できますか?
在留資格認定証明書の不交付処分後は、原則として再申請可能です。ただし、在外公館でのビザ発給申請が発給拒否となった場合は6か月間再申請できない期間があります。不許可の理由を把握し、改善できる見込みがある場合に再申請することが重要です。不許可相談ページもご参照ください。

まとめ・次にやること

📋 この記事のポイント整理
  • 外国人の就労ビザは会社規模に関わらず申請可能。1人会社でも雇用できる。
  • 入管は受け入れ企業をカテゴリー1〜4に分類。カテゴリーが低いほど書類が多く審査も厳格になる。
  • カテゴリー3・4は事業計画書が鍵。財務内容が弱い場合でも適切な書類で補強できる。
  • 審査期間は認定(呼び寄せ)が最も長く、2〜3か月以上かかる場合も多い。採用計画は余裕をもって立てる。
  • 採用理由書は職務内容の具体性と採用の必然性を審査官に伝える重要書類。ビジュアル資料も活用する。
  • 在留資格認定証明書は再発行不可。交付後すぐに表裏両面のコピーを保存する。
  • 雇用契約書には職務内容・就業場所・勤務時間・地位・給与を必ず記載する。
外国人採用の手続きは、会社のカテゴリーや申請種別によって必要書類と審査の流れが大きく異なります。「どのカテゴリーに該当するか分からない」「書類の準備が不安」という場合は、早めのご相談が解決への近道です。

※ 本記事の情報は執筆時点のものです。出入国在留管理庁の運用・書類要件は変更される場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁公式サイトでご確認ください。

記事の監修者

Eight Links 行政書士事務所 所長
蜂須賀 昭仁

2016年9月〜
VISA専門行政書士事務所
「Eight Links 行政書士事務所」を開業
専門分野 外国人在留資格申請、帰化許可申請
外国人の在留資格申請を専門分野とし
年間500件以上の相談に対応

講師実績
広島県行政書士会国際業務協議会 担当講師
中華人民共和国遼寧省鉄嶺市(外国人会社設立・経営管理)についての講師

詳しいプロフィールを見る

運営HP
広島外国人ビザ相談センター
https://hiroshima-visa.link/
広島国際結婚&配偶者ビザ申請代行センター
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蜂須賀 昭仁

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外国人の在留資格申請を専門分野とし年間500件以上の相談に対応

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